最低賃金アップに備える!──厚労省の「賃上げ支援策」と自社経営目標のすり合わせ方
杉山 晃浩
最低賃金の上昇は“待ったなし”
2025年10月からの最低賃金改定は、全国平均でついに1,000円を超える水準になる見込みです。
中小企業にとっては「また人件費が上がるのか…」と頭を抱える一方で、厚生労働省は賃上げを後押しするための支援策を拡充しています。
つまり、「コスト増で苦しい」か「支援策を活用して一歩前進する」かは企業次第。
今回は厚労省が用意する支援メニューを、自社の経営目標と照らし合わせてチェックしてみませんか?という視点でお伝えします。
厚労省が示す「賃上げ支援」の全体像
厚労省が打ち出している賃上げ関連の代表的な制度は、大きく分けて以下の3つです。
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業務改善助成金:最低賃金を引き上げた上で、生産性向上に資する投資をすると費用の一部を助成。
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キャリアアップ助成金:非正規社員を正社員化したり、賃金規定を改定して処遇改善した場合に助成。
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人材開発支援助成金:社員教育や研修の費用・時間単価を助成し、スキル向上→賃上げにつなげる仕組み。
加えて、人材確保等支援助成金や**働き方改革推進支援助成金(団体)**などもあり、幅広い「賃上げの切り口」に対応しています。
その他の支援策は、厚生労働省のパンフレット「最低賃金・賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援施策」を参考にしてください。
制度を“丸暗記”する必要はない
これらの制度をすべて覚える必要はありません。
むしろ大事なのは、「自社の経営目標」と「国の施策」をどう重ねるかです。
例えば:
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設備投資して生産性を高めたい → 業務改善助成金
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非正規を正社員にして組織の安定を図りたい → キャリアアップ助成金
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社員教育でスキルアップを進めたい → 人材開発支援助成金
つまり、目標ありきで制度を選ぶことがポイントです。
経営目標と支援策を照らす“チェックリスト思考”
経営目標が「人件費抑制」だけだと支援策はうまく活用できません。
そこで、以下のような問いかけでチェックしてみてください。
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来期の目標は「売上拡大」?それとも「離職率の低下」?
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人材育成を強化したいのか?非正規社員を戦力化したいのか?
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投資余力があるのか?それとも人材確保・育成を優先したいのか?
この問いに答えることで、自然と「自社が狙うべき助成金」が見えてきます。
支援策は“未来投資”とセットで考える
助成金はあくまで「きっかけ」です。
単にコスト補填と捉えるのではなく、未来への投資を加速する燃料として利用するのが賢いやり方です。
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機械更新を通じて、長時間労働を減らす
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正社員化によって、定着率を上げてサービス品質を安定させる
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教育訓練で、次世代のリーダー候補を育てる
こうした「未来の絵」とつなげることで、支援策は単なる“お金”から“経営戦略の一部”へと変わります。
まとめ──「チェックしてみる」第一歩を
厚労省が打ち出した最賃対策は、全国の中小企業にとって経営を見直す好機です。
今回のメッセージとしてお伝えしたいのはシンプルです。
👉 「うちの経営目標と重ねてみると、どの助成金が使えそうかな?」
この一言を社内で投げかけてみてください。
もし「よくわからない」と思ったら、私たち専門家に相談いただければ、どの制度が合うか一緒に整理できます。