アプリで採用したら即労働契約!? スポットワーク利用企業が知るべき法的リスクとは?

杉山 晃浩

第1章 便利さの裏にある“見えない責任”

最近では、人手が足りないときに便利に使える「スポットワーク」が急速に広がっています。
スマホで求人を出し、あっという間に人が決まる。まるで通販のようなスピード感です。

しかしその「便利さ」に隠された法的リスクをご存知でしょうか?
スポットワーカーは、“労働者”として扱わなければならない存在であり、単なる助っ人バイト感覚で扱うと重大なトラブルにつながることも。

実際に、ある労働基準監督官からはこう言われました。

「スポットワーク絡みのトラブルは今、非常に多い。できるだけ使わないほうがいい。」

それだけ、現場で“火種”になっているケースが多いのです。


第2章 「応募=契約成立」!? 面接なしでも労働契約が成立するケース

スポットワークでは、アプリを通じてワーカーが求人に「応募」した瞬間、労働契約が成立していると見なされるケースがあります。
特に、面接ややり取りを経ずに「先着順」で決まる仕組みでは、応募ボタンを押しただけで契約が成立しているという判断も。

これは、雇用主側が「承諾」していなくても、双方向の意思が確認されたとみなされるからです。

つまり、「まだ採用した認識はない」という感覚では通用しません。
契約が成立していれば、当然、労働条件の明示義務や労働基準法の適用対象となります。


第3章 “ネットで仕入れた知識”で逆襲される時代

近年のスポットワーカーには、驚くほど労働法に詳しい方がいます。
多くは、ネット上の情報をピンポイントで拾い集め、「自分に有利な解釈だけ」を盾に主張してきます。

たとえばこんなケースがあります:

  • 「労働条件通知書を出していないのは違法です」

  • 「交通費が出ていないのはブラックですよね?」

  • 「着替えの時間も労働時間ですよね?」

もちろん、これらは正しい側面もありますが、実際の状況や契約内容を無視して一方的に主張されると、対応に苦慮します。
経営者として「知らなかった」では通用せず、書面や記録がすべての判断材料となるのです。


第4章 キャンセル・早上がり・待機時間…経営者がやりがちなNG対応

スポットワーク特有のリスクは「予定外の対応」に集約されます。

  • 前日に「来なくていい」とキャンセルした → → 休業手当の対象になる可能性あり

  • 制服の着替え時間を労働時間に入れていない → → 時間外労働請求リスクあり

  • 実労働時間と違う時間で支払っている → → 未払い賃金で訴えられることも

スポットワーカー側から勤務時間の修正申請が届いたとき、すぐに確認・対応しなければ、「生活の糧を奪われた」としてSNSで晒されることもあります。


第5章 知らなかったでは済まされない、労災・ハラスメントの対応

スポットワーカーも労災保険の対象です。
通勤途中の事故、現場での転倒、備品の取扱中のけが――たった1日の就労でも労災申請が必要になる場合があります。

また、ハラスメントの対応も本採用者と同様に求められます。
「うちは短期バイトだから」と安心していると、逆にハラスメント事案に発展した際のダメージが大きくなります。


第6章 “使うなら、守る”が原則。リスクを防ぐ3つの対策

便利なスポットワークですが、安易に使えば使うほど、リスクの火種は増えます。
もし利用するなら、以下の対策が欠かせません。

  1. 労働条件通知書や契約書の整備(テンプレート化推奨)

  2. 就業規則にスポットワーク対応条文を明記

  3. 初回就業時の安全衛生・ハラスメントに関する周知義務の履行

いずれも、社労士などの専門家と連携しながら整備しておくことで、トラブル時の“備え”になります。


【まとめ】便利さの裏にある法的責任を正しく理解しよう

スポットワークは「便利」な半面、「責任が軽いわけではない」ことをしっかり理解しておく必要があります。

法的にはれっきとした労働契約であり、企業側が義務を怠れば違法行為と判断されます。
一見「気軽な採用」でも、後々深刻なトラブルや評判リスクに発展することも。


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スポットワーカーの活用や、雇用契約書の整備、就業規則の見直しをご検討の方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
現場で起こりがちなトラブルを熟知した社労士が、実践的な対応をご提案します。

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