2025年4月分 人事労務クイズ~試用期間中の取扱い~

問題  ∼ 試用期間中の取扱い ∼

試用期間中の従業員に適用される法律はどれでしょうか?

答え

【A】 労働基準法

【B】 試用期間中は適用されない

【C】 会社の規定に従う

【A】 労働基準法

【試用期間中でも「労働者」としての法的保護は変わらない】
試用期間とは、企業が新たに採用した従業員について、その業務適性や職場への適応状況を見極めるために設ける一定の期間です。
この期間中に、本採用とするかどうかを判断するのが一般的ですが、試用期間中の従業員であっても、法的にはすでに「労働者」としての地位にあり、労働基準法の適用を受けることに変わりはありません。

つまり、雇用契約を締結し勤務を開始した時点で、労働契約が成立しています。
したがって、試用期間中であることを理由に、法令の適用を制限することはできません。
労働時間、休憩、休日、割増賃金、年次有給休暇の付与など、労働基準法で定められた基本的な労働条件は、正式採用の従業員と同様に適用されます。

【解雇についても慎重な対応が必要】
試用期間中は「評価期間だから解雇しやすい」と誤解されがちですが、解雇に関する法的ルールも、基本的には通常の従業員と同様に適用されます。
労働基準法第20条では、解雇を行う場合、30日前の予告、または30日分以上の平均賃金を支払う「解雇予告手当」が必要であると定められています。

ただし、例外として、雇い入れから14日以内であれば、予告や予告手当なしで解雇することが可能です(労基法第21条)。
この14日間は「試用の試用期間」とも呼ばれ、企業側が柔軟に対応できる猶予として設けられています。

しかし、この例外を使う場合でも、解雇に合理的な理由がなければ、不当解雇と判断される可能性があります。
たとえば、「思ったより元気がない」「なんとなく合わない」といった曖昧な理由では、後のトラブルにつながる恐れがあります。

【試用期間は「例外」ではなく「入口」】
多くの企業では、就業規則等に試用期間の長さ、延長や短縮の可否、本採用見送りの手続きなどが定められています。
ただし、これらの社内ルールも、労働基準法や判例に反しない範囲でなければ無効となる可能性があるため、注意が必要です。
特に本採用を見送る際には、事前に十分な説明や注意喚起を行うことが、後の紛争防止につながります。

試用期間は、企業にとっては人材を見極める期間であると同時に、従業員にとっては職場での第一歩を踏み出す重要なタイミングです。
「まだ本採用ではないから」と軽視するのではなく、最初から労働法に基づいた適正な対応を行うことが、信頼関係の構築や、安心して働ける職場づくりにつながります。

試用期間中の対応は、会社の姿勢を最も強く印象づける場面のひとつです。
企業の信頼を高め、良い人材を活かすためにも、法令を正しく理解し、誠実な対応を心がけましょう。