人を増やしたのに仕事が回らない? ブルックスの法則が教える“人手不足の真実”

杉山 晃浩

「人手が足りない!早く人を入れて!」
そんな声が現場から上がると、多くの経営者は採用を急ぎます。

ところが現実には、
「人を増やしたはずなのに、なぜか余計忙しくなった…」
この現象、実はよく起きるのです。

いったい何が問題なのでしょうか。
今回は、システム開発の世界で生まれた「ブルックスの法則」から
人手不足の真実を読み解いていきます。


1章:採用しても忙しいまま…その理由に心当たりありますか?

中小企業・介護事業所・クリニックなど、
人手不足に悩む現場ほど「人を増やす=解決策」と考えがちです。

しかし、採用したスタッフを迎えると
現場では逆の現象が起きます。

  • ベテランの業務時間が奪われる

  • ミス対応でさらに負担が増える

  • “誰が教えるか”でゴタゴタ

  • 結局、管理者が疲弊する

救世主になるはずの新人が、
気づけば現場全体の負担増につながるケースは珍しくありません。


2章:ブルックスの法則とは?遅れたプロジェクトがさらに遅れる理由

ブルックスの法則は、
アメリカのフレデリック・ブルックスが
ソフトウェア開発の経験から提唱した考えです。

遅れているプロジェクトに人を追加すると、さらに遅れる。

短い文章ですが、重要な示唆を含んでいます。

仕事というのは、
人数を増やせば増やすほど比例して進むわけではありません。
むしろ、状況によっては効率が落ちてしまうのです。


3章:なぜ人数を足すと仕事が遅れるのか?3つの根本原因

ブルックスの法則には、現場にも当てはまる理由があります。
大きく3つに整理できます。


①教育コストの増加

新人が入ると、ベテランが教える必要があります。
当然、教えている間は自分の仕事が止まります。

新人が2人、3人と増えれば、
教える時間も比例して増加します。

「教育係が疲れて辞めてしまった」なんて話、現場でよく聞きませんか?


②コミュニケーション量の増大

人数が増えると、連絡や調整の量も増えます。
実はこれが最も厄介です。

人数が増えるほど
人と人のつながりは爆発的に増えるためです。

  • 2人なら関係は1つ

  • 5人なら10の関係

  • 10人なら45の関係

  • 20人なら190の関係!

調整や確認に取られる時間は、現場を静かに蝕みます。


③業務分解の複雑化

一人の仕事を複数に割り振ると、
作業の切れ目でミスが起こりやすくなります。

「誰が何をどこまで?」が曖昧だと
フォローの手間ばかり増え、
逆に業務が遅くなるという皮肉な状態が起きます。


4章:社労士は見てきた…介護・クリニックで起きる“負のループ”

介護や医療の現場で特に起きやすいのが
次のような悪循環です。

1)人が足りない
2)新人を増やす
3)教育負担でベテランが疲弊
4)ミスやクレームが増える
5)ベテランが退職
6)さらに混乱
7)「もっと人を増やさなきゃ!」

この雪だるま式の悪化は、
経営者の判断ミスではなく
「仕組みの不備」が招きます。

採用コストも膨れ上がり、
苦しい経営状況に拍車がかかります。


5章:人が増えても回らない現場の共通点

私が関わってきた企業の多くでも
次の傾向が共通して見られます。

  • 業務が言語化されていない
     (マニュアルなし、OJT任せ)

  • 教育担当が固定されていない
     (“できる人”に負担集中)

  • 属人化の山
     (あの仕事は●●さんだけ)

  • 不明瞭な役割分担
     (何でも屋が量産される)

要するに…

「仕組み不足が原因なのに、採用で解決しようとしている」

ここが最大のズレなのです。


6章:どう防ぐ?ブルックスの法則に負けないための解決策

ここからが重要なパートです。
働く現場に必要なのは
**採用よりも先に“仕組み化”**です。


1)業務の標準化・マニュアル化

  • どの人がやっても同じ品質に

  • 仕事が属人化しない仕組みづくり

  • 新人教育が効率化し、ミスも減る


2)教育設計を整える

  • 教育担当を明確に

  • 負担が偏らないよう調整

  • 「教えること」が評価される制度を整える


3)試用期間の活用

試用期間を
「即戦力化ステージ」として活用する
評価とフィードバックを計画的に行う


4)タスクの可視化とムダ・ムラの排除

現場が「何に時間を取られているか」
見える化するとムダを発見できる


5)採用は課題整理が済んでから

採用は最後の手段であり、
土台ができてからにする方が会社は強くなります。


7章:本当に必要なのは人数より“設計図”

人を増やすという施策は、
悪いわけではありません。
ただ、順番があるのです。

  • 誰が

  • 何を

  • どこまで

  • どんな環境で

  • どう成果につなげるのか

これを整理しないまま人を増やすと
会社は迷路に迷い込みます。

組織は足し算ではなく、
掛け算で強くなるもの。

人材は、環境次第で輝き方が変わります。


8章:まとめ|人を増やす前に、人が活きる土台を作る

ブルックスの法則が教えてくれるのは
「人手不足の真実」です。

  • 足りないのは“人”ではなく“仕組み”のことが多い

  • 人を増やしても混乱するだけのときがある

  • 採用の前に、設計図づくりが必要

人を迎えるための土台が整えば、
スタッフは自然と力を発揮できます。


9章:本気で現場を変えたい経営者へ

もしあなたが、

  • 現場を強くしたい

  • 人材の力を最大化したい
    そう考えているなら、
    私たちはその力になれます。

ただし、
「とりあえず話だけでも…」という段階なら
まだ相談は不要かもしれません。

行動を起こす準備ができたとき、
ぜひ声をかけてください。

採用は投資です。
ならば、無駄な投資はやめましょう。

あなたの組織が
人材の力が活きる魅力的な職場になるよう、
一緒に改善していきましょう。

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