中小企業でもここまでできる!成果・業績・固定制…賞与制度設計の基本形とは(前編)
杉山 晃浩
第1章|なぜ今、賞与制度を“ちゃんと設計する”べきなのか?
「毎年、何となく決算期に出してるだけです」 「うちには評価制度がないから賞与制度も必要ないと思っていました」
こうした声は、決して珍しくありません。 しかし最近では、賞与制度が企業の“人事基盤”として重要視されるようになっています。特に、以下のような背景が制度設計を後押ししています:
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従業員との信頼構築:支給の根拠が不明確だと、不満や誤解を生みやすい
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評価制度との連動:成果主義の流れの中で「結果に報いる」仕組みが必要
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助成金・外部認定との関係:「賞与制度あり」が申請要件となるケースが増加
中小企業でも、シンプルで実務的な制度を整えることが、経営と組織の両面にプラスとなるのです。
第2章|賞与制度の基本3類型とは?──固定・評価・業績連動の全体像
賞与制度の設計には、主に以下の3パターンがあります。
① 固定型(ベース支給型)
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役職や等級ごとに定額を支給するシンプルな方式
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例:一般職10万円、主任15万円、課長20万円
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【向いている企業】評価制度が未整備/安定志向の組織
② 評価連動型
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人事評価の結果に応じて賞与額を調整する方式
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例:評価S=2.0倍、A=1.5倍、B=1.0倍、C=0.5倍
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【向いている企業】目標管理(MBO)や等級制度がある企業
③ 業績連動型
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会社全体または部署の業績に応じて支給額を決定
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例:営業利益の5%を賞与原資にするなど
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【向いている企業】毎年の業績変動が大きい業種(建設、不動産、製造など)
第3章|制度を選ぶ前に考えるべき「自社の状況」チェックリスト
制度を選ぶ前に、まずは自社の経営環境と組織特性を整理してみましょう。
項目 | 確認ポイント |
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業績の安定性 | 毎年出せる?利益変動が大きい? |
評価制度の有無 | 評価基準・フィードバックの体制があるか? |
職種構成 | 営業職中心/管理部門中心など、成果の測定しやすさ |
社員構成 | 年齢層、勤続年数、雇用形態のバランス |
このチェックをすることで、自社に無理なく導入できる賞与設計が見えてきます。
第4章|中小企業でも導入できる!おすすめ「ハイブリッド設計」事例紹介
多くの企業で実際に採用されているのは、以下のような“ハイブリッド型”です。
✅ 事例1:固定+業績連動型
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基本額(例:10万円)+業績に応じて全体調整(±20%)
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「一定の安定性+会社の成果を共有する」組み合わせ
✅ 事例2:評価連動型(簡易モデル)
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評価A=15万円、B=10万円、C=5万円
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等級や役職に応じた「ベース金額×評価係数」方式も導入しやすい
✅ 事例3:固定+特別賞与(インセンティブ)
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通常賞与の他に「目標達成報奨」「改善提案手当」などでメリハリを
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個別の貢献に報いることで、動機付けにつながる
第5章|まとめ:設計は“ゴール”ではなく“スタートライン”
賞与制度は作っただけでは意味がありません。 大切なのは、「なぜこのような制度にしたのか」「社員にどう伝えるのか」、そして「どう運用していくのか」というプロセスです。
後編では、賞与制度の“運用”と“評価連動”の具体的な方法や注意点について解説します。
次回:「制度をつくって終わりじゃない!運用と評価で賞与が“武器”になる方法」
制度を“機能させる”ことで、賞与は中小企業の人事戦略の柱になります。
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