なぜ今も“二度手間”?ふるさと納税控除ミスと行政処理の現実に迫る

杉山 晃浩

第1章|ふるさと納税とは?──制度の仕組みと控除の流れ

「ふるさと納税」とは、居住地以外の自治体に寄付することで、税額控除を受けつつ返礼品ももらえる制度です。所得税と住民税から控除される仕組みで、控除額は前年1月~12月の寄付に基づいて、翌年の税額に反映されます。

給与所得者が多く利用する「ワンストップ特例制度」を活用すれば、確定申告不要で控除が適用されます。問題は、この控除がどのタイミングで、どの程度正確に住民税に反映されるかという点です。

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第2章|5月に届く「住民税決定通知書」は“確定版”ではないかもしれない

毎年5月末頃に会社へ届く「住民税特別徴収税額通知書」。ここに記載された金額を基に、6月支給分の給与から住民税を天引きします。

しかし、ここには注意点があります。通知書に記載された住民税が“完全に正しい金額とは限らない”ケースがあるのです。

特に、ふるさと納税のワンストップ特例分は、寄付先の自治体が年明け後に処理し、それを住民票のある自治体へ連絡するという流れ。手作業や紙ベースの処理も残っており、通知が遅れることもしばしば。結果、5月時点の通知書に控除が反映されないまま届くということが起こります。


第3章|現場で何が起きている?──給与計算ミス・社員からの問合せ対応

この“控除漏れ”により、現場ではさまざまな混乱が起きます。

  • 従業員から「ふるさと納税したのに、住民税が下がっていない」との問合せ

  • 給与システムへの再入力や過去月分の調整処理

  • 年度途中での「訂正通知」対応

  • 説明責任の発生(人事や経理が非難の矢面に立たされる)

実際、私たちの事務所でも、自治体から届いた「訂正後の通知書」により、住民税を再計算しなければならないケースが増えています。こうした処理には人の手が介在するため、入力ミスや差額精算漏れといった二次的リスクも発生します。


第4章|なぜ“二度手間”はなくならないのか?──行政の運用とその限界

このようなトラブルの背景には、行政側の制度運用の限界があります。

  • ふるさと納税控除は「任意の制度」であり、反映遅れに対して罰則がない

  • 自治体間での連携はデジタル化が遅れ、未だFAX・郵送も現役

  • 通知書作成に使用する住民税システムが旧来のバッチ処理型

特に自治体間連携は「努力義務」とされ、実務は人力ベース。国が“制度だけ作って丸投げ”している現状が、処理のばらつきと二度手間を引き起こしているのです。


第5章|人事担当者が今できる3つの実務対策

完璧を求められない状況であっても、現場ではミスを防ぐ必要があります。以下の3点を意識するだけでも、混乱は減らせます。

① 住民税決定通知書を「確定情報」と思い込まない

→ 特にワンストップ特例を使っている社員がいる場合は「後から控除が反映される可能性あり」と認識しておきましょう。

② 社員への周知文書を用意しておく

→ 「ふるさと納税控除が初回通知に反映されていない場合、6~7月頃に再通知が届く可能性がある」と、事前に共有しておくだけでトラブルが防げます。

③ 訂正通知書が届いた際の処理フローを整備

→ 差額精算・システム修正・給与反映の流れをマニュアル化し、抜け漏れを防止。


第6章|給与計算を外注するメリット──社労士による情報発信力と制度対応力

ふるさと納税のように「税と給与」が交差する場面では、制度の動向に敏感な専門家の支援が欠かせません。

特定社会保険労務士杉山晃浩事務所では、給与計算だけでなく、

  • 税制改正や運用変更の情報発信

  • ミスが起きやすい時期の注意喚起

  • 難解な行政文書の読み解き

など、制度の変化に応じたリアルタイムなサポートを行うことができます。

給与計算を“数字の入力”と捉えて内製していると、こうした「制度変化への感度」や「法改正への即応力」が不足しがちです。むしろ、外注することで見えてくる課題やリスクがあります。


第7章|行政への提言──「あと出し」運用からの脱却を求めて

最後に、行政への提言です。

  • ワンストップ特例の処理期限と通知スケジュールの整合性

  • 自治体間でのリアルタイムデータ連携の構築(API化・共通クラウド化)

  • 民間企業と同水準の「精度」と「納期意識」の導入

民間企業であれば、誤った住民税額を顧客に通知し、後で「やっぱり違ってました」では済みません。行政だけが例外的に許されているこの「あと出し運用」は、納税者と企業の信頼を損なう要因です。

私たち社労士としても、声を上げていく必要があります。


結びに

ふるさと納税制度そのものは素晴らしい仕組みですが、それを取り巻く行政処理の遅れが、現場を疲弊させています。
だからこそ、給与計算という実務を、制度と現場の両面からサポートできる社労士に任せることは、企業のリスクヘッジにもなるのです。

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