それでも中小企業の管理職はうまく機能しないのか?

杉山 晃浩

管理職の役割が不明確な任命されている

中小企業や零細企業では、管理職の任命が明確な基準に基づいていないことが多い。 特に、管理職の役割自体が社内でしっかりと定義されていないため、「何をすればいいのかわからない管理職」が生まれやすい。

例えば、ある中小企業では、従業員が一定の年数を経て自動的に管理職に昇格する仕組みがある。しかし、管理職になるにあたって具体的な教育や研修が行われることはなく、本人も経営者も「とりあえず肩書きがついた」という状態で終わってしまう。

また、「管理職=仕事ができる人」という考え方が根強く残っている企業も多い。 しかし、本来の管理職の役割は、「自分が成果を出す」ことではなく、「チームとして成果を最大化する」ことである

さらに、管理職に昇格したもの、組織内での立ち位置が明確でなくても、「経営側」と「現場側」のどちらの視点で動くべきか真剣なこともある。経営者からは「売上を伸ばせ」と言われ、現場からは「現実を見てほしい」と思われる。

このように、管理職の役割が不明確な任命されることで、本人の負担が増加し、組織全体の生産性が低下するケースが後を絶たない。


年齢・社歴・営業成績だけで管理職を決めるリスク

中小企業において、管理職を任命する際に最も重視されるのは、「年齢」「社歴」「営業成績」といった要素だ。ただし、これらの基準だけで管理職を決めることは、多くのリスクを伴う。

1. 年齢や社歴が長いことは、マネジメント能力を保証しない
A社では、社15年の社員が管理職に昇進した。 しかし、彼はこれまで現場の中心を行っており、後輩を持った経験がなかった仕事。 いざ管理職になってみると、部下との接し方がわからず、指示を出すのも苦手だった。

社歴が長いということは、企業の文化や業務内容に詳しくというメリットはあるもの、マネジメント能力とは直結しない。

2. 経営成績が優秀でも、管理職に向いているとは限らない
特に営業職では、「営業成績が優秀だから管理職に」という人事判断が多い

営業職は「個人の成果を上げること」が求められるが、管理職は「チーム全体の成果を最大化すること」が求められる。

3. 上司と部下の管理関係が崩れるリスク
職が適性ではなく、年齢や営業成績だけで決められると、人間関係に悪影響を及ぼすことがある。 特に、実力ある若手がいる場合、「なぜ自分ではなく、あの人が管理職になったのか?」と不満を抱えられることがある。


管理職に必要なスキルが育成されていない現状

中小企業では、管理職に昇進しても「マネジメントスキル」を学ぶ機会がほとんどないことが多い。 大企業であれば管理職向けの研修制度あるが、中小企業ではそのような仕組みがなく、管理職になった人は「とりあえずやってみる」しかない状況に置かれる。

管理職に必要なスキルは、大きく以下の3つに分けられます。

  • リーダーシップ(チームをまとめ、方向性を示す力)
  • コミュニケーション能力(部下と下の関係を築く力)
  • 問題解決能力(業務上の課題を分析し、解決策を提案する力)

これらのスキルを学ばずに管理職になると、適切な指導ができず、チーム全体の士気が低下する。 結果として、「上司のせいで業績が悪化した」という状況が発生し、本人も組織も被害を受けることになる。


中小企業での管理職育成の必要性

このような問題を解決するためには、中小企業においても管理職の育成に力を入れることが大事だ

  • 管理職の役割を明確に定義し、期待されるスキルを整理する
  • 管理職の適性を見極める基準を設け、営業成績などだけで判断しない
  • 管理職向けの教育プログラムを導入し、スキルを育てる

中小企業において管理職が正しく機能することで、組織全体の生産性が向上し、社員の定着率も上がります。 管理職を「ただの役割職」ではなく、「組織を成長させる存在」として育てることで、企業の未来は大きく変わります。

次回は、「管理職に求められる3つのスキルとは?」について、具体的な育成方法をじっくり解説する。

お問い合わせフォーム

労務相談、助成金相談などお気軽にご相談ください。