立派な企業理念はいりません ──中小企業のための“使えるMVV”のつくり方
杉山 晃浩
第1章|なぜ今、企業理念・MVVが改めて問われているのか
ここ数年、多くの中小企業経営者から
「人が採れない」「採っても定着しない」
という声を聞くようになりました。
給与を上げ、休日を増やし、福利厚生を整えても、思うような成果が出ない。
その一方で、条件面では決して恵まれているとは言えないのに、人が集まり、長く働く会社も存在します。
この差はどこから生まれるのでしょうか。
結論から言えば、「何を大切にして経営している会社なのか」が、言葉として伝わっているかどうかです。
それが、企業理念であり、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。
かつて理念は「余裕のある会社が掲げるもの」と考えられていました。
しかし今は違います。
理念は経営を安定させるためのインフラとして、必要不可欠な存在になっています。
第2章|多くの中小企業が“理念づくり”でつまずく本当の理由
「企業理念を作ろうと思ったことはある」
そう話す経営者は少なくありません。
それでも、多くの会社で理念づくりは途中で止まります。
-
立派な言葉を書こうとして手が止まる
-
抽象的になりすぎて、しっくりこない
-
作ったものの、結局使われない
-
社員に説明しても反応が薄い
こうした失敗の原因は明確です。
理念を“使う前提”で設計していないからです。
理念を「完成品」として作ろうとすると、どうしてもきれいな言葉を並べがちになります。
しかし、それでは経営の現場で役に立ちません。
理念は本来、
・判断に迷ったとき
・トラブルが起きたとき
・人事で悩んだとき
に使われるものです。
使えない理念は、存在しないのと同じです。
第3章|「立派な理念」が中小企業にとって危険になる瞬間
特に注意が必要なのは、大企業の理念をそのまま参考にしてしまうケースです。
社会貢献、世界一、イノベーション、持続可能性。
どれも間違ってはいません。
しかし、中小企業の現場では、理念と実際の判断がかみ合わなくなることがあります。
例えば、
「お客様第一」を掲げながら、理不尽なクレームにも対応し続ける。
「人を大切にする会社」と言いながら、問題社員への対応ができない。
こうした状態になると、理念は経営を縛る足かせになります。
中小企業に必要なのは、立派な理想像ではありません。
必要なのは、現実の判断を助ける軸です。
第4章|中小企業に必要なのは「使えるMVV」という考え方
ここで、MVVを中小企業向けに整理します。
-
Mission(ミッション)
この会社は、何のために存在しているのか -
Vision(ビジョン)
どんな状態を目指して経営しているのか -
Value(バリュー)
判断や行動で大切にする価値観は何か
重要なのは、すべてを完璧に作らなくていいという点です。
最初から美しい文章や網羅的な構成を目指す必要はありません。
むしろ、「判断に使えるかどうか」を基準に考えることが大切です。
MVVは完成品ではなく、運用しながら育てるものです。
第5章|“使えるMVV”は経営のどこで効いてくるのか
では、使えるMVVは、実際の経営でどのように役立つのでしょうか。
採用・定着の場面
求人票や面接で、会社の価値観を言葉にできるようになります。
その結果、「合わない人」を最初から避けることができます。
判断・意思決定の場面
トラブル対応や方針決定で、
「理念に照らすと今回はこうなる」
と説明できるようになります。
社長の感情や場当たり的な判断に頼らなくて済むため、組織が安定します。
人事・労務の場面
注意・指導・評価が、個人の好き嫌いではなく、価値観を基準に行えるようになります。
これは、トラブル防止にも直結します。
第6章|完璧を目指さない“MVVのつくり方”5ステップ
中小企業のMVVづくりは、次の考え方が基本です。
-
社長が「譲れない」と感じる一線を言葉にする
-
過去の成功・失敗を振り返り、共通点を拾う
-
社員に説明する場面を具体的に想定する
-
文章は短く、判断に使える形にする
-
走りながら修正する前提で始める
ここで大切なのは、ひとりで悩み続けないことです。
考えれば考えるほど、言葉は重くなり、手が止まります。
第7章|なぜMVVづくりは「伴走型」でないと機能しないのか
MVVづくりが進まない最大の理由は、
「考えが足りない」からではありません。
むしろ、考えすぎて整理できなくなることが原因です。
第三者が入ることで、
・経営者の言葉を整理する
・余計な装飾を削ぎ落とす
・現場で使える形に翻訳する
ことが可能になります。
オフィススギヤマでは、正解を押し付けるのではなく、
経営者の言葉を一緒に整える伴走型支援を行っています。
WEB対応のため、全国どこからでも支援が可能です。
第8章|立派でなくていい。まずは“経営に使える言葉”を持とう
企業理念やMVVは、社員のためだけのものではありません。
まず守られるべきは、経営者自身です。
判断に迷わないために。
孤立しないために。
会社をブレさせないために。
立派な理念はいりません。
必要なのは、経営に使える言葉です。
もし今、
「何度考えても、しっくりこない」
「このまま放置していいのか不安」
と感じているなら、ひとりで抱え込む必要はありません。
一緒に整理し、使える形にする。
それが、企業理念・MVVづくりの最短ルートです。