人事担当者必見!日当で変わる節税と手取りアップの仕組み

杉山 晃浩

第1章 はじめに──なぜ今「日当」に注目するのか

「人件費は上がる一方なのに、社員の手取りはなかなか増えない」──多くの中小企業の経営者・人事担当者が抱える共通の悩みです。特に最低賃金や社会保険料の上昇は避けられず、経営と従業員双方にとって重い負担となっています。

そんな中で、あまり知られていない「日当」という仕組みが注目されています。日当は正しく活用すれば、会社にとっては節税になり、社員にとっては手取りアップにつながる可能性があります。本記事では、税務上の日当の扱いから具体的な活用法まで、実務に役立つポイントを整理していきます。


第2章 日当とは何か?──給与との違いを理解する

日当とは、出張や転勤などで発生する雑費(食事代や交通費の細かな支出など)に充てるため、会社が従業員に支給するお金のことです。

重要なのは、日当は「給与」とは別枠で扱われるという点です。給与は原則すべて課税対象ですが、日当は一定の条件を満たせば所得税が非課税となります。

所得税法第9条第1項第4号では「出張に通常必要な費用の範囲内で支給された金品は非課税」と定められています。つまり、会社が合理的な基準で日当を支給していれば、給与と違って税金がかからないのです。


第3章 日当が非課税と認められる条件

では、どのような場合に日当は非課税と認められるのでしょうか?国税庁の「所得税基本通達9-3」には、次のような判断基準が示されています。

  1. 社内で役職や職務に応じて適正なバランスが取れているか

  2. 同業種・同規模の会社が支給している金額に照らして妥当か

この「社会通念上相当な範囲」であれば非課税扱いになります。

実務上の相場(国内出張の場合)

  • 一般社員:2,000円〜3,000円

  • 管理職:3,000円〜5,000円

  • 役員:5,000円〜7,000円

海外出張の場合は、物価に応じて3,000円〜1万円程度が目安です。
また、公務員の旅費規程(国内2,700円など)が、相場の基準としてよく参照されます。


第4章 日当活用による節税の仕組み

給与で支給した場合と日当で支給した場合を比べると、違いは明確です。

給与で支給した場合

  • 課税対象となり、所得税・住民税がかかる

  • 標準報酬月額に算入され、社会保険料も上がる

日当で支給した場合(非課税範囲内)

  • 所得税・住民税はかからない

  • 社会保険料にも影響しない

  • 会社は旅費として経費計上できる

つまり、同じ金額を「給与」で支払うか「日当」で支払うかで、社員の手取りも会社のコストも大きく変わるのです。


第5章 従業員の手取りを増やす方法

具体例で見てみましょう。

例:月3万円を追加支給する場合

  • 給与で支給 → 所得税・社会保険料が差し引かれ、手取りは約2万円程度

  • 日当で支給 → 非課税扱いとなり、まるまる3万円が手元に残る

社員から見れば、手取りが1万円増えるのと同じ効果です。
しかも会社にとっても、社会保険料の会社負担分が増えないため、ダブルで得をする仕組みといえます。


第6章 注意すべきリスクと落とし穴

ただし、日当活用には注意点もあります。

  • 過大な日当は課税される
    (国内出張で1万円などは「通常必要な範囲」を超えると判断される可能性大)

  • 名目だけの日当は認められない
    実際に出張していないのに日当を出すと、給与扱いとなり否認リスクが高い

  • 規程がなければアウト
    社内に「旅費規程」がないと、日当の合理性を説明できずトラブルになりやすい

税務調査では「規程に基づき、全社員に公平に支給しているか」が必ず確認されます。


第7章 すぐにできる実務対応

日当を活用したい企業は、まず旅費規程の整備から始めましょう。

  • 役職・職務に応じて日当額を明確に設定する

  • 宿泊・日帰りなど条件ごとの区分を定める

  • 実際の出張命令書・精算書と紐づけて支給する

また、社員への説明も重要です。「なぜ日当があるのか」「どうすれば手取りが増えるのか」を理解してもらうことで、制度への納得感も高まります。


第8章 まとめ──日当を活かす企業が得をする

日当は単なる「出張の小遣い」ではなく、経営と社員双方にメリットをもたらす仕組みです。

  • 会社にとっては経費化による節税効果

  • 社員にとっては手取りが増える効果

  • 人事担当者にとっては、福利厚生や従業員満足度の強化につながる

もちろん、過大支給や不適切運用にはリスクがあります。しかし、旅費規程を整備し、適正な範囲で運用すれば「会社も社員も得をする」制度となります。

これからの時代、単なる給与引き上げでは限界があります。人事担当者は、ぜひ「日当」という選択肢を上手に活用し、節税と手取りアップを両立させてみてください。

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