禁止で人は育たない──カリギュラ効果で考える“逆効果なルール運用”

杉山 晃浩

第1章 なぜ「禁止」が社員のやる気を奪うのか

「やるな」と言われると、なぜか“やりたくなる”——。
これが心理学でいうカリギュラ効果です。
禁止されるほど、人はその行動に興味や執着を抱くようになるという人間の深層心理。

この原理は、実は職場のルール運用にも大きく関係しています。
たとえば、上司が「余計なことはするな」と言えば、社員は本当に何もしなくなります。
「勝手に判断するな」と言えば、考える力そのものが萎えていきます。

経営者が「ルールで社員を管理しているつもり」が、
いつのまにか「社員の自発性を奪うブレーキ」になっている。
そんな逆転現象こそ、カリギュラ効果が生む“職場の落とし穴”なのです。


第2章 禁止が生む“逆効果”の実例

では、具体的にどんな現場で「禁止」が裏目に出ているのか。
実際の労務現場でよく見かける3つの事例を見てみましょう。


事例①:介護現場

ある介護事業所では、クレーム防止のためにマニュアルを細かく整備しました。
「利用者と雑談しすぎない」「介助中の私語禁止」など、細部まで“禁止”を徹底。

ところが、その結果——
スタッフの笑顔が消え、現場に冷たい空気が流れるようになりました。
本来、利用者との“温かい関わり”こそが介護の価値なのに、
「間違えたら叱られる」という恐怖が先立ち、職員はロボットのように黙々と働くようになってしまったのです。


事例②:営業部門

「値引き禁止」ルールを設けた会社では、営業担当が“言われた通り”に動くようになりました。
顧客からの柔軟な要望にも「会社のルールなので」と断るばかり。
結果、顧客満足度は下がり、競合に取引を奪われる結果に。

ルールで縛るほど、社員は“考える”ことをやめ、
お客様にとっての最善を探る姿勢まで失ってしまうのです。


事例③:医療機関

SNS投稿を全面禁止にした医療法人では、職員の採用広報力が激減しました。
スタッフが日常を発信できなくなり、
「雰囲気が分からない職場」として応募者から敬遠される結果に。

ブランドを守るための禁止が、
逆に“発信力の低下”という副作用を生んでしまったのです。


これらの事例に共通するのは、
「禁止で守ったつもりが、信頼を失っている」ということ。
ルールは“管理のため”ではなく、“信頼のため”に存在すべきなのです。


第3章 禁止ではなく「仕掛け」で動かす

人は「禁止」ではなく、「きっかけ」に反応します。
これが、行動経済学やナッジ理論でも証明されている事実です。

たとえば——

  • 「遅刻禁止」よりも「5分前行動でチームを守ろう」

  • 「ミスをするな」よりも「ミスを共有して再発防止を」

  • 「スマホ禁止」よりも「業務チャット活用で報連相を早く」

同じ意味でも、“否定の言葉”から“肯定の提案”に変えるだけで、
人の動機は劇的に変わります。

つまり、経営者や管理職が本当にすべきは、
「禁止」ではなく「自ら動きたくなる仕掛けづくり」。
これは単なる言葉遊びではなく、仕組みで人を動かす経営手法なのです。


第4章 “自由”を与えても崩れない組織の条件

「じゃあ自由にさせればいいのか?」
多くの経営者がここで不安になります。

もちろん、自由と放任は違います。
大切なのは、自由の前提となる“目的と信頼”の共有です。

自由を支える3つの仕組み

  1. 目的を明確にする
     社員が何のために動くのかを知っていれば、過剰な指示は不要。

  2. 権限を段階的に委譲する
     最初は小さな決定権を任せ、成功体験を積ませる。

  3. 失敗を責めず、学びに変える文化をつくる
     恐れが消えれば、社員は本気で挑戦できる。

これらの仕組みを整えると、
ルールで縛らなくても自然と“責任ある行動”が生まれます。


第5章 社労士が伴走できる「仕組み化」の力

「うちもルールを見直したいけど、どうすれば?」
そんな経営者にこそ、社労士が寄り添えます。

オフィススギヤマグループでは、
単なる規程づくりではなく、“人が自ら動く仕組みづくり”を支援しています。

  • 行動指針カードや評価制度で、社員の行動を見える化

  • ルールを減らしても回る“信頼マネジメント”設計

  • ESチェックによる組織診断で、現場の声を数値化

  • 教育・面談制度を通じて、管理職の伝え方改革

“禁止の文化”を“信頼の文化”に変えるには、制度と運用の両輪が必要。
社労士はその両方を支える専門家です。


第6章 まとめ:禁止ではなく、信頼と共感で動く職場へ

「禁止」では人は動かない。
むしろ、禁止すればするほど“やらない理由”が増えていきます。

経営者が信頼をベースに社員を見守るとき、
職場には「やってみよう」という前向きなエネルギーが生まれます。

もし今、あなたの会社で「社員が指示待ち」「ルールが形骸化している」と感じたら、
その原因は“ルールそのもの”にあるかもしれません。

オフィススギヤマグループでは、
「禁止で動かす組織」から「信頼で動く組織」への転換をサポートしています。
仕組みで人を育てる——それが、これからの時代の人事戦略です。

お問い合わせフォーム

労務相談、助成金相談などお気軽にご相談ください。