人口減少を前提にしない採用は、必ず失敗します ──2030年を生き残る企業の人材戦略
杉山 晃浩
はじめに|「人が足りない」は一時的な問題ではありません
「最近、求人を出しても反応が悪い」
「以前よりも採用に時間がかかるようになった」
こうした声を、あちこちで耳にします。
しかし、ここで一つはっきりさせておく必要があります。
これは景気の問題でも、募集方法の問題でもありません。
日本は、すでに
“人口減少を前提とした社会”に入っているからです。
そしてこの現実を前提にしていない採用は、
遅かれ早かれ、必ず行き詰まります。
第1章|人口減少は「これから起きる」のではなく、もう起きている
2030年問題という言葉がありますが、
多くの経営者は、これを「未来の話」だと受け止めがちです。
しかし実際には、
-
生産年齢人口(15〜64歳)はすでに減少中
-
若年層は年々少なくなっている
-
地方ほどその影響は深刻
つまり、
人材の母数は、すでに減り続けているのです。
この事実を直視せず、
-
昔と同じ求人
-
昔と同じ採用フロー
-
昔と同じ感覚
で採用を続ければ、結果が悪くなるのは当然です。
第2章|「採用を頑張れば何とかなる」という発想の限界
人口減少社会において、
多くの企業が陥っている思考があります。
それは、
「もっと求人を出せばいい」
「条件を少し上げればいい」
「採用担当が頑張ればいい」
という発想です。
しかし、これは努力の方向がズレています。
人口が減っているということは、
奪い合いの市場になっているということです。
この状況で
「採用だけを強化する」
という戦略は、体力勝負になります。
結果的に、
-
採用コストが上がる
-
条件競争に巻き込まれる
-
採ってもすぐ辞める
という悪循環に入ります。
第3章|2030年に残る会社は「採用」より「定着」を重視している
人口減少時代において、
最も重要な視点はこれです。
人を増やすより、減らさない。
これは精神論ではありません。
戦略です。
-
1人採るより、1人辞めさせない
-
新人を探すより、今いる人を活かす
この発想に切り替えられた企業ほど、
2030年に向けて安定した経営ができます。
採用と定着は、
別物ではありません。
採用は、定着を前提に設計されるべきものです。
第4章|人口減少時代の採用は「入口」から変える必要がある
定着を重視する企業は、
採用の入口から考え方が違います。
-
面接の前に仕事を見せる
-
良い面だけでなく大変さも伝える
-
合わない人を無理に採らない
一見すると、
「非効率」に見えるかもしれません。
しかし、これは
後工程の無駄をなくす合理的な設計です。
人口減少時代において、
ミスマッチ採用は致命傷になります。
第5章|「人が辞める理由」は、採用時点でほぼ決まっている
早期離職の原因を
「若者の忍耐力不足」
「最近の価値観の変化」
で片づけてしまう会社があります。
しかし、現場で見てきた限り、
多くの場合、原因は別にあります。
-
仕事内容の認識違い
-
期待と現実のズレ
-
聞いていなかったルール
-
想像していなかった人間関係
これらはすべて、
採用時の情報不足から生まれています。
人口減少時代では、
このズレを許容する余裕はありません。
第6章|2030年を見据えた企業がやっている3つのこと
人口減少を前提に、
すでに動いている企業には共通点があります。
① 採用を「経営課題」として扱っている
現場任せにしない。
経営者が関与する。
② 採用と定着を一体で設計している
入社後の育成・評価・役割まで見ている。
③ 「辞める前提」で人を見ていない
どうすれば続けられるかを考えている。
これらは特別なことではありません。
前提を変えているだけです。
第7章|人口減少社会では「良い会社」しか残らない
ここでいう「良い会社」とは、
待遇が良い会社ではありません。
-
説明が丁寧
-
仕事が見える
-
期待値が揃っている
-
人を雑に扱わない
こうした基本を守っている会社です。
人口が減るということは、
選ばれる側になるということです。
採用定着士の立場から見ると、
これは非常にシンプルな話です。
第8章|採用定着士が果たす役割とは何か
人口減少社会において、
採用定着士の役割は明確です。
-
採る前から定着を考える
-
感覚ではなく構造で見る
-
企業と人のズレを小さくする
採用定着士は、
「人を集める専門家」ではありません。
人が残る仕組みをつくる専門家です。
おわりに|2030年を生き残る企業は、もう動いています
人口減少は、
努力では止められません。
しかし、
備えることはできます。
-
採用の前提を変える
-
定着を戦略に据える
-
人を“資源”ではなく“関係”として見る
これができた企業だけが、
2030年を越えて生き残ります。
人口減少を前提にしない採用は、
必ず失敗します。
逆に言えば、
前提を変えた瞬間から、未来は変えられるのです。