求人票の“休日数”にご注意!知らないとトラブルになる休日・休暇の違い
杉山 晃浩
「うちは“年間休日120日”って書いてるのに、“そんなに休みがないじゃないか”って言われてしまって…」
ある中小企業の人事担当者から、そんな相談を受けました。
これは、休日と休暇の違いを理解していないことから生まれる“よくあるトラブル”です。
求人票には正確な表記が求められますが、実は多くの企業がここでつまずいているのです。
第1章:その「休み」は休日?それとも休暇?
「休み」と一口に言っても、それが“休日”なのか“休暇”なのかで意味が大きく異なります。まずは基本的な定義を整理しましょう。
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休日:労働義務のない日。就業規則等で「この日は働かなくてよい」とあらかじめ定められている日。
例:日曜、祝日、会社が定めた土曜日など -
休暇:本来働く日だけれども、“理由があって働かなくてもいい”とされる日。
例:年次有給休暇、慶弔休暇、夏季休暇、育児休暇など
つまり、「休暇」は“出勤日だけど、特別に休むことができる制度”なのです。
この違いは、求人票や労働契約の作成時にとても重要になります。
第2章:なぜこの違いが重要なのか?──求人票記載ルールと法律の関係
ハローワークや求人媒体における求人票では、「年間休日数」には“休日”のみをカウントするというルールがあります。
たとえば、
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毎週日曜と土曜を休日としており
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祝日は休み
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年末年始に5日、夏季休暇に3日の休暇を与えている
この場合、年間休日数は、週休2日+祝日の合計になります。
年末年始や夏季休暇が「特別休暇」として扱われているなら、“年間休日数”には含められません。
しかし、多くの企業では「年間休日120日(うち夏季3日、年末年始5日含む)」と記載してしまいがちです。これは誤りとされる可能性があり、行政指導や求職者とのトラブルの火種になります。
第3章:ありがちな誤記載とそのリスク
実務では次のようなミスがよく見られます。
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実際は年間休日108日なのに、夏季休暇(3日)と年末年始(5日)を足して「年間休日116日」と表記
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年次有給休暇の計画付与分を“年間休日”に含めている
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「年間休日120日」をうたって採用したが、入社後に実情と違い退職者が出た
このようなミスは、採用時の「労働条件の明示義務違反」にもなり得るため、注意が必要です。
また、労働基準監督署からの是正指導や求人票の掲載停止措置が取られる場合もあります。
第4章:では夏季休暇はどう扱えばいいのか?
多くの企業が夏季休暇(いわゆる“お盆休み”)を与えていますが、その扱い方によって、休日か休暇かが分かれます。
🔸 ケース1:就業規則で「8月13〜15日は休日」と定めている
→ この場合は「休日」として取り扱い可能です。
求人票の「年間休日数」に含めても問題ありません。
🔸 ケース2:「8月に3日、夏季休暇を付与」としている
→ これは「特別休暇」です。
有給か無給かは企業次第ですが、「休日」には含めず、別枠で記載すべきです。
第5章:正しく伝えるための求人票作成ポイント
求人票を作成する際は、求職者が誤解しないような記載が重要です。
✅ 正しい表記の例:
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年間休日:110日(土日祝日、年末年始含む)
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その他休暇:夏季休暇3日(特別休暇)・慶弔休暇・年次有給休暇あり
このように、休日は年間休日数として、休暇は「その他休暇」欄に分けて記載することで、透明性が高まります。
求職者との信頼構築にもつながり、採用後のミスマッチを防ぐことができます。
第6章:まとめ──“休みのルール”を整えて、採用と定着の信頼を守ろう
「休み」の表記は、ほんの数文字の違いで求職者の印象を大きく左右します。
特に、年間休日の数字だけで企業を選ぶ求職者も多いため、数字の根拠と内訳は明確に伝えることが重要です。
また、自社で「休暇」が多く設定されている場合は、それを逆に福利厚生としてアピールできるチャンスにもなります。
採用力強化のためにも、就業規則の整備と求人票の見直しをぜひ行ってみてください。
📌 専門家のサポートを活用しましょう
求人票の記載ルールや就業規則の整理に不安がある場合は、特定社会保険労務士杉山晃浩事務所や採用定着士を多数抱えているオフィススギヤマなどの専門家に相談することをおすすめします。
トラブルを未然に防ぐための「備え」が、良い採用と定着につながります。
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