日中に電話に出ない=やる気がない、は大間違いです ──在職中応募者を逃す会社の共通点
杉山 晃浩
はじめに|その判断、本当に正しいですか?
「何度電話しても出ない応募者は、やる気がない」
「本気なら、多少無理してでも電話に出るはずだ」
採用の現場では、こうした声をよく耳にします。
しかし、この考え方こそが、在職中の優秀な人材を静かに遠ざけている原因であることに、多くの企業は気づいていません。
今の採用市場で、狙うべき人材の多くは「在職中」です。
にもかかわらず、その前提を忘れた対応をしてしまうことで、
会う前に“無言の不採用”を出している会社が少なくないのです。
第1章|在職中応募者が日中に電話に出られないのは当たり前
在職中の応募者は、日中何をしているでしょうか。
答えは明白です。
仕事をしています。
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現場に出ている
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接客中で電話に出られない
-
会議中でスマホを見られない
これはやる気の問題ではありません。
就業中であるという事実です。
それにもかかわらず、
「出ない=関心が低い」
「連絡が取れない=不誠実」
と短絡的に判断してしまうと、
本来出会えるはずだった人材との接点は、そこで途切れてしまいます。
第2章|「日中に出られる人」だけを評価していませんか?
ここで、少し踏み込んで考えてみましょう。
日中にすぐ電話に出られる人とは、どんな人でしょうか。
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シフト制で時間に余裕がある
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現職が比較的ゆるい
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すでに離職している
もちろん、これが悪いという話ではありません。
しかし、「日中に出られるかどうか」で足切りをしていると、
結果的にどんな人材が残るかは想像がつくはずです。
一方で、
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責任あるポジションについている
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忙しい中でも転職を真剣に考えている
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今の職場を投げ出さず、筋を通そうとしている
こうした人ほど、日中の電話には出られません。
つまり、
日中に電話に出ない人を落とす会社ほど、優秀層を自ら切っている
という構図が生まれているのです。
第3章|応募者は「試されている」と感じた瞬間に離れていく
応募者は、企業の対応を非常によく見ています。
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どの時間帯に電話が来るか
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留守電やメールの文面はどうか
-
自分の状況を想像してくれているか
もし、日中に何度も着信があり、
その後にフォローもなく評価を下げられたとしたら、
応募者はこう感じます。
「この会社は、自分の事情を考えてくれない」
「ここで働いたら、同じ扱いを受けそうだ」
採用対応は、
そのまま“働いた後の姿”として受け取られるのです。
第4章|在職中応募者に配慮できる会社は、ここが違う
在職中応募者への配慮ができている会社には、共通点があります。
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電話は昼休みや夕方以降にもかけ直す
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出なかったこと自体を評価に使わない
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メールで状況説明と代替連絡手段を提示する
例えば、
「お仕事中かと思い、改めてご連絡しました」
「ご都合の良い時間帯があればお知らせください」
こうした一言があるだけで、
応募者の受け取り方は大きく変わります。
これは特別なテクニックではありません。
相手の立場に立つ、ただそれだけの話です。
第5章|電話時間帯への配慮は“甘さ”ではありません
ここで誤解してはいけないのは、
配慮=甘い対応、ではないという点です。
在職中応募者への配慮とは、
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応募者の生活実態を理解すること
-
正確な評価をするための前提条件
です。
電話に出られないという事実だけで判断するのは、
情報が不足した状態で結論を出しているのと同じです。
それは採用の精度を上げるどころか、
判断を誤らせる要因になります。
第6章|電話がつながらない場合の「正しい考え方」
在職中応募者対応で重要なのは、
「出ないこと」ではなく「その後どうするか」です。
基本的な考え方はシンプルです。
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応募当日に2回程度
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翌日に1回
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それでも出なければ、メールでフォロー
この流れをルール化するだけで、
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感情的な判断
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担当者ごとのバラつき
を防ぐことができます。
評価は、
話ができてから行う。
これが在職中応募者対応の鉄則です。
第7章|在職中応募者への配慮は、定着率にもつながる
在職中応募者に配慮できる会社は、
採用後も同じ姿勢を持っています。
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一方的に押し付けない
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事情を聞く
-
話し合いを重視する
こうした文化は、
結果として定着率の向上につながります。
採用対応は、
単なる入口業務ではありません。
組織の価値観が最初に試される場面です。
おわりに|その人は「やる気がない」のではありません
日中に電話に出ない。
それは、やる気がない証拠ではありません。
むしろ、
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今の仕事に責任を持っている
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転職を軽く考えていない
というサインであることも多いのです。
在職中応募者をどう扱うか。
そこに、企業の採用力と人を見る姿勢がはっきりと表れます。
取り逃しているのは、人材ではありません。
判断の前提そのものかもしれないのです。