投資はギャンブルではない!──企業型DCを成功に導く“資産運用の正しい考え方”
杉山 晃浩
はじめに:なぜ「投資=ギャンブル」と思ってしまうのか
企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入しようと考えた経営者の中には、
「株式市場が下がったら大損するのでは?」
「結局は博打と同じなのでは?」
と不安になる方が少なくありません。
その背景には、日本では金融教育が十分に行われてこなかったという事情があります。預金は安全で、投資は危険。そんなイメージが刷り込まれてしまい、冷静な判断が難しくなっているのです。
しかし、世界に目を向ければ事情は違います。海外では子どもの頃から「預貯金」「投資」「投機」「博打」を明確に区別して学びます。そのため「投資=ギャンブル」という誤解は少なく、企業や個人が資産運用を自然に行う文化が根付いています。
では、この4つの違いを整理しながら、企業型DCの導入に必要な「正しい資産運用の考え方」を見ていきましょう。
第1章:預貯金・投資・投機・博打はまったく別物
まずは言葉の整理から始めます。似ているように思えても、それぞれの意味は大きく異なります。
1. 預貯金
銀行や信用金庫にお金を預けること。利息は低いですが、元本が保証される安心感があります。
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メリット:安全性が高い、すぐに引き出せる。
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デメリット:金利が低く、インフレになるとお金の価値が目減りする。
2. 投資
企業や国の成長にお金を託し、長期的にリターンを得ようとする行為です。株式、投資信託、不動産などが代表例。
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メリット:預金より高いリターンを得られる可能性がある。
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デメリット:価格変動リスクがある。ただし、長期分散投資でリスクを抑えられる。
3. 投機
短期的な値動きを狙って売買を繰り返す行為。例えば「明日株価が上がるから今日買う」といった取引です。
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メリット:短期間で大きな利益を得られる可能性がある。
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デメリット:外れれば損失も大きい。安定した資産形成には不向き。
4. 博打(ギャンブル)
競馬やパチンコなど、偶然に依存して結果が決まる行為。期待値はマイナスに設計されており、続ければ続けるほど損をする仕組みになっています。
第2章:資産運用とは「預貯金+投資」
海外では、資産運用とは「預貯金と投資を組み合わせること」と教えます。
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預貯金=生活の安全を守る土台
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投資=将来に備える成長エンジン
この2つをバランスよく組み合わせることが、資産運用の基本です。
逆に「投機」や「博打」は資産運用には含まれません。ここを混同すると、「投資=危ない」という誤解が生まれてしまうのです。
第3章:ドルコスト平均法が不安を和らげる
企業型DCを導入する際、多くの社員が不安に思うのが「株価が下がったらどうするのか」という点です。
ここで重要なのが ドルコスト平均法 という考え方です。
これは毎月同じ金額を積み立てていく方法で、株価が高いときは少ししか買えず、株価が安いときは多く買える仕組みになっています。
結果的に、長期で見れば「平均購入単価が下がり、リスクが分散される」という効果が生まれます。
つまり、一時的な市場の上下に振り回されず、長期的にコツコツ資産を積み立てられるのです。
海外では、この仕組みを子どもの頃から学んでいます。だからこそ「株価が下がるときこそチャンス」と考えられるのです。
第4章:企業型DCにおける資産運用の役割
企業型DCは、企業が社員の将来を支えるための重要な福利厚生制度です。
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預貯金だけに頼ると?
インフレでお金の価値が減ってしまい、老後資金が不足する可能性があります。 -
投資を組み合わせると?
長期の積立で資産が成長し、老後の安心につながります。
経営者にとって大切なのは「社員が将来に安心感を持てる制度」を整えることです。そのために、投資を正しく理解し、制度設計に組み込む必要があります。
第5章:金融教育が経営者にも社員にも必要
残念ながら、日本ではまだ「投資=ギャンブル」という誤解が根強いです。
しかし、正しい知識を持てば、その不安は解消できます。
オフィススギヤマでは、企業型DCを導入する企業に向けて、経営者や社員への金融教育サポートを行っています。
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預貯金・投資・投機・博打の違い
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ドルコスト平均法などのリスク分散の方法
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企業型DCを通じた資産形成の仕組み
これらをわかりやすく伝えることで、制度が「不安の種」ではなく「安心の土台」となるよう支援しています。
まとめ:誤解をなくせば企業型DCは強力な制度になる
投資と投機、投資と博打はまったくの別物です。
資産運用とは「預貯金+投資」であり、社員の未来を守るための仕組みです。
もし「投資は怖い」と思っているなら、それは知識不足から来る誤解かもしれません。
企業型DCを正しく理解し導入すれば、社員の老後不安を和らげ、企業にとっても魅力的な福利厚生となります。
投資はギャンブルではありません。
正しい知識を持ち、賢く制度を活用することが、経営者にとっても社員にとっても大きな力になるのです。