フリーランス法対応は待ったなし!発注者が必ず守るべき7つの義務【労働局調査もスタート】

杉山 晃浩

2024年11月に施行された「フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等法)」をご存じでしょうか。
正式名称は少し堅苦しいですが、この法律は フリーランスと取引をする全ての事業者に義務を課す ものです。

背景には、フリーランスの増加と、それに伴う不払い・買いたたき・ハラスメントといったトラブルの多発があります。国は「個人と組織の力の差」による不利益をなくすために、取引ルールを法律で整えました。

すでに労働局による調査も始まっており、例えば宮崎県では 月4~5件の調査ノルマ があるとされています。現段階では「現状把握と法令周知」が主目的ですが、いずれ本格的な是正指導に進むのは時間の問題です。

「まだ対応していない」という発注者は要注意。今回は、発注者が必ず守らなければならない7つの義務を整理し、違反した場合のリスクと実務対応のチェックポイントを解説します。


第1章 フリーランス法とは何か?

フリーランス法は、フリーランスとの取引において発注者に義務と禁止行為を定めた法律です。

対象となる事業者

  • 特定受託事業者(フリーランス)
    従業員を雇わずに仕事を請ける個人事業主や一人法人。

  • 業務委託事業者(発注者)
    フリーランスに業務を委託する企業や個人事業主。

法律の目的

  • 取引の適正化:報酬の不払い・遅延・不当な返品や買いたたきを禁止

  • 就業環境の整備:虚偽広告の禁止、育児・介護への配慮、ハラスメント防止、契約解除の事前予告

下請法と違い、業種や企業規模に関係なくすべての取引が対象になる点が大きな特徴です。


第2章 労働局調査がスタート!発注者への影響

全国の労働局では、すでにフリーランス法に基づく調査が始まっています。宮崎県では、月4~5件の調査がノルマとして割り当てられているとの情報があります。

現時点での調査内容は、

  • フリーランスとの取引実態の確認

  • 法令の周知と意識啓発

が中心です。しかし、今後は是正勧告や罰則適用に進むことは確実です。

「うちは小さい会社だから関係ない」と思っている中小企業こそ、狙われやすいのが現実です。なぜなら、まだ法令対応が進んでいない事業者が多いからです。


第3章 発注者が必ず守るべき7つの義務

1.契約条件の明示義務(第3条)

業務を依頼したら、取引条件を必ず書面かメール等で明示しなければなりません。
対象はフリーランス同士の取引も含まれるため、企業だけでなく発注側がフリーランスの場合も義務があります。

明示すべき主な内容

  • 業務の内容(成果物、役務提供)

  • 報酬の額や算定方法、支払期日

  • 納品期日や実施場所

  • 契約解除に関する条件


2.報酬支払義務(第4条)

フリーランスの報酬は、納品から60日以内に支払うことが法律で義務付けられました。
再委託の場合は、発注元からの支払期日から30日以内がルールです。

「締め支払い」が慣例の企業は、フリーランスに適用できるか確認が必要です。遅延や不払いは重大な違反になります。


3.不当な取引行為の禁止(第5条)

以下の行為はすべて禁止されています。

  • 正当な理由なく受領を拒否する

  • 報酬を減額する

  • 返品を強要する

  • 通常相場より著しく低い報酬設定(買いたたき)

  • 自社指定の商品やサービスを強制的に購入させる

  • 金銭や役務の提供を不当に要求する

  • 不当なやり直しや内容変更

これらは「ついやりがち」なことも多く、中小企業ほど注意が必要です。


4.募集情報の的確表示義務(第12条)

求人広告やクラウドソーシングでフリーランスを募集する際、虚偽や誤解を招く情報を出してはならないと定められています。
報酬額・契約期間・仕事内容は、正確かつ最新の情報で表示する必要があります。


5.育児・介護への配慮義務(第13条)

6か月以上の契約では、フリーランスが妊娠・出産・育児・介護と両立できるよう配慮が必要です。
具体的には、納期の延長や業務量の調整などが求められます。


6.ハラスメント防止体制の整備義務(第14条)

フリーランスとの間でもハラスメントが起きうるため、相談窓口の設置や対応体制を整える必要があります。
顧客からの迷惑行為やパワハラ的言動も対象になる点に注意が必要です。


7.契約解除の事前予告・理由開示義務(第16条)

6か月以上の契約を中途解除する場合は、原則30日前までに予告し、理由を開示しなければなりません。
不意打ちの解除はフリーランスの生活を直撃するため、十分な説明責任が求められます。


第4章 違反した場合のリスク

フリーランス法に違反すると、次のような対応を受ける可能性があります。

  • 公取委・中小企業庁・労働局による助言・指導

  • 勧告や命令

  • 違反事業者名の公表

  • 50万円以下の罰金(法人両罰規定あり)

特に「公表」は、信用を大きく損なうリスクがあります。取引先や求職者からの信頼を失い、経営への影響は計り知れません。


第5章 中小企業が今すぐできる実務対応チェックリスト

発注者としての最低限の対応を、以下の流れで確認しましょう。

✅ フリーランスへの委託があるか棚卸しを行う
✅ 契約条件を明示するフォーマットを整備する
✅ 報酬支払フローを確認(60日以内ルールに適合しているか)
✅ 募集広告や求人票の内容を再点検
✅ ハラスメント防止体制を整備(相談窓口、規程の追加など)
✅ 長期契約の解除ルールを見直す


おわりに

フリーランス法は、単なる「一部のフリーランス保護法」ではありません。中小企業を含むすべての発注者が守らなければならない法律です。

労働局の調査が始まり、今はまだ「周知と現状把握」の段階ですが、やがて違反への本格的な対応が始まります。
「知らなかった」「対応が遅れた」では通用しません。

対応を始めるのに早すぎることはありません。
今こそ、フリーランスとの取引を棚卸しし、契約と就業環境を整備する絶好のタイミングです。

迷ったときや心配なときは、オフィススギヤマグループを頼ってください。まずは、相談から始めましょう!

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