社労士が警鐘!障害年金申請の正しい知識と落とし穴 第4回:いくらもらえる?障害年金・厚生年金の計算方法

杉山 晃浩

はじめに

「障害年金って結局いくらもらえるの?」
これは多くの方が気になる、とても大事な質問です。

障害年金は生活を支える大切な制度ですが、金額の計算は意外と複雑です。しかも、障害基礎年金と障害厚生年金の違いや、加算の有無、家族構成によっても受給額が大きく変わります。

今回は、基本の仕組みから実際の金額例、具体的な生活ケースまで詳しく解説します。できるだけわかりやすくまとめますので、「自分だったらどうなるか」をイメージしながら読んでください。


1. 障害年金の基本的な仕組み

まず押さえておきたいのは、障害年金の2本立て構造です。

  1. 障害基礎年金
    国民年金に基づく年金で、自営業・学生・主婦・厚生年金加入者(会社員・公務員)のすべての人が対象。

  2. 障害厚生年金
    厚生年金に基づく年金で、会社員・公務員のみ対象。国民年金加入者にはありません。

つまり、会社員・公務員の場合は、基礎年金と厚生年金の両方がもらえます。自営業・主婦・学生の場合は基礎年金のみです。


2. 障害基礎年金の計算(定額制)

障害基礎年金は、支給額があらかじめ決まっています。2025年度の例では以下の通りです。

  • 1級:約124万円/年(約10.3万円/月)

  • 2級:約99万円/年(約8.3万円/月)

また、18歳到達年度末までの子どもや、障害等級1・2級の子どもがいる場合は「子の加算」がつきます。

  • 第1子・第2子:各約23万円/年

  • 第3子以降:各約7.6万円/年

【具体例1】

主婦(国民年金加入)の方、2級、子ども2人の場合:

  • 基礎年金99万円

  • 子の加算23万円 ×2=46万円
    合計:145万円/年(約12万円/月)


3. 障害厚生年金の計算(報酬比例制)

障害厚生年金は、現役時代の収入や加入期間に応じて金額が変わります。
計算の基本式はこうです。


報酬比例部分 = 平均標準報酬月額 × 5.481 ÷1,000 × 加入月数

そこに、障害等級に応じた係数を掛けます。

  • 1級:1.25

  • 2級:1.0

  • 3級:1.0(ただし最低保障額あり、約60万円/年)

配偶者が65歳未満の場合は「配偶者加給年金額」(約23万円/年)がつきます。


4. モデルケースと具体例

【具体例2:会社員男性、2級、独身】

  • 平均月収30万円

  • 加入期間20年(240か月)

計算:
30万円 ×5.481 ÷1,000 ×240か月 =約39.4万円
2級 →39.4万円 ×1=39.4万円

障害基礎年金:99万円
合計:138.4万円/年(約11.5万円/月)


【具体例3:会社員男性、1級、配偶者あり、子ども2人】

  • 平均月収40万円

  • 加入期間30年(360か月)

計算:
40万円 ×5.481 ÷1,000 ×360か月=約78.9万円
1級 →78.9万円 ×1.25=98.6万円
配偶者加給年金:23万円
障害基礎年金(1級):124万円
子の加算:23万円×2=46万円

合計:
98.6+23+124+46=291.6万円/年(約24.3万円/月)


【具体例4:自営業女性、2級、独身】

  • 障害基礎年金のみ:99万円/年(約8.3万円/月)


5. 加算の注意点

障害年金の加算は条件が細かいです。

  • 配偶者加給年金:配偶者が65歳未満なら対象。

  • 子の加算:18歳年度末まで、または1・2級の障害児。

  • 20歳前障害の場合の所得制限:年収約460万円以上で支給停止。


6. 支給のタイミング・税金・社会保障との関係

  • 支給時期:年6回(2・4・6・8・10・12月)偶数月に2か月分振込。

  • 税金:原則として所得税非課税。

  • 住民税・医療費:自治体によって助成制度が異なるので要確認。

例:
ある市では、障害年金受給者は医療費助成の対象。手帳や受給証明が必要になることも。


7. 生活の中でのリアルな声

【ケース1:一人暮らしの男性(うつ病・2級)】

障害厚生年金と基礎年金で年間約150万円。家賃補助のある公営住宅に入り、生活保護を受けずに暮らしている。

【ケース2:難病の母を支える娘(20歳前障害・2級)】

母の扶養下で障害基礎年金と子の加算を受給。将来の就労と収入に影響するので、社労士に相談しながら福祉的就労を検討中。

【ケース3:脳梗塞後遺症の会社員男性(3級)】

障害厚生年金のみ(約65万円/年)だが、医療費助成や障害者雇用制度を活用し、生活を支えている。


8. よくある誤解と注意点

誤解1:「働いたら年金が止まる?」

→ 障害等級に影響するほどの改善・就労は注意。ただし軽作業や短時間の仕事は可能な場合がある。

誤解2:「一度決まったら一生そのまま?」

→ 原則、数年ごとに「再認定」があり、状態改善で等級が下がったり、支給停止になることも。

誤解3:「家族がいれば必ず加算がつく?」

→ 配偶者・子の条件や収入によっては加算なし。


9. まとめ

今回は障害年金の計算方法を詳しくお伝えしました。

✅ 基礎年金は定額、厚生年金は収入・加入期間で変わる
✅ 家族構成によって加算がつく
✅ 支給は偶数月に2か月分
✅ 誤解を避け、正確な知識を持つことが大切

障害年金は「知っているか知らないか」で大きな差が生まれます。
わからないことは社労士や年金事務所に相談し、正確な情報を手に入れましょう。

次回は、受給後の注意点として「再認定」「事後重症」「生活の注意点」を詳しく解説します。
これを読むことで、制度の落とし穴を回避できるはずです。


👉 次回予告:「受給後の注意点!再認定、事後重症、生活上の心得」

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