知らないと損!経営セーフティ共済とは? 制度のしくみと加入のメリットを徹底解説

杉山 晃浩

第1章|経営セーフティ共済って何?──制度の概要と目的

「もし、長年取引してきた得意先が急に倒産したら?」

売掛金が一円も回収できず、自社も資金ショート……。
そんな“連鎖倒産”を防ぐために用意されているのが、経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)です。

この制度は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(=中小機構)が運営しており、国がバックアップする公的な共済制度です。万が一のときに無担保・無保証・無利子でお金を借りられる、まさに中小企業の“お守り”とも言える存在です。


第2章|どうして必要?セーフティ共済が注目される背景

中小企業にとって、「資金繰り」は命そのものです。
売上の大半を占める得意先がもしも倒れたら、回収不能の売掛金はすぐに経営を直撃します。

最近では以下のようなケースが増えています。

  • コロナ禍後の資金繰り悪化による突然の倒産

  • 物価高騰で経営悪化した同業他社の連鎖破綻

  • 社長の急死による事業停止

  • 夜逃げ・連絡不能などの事実上の倒産

こうした予測不能なリスクから会社を守るために、備えとしてセーフティ共済を選ぶ企業が増えているのです。


第3章|制度のしくみをやさしく解説

では、セーフティ共済の中身を見てみましょう。難しい部分はかみ砕いて説明します。

✅掛金

  • 月額 5,000円〜200,000円 の範囲で自由に設定可能(5,000円単位)

  • 毎月積み立てていき、上限は 累計800万円

  • 掛金は「経費(損金/必要経費)」にできるため、節税効果もアリ

✅使えるとき

「取引先が倒産し、売掛金が回収不能になった」場合に、
無担保・無保証・無利子で借入ができます。

✅借入限度

  • 掛金総額の10倍 or 回収不能額のいずれか低い方(最大8,000万円)

✅返済は?

  • 据置6か月+その後5〜7年での毎月返済(元金均等)

  • 利子はかかりません

  • ただし、借入額の10%に相当する掛金は“消滅”します(後で戻ってこない)

✅解約したら?

  • 掛金を12か月以上納付していれば「解約手当金」が戻ってきます

  • 40か月以上積立てれば「掛金全額が戻る」ので安心です


第4章|加入の条件と対象企業

経営セーフティ共済は、中小企業者や個人事業主であれば加入できます。
ただし、次のような条件があります。

✅加入要件

  • 1年以上継続して事業を営んでいること

  • 資本金や従業員数が、業種ごとに中小企業の基準内であること

業種 資本金 従業員数
製造・建設・運輸など 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業・サービス業 5,000万円以下 50~100人以下

❌加入できない例

  • 医療法人、学校法人、NPO法人

  • 金融・不動産業

  • 外国法人、税金滞納中、帳簿不備の事業者 など


第5章|メリット5選|セーフティ共済で得られる安心とお金

経営セーフティ共済は、ただの“倒産対策”にとどまりません。
実際には次のような多面的なメリットがあります。

  1. 取引先倒産時に最大8,000万円まで借入可能(無利子)

  2. 掛金が全額、損金(法人)・必要経費(個人)になる(節税)

  3. 積立金として機能し、40か月以上で元本が戻る

  4. 「一時貸付制度」あり(倒産がなくても資金繰りに活用可能)

  5. 銀行の与信と無関係なので、信用力が低くても安心


第6章|注意点とよくある誤解

制度を活用するには、いくつか知っておくべき注意点もあります。

⚠「保険」ではなく「貸付制度」

「倒産したらお金がもらえる」と思っている方もいますが、
実際は「借りる」制度です。返済義務があります。

⚠貸付には条件と期限あり

  • 「倒産」と認められる事実が必要(破産、再生、取引停止など)

  • 売掛金が回収不能になってから 6か月以内 に申請しないとNG

  • 「夜逃げ」や「支払い遅延」では対象外になることも

⚠制度改正にも注意(2024年10月〜)

  • 解約後2年以内の再加入では掛金が損金算入できないため、慎重に判断が必要


第7章|こんな企業におすすめ!セーフティ共済が向いているケース

次のような企業には、セーフティ共済はとても有効です。

  • BtoBの掛売が多い企業(製造業、建設業、商社など)

  • 同一取引先への依存度が高い企業(売上の50%以上など)

  • 取引契約書・請求書などをしっかり管理している企業

  • 節税・退職金対策を兼ねた資金積立をしたい経営者

逆に、現金商売・飲食・小売などには不向きな場合もあります。


第8章|まとめ|“何かあったとき”の備えとして今こそ見直したい制度

経営セーフティ共済は、倒産という最悪の事態に備えるための国が用意した安全網です。
「使えるときに入る」のでは遅く、“何もない今こそ”入っておくべき制度だと言えるでしょう。

また、制度としても節税・資産形成・資金繰りと、使い方次第で大きな力を発揮します。

 

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