「昨日も同じ説明をしました」 保育園で繰り返される保護者トラブルと可視化の欠如
杉山 晃浩
「それ、昨日も説明しましたよね」と言えなかった朝
登園時間の慌ただしい時間帯。
保育士のBさんは、同じ保護者から、また同じ質問を受けていました。
「このルール、納得できないんです」
「前にも言いましたよね?」
内心では、
「昨日も説明しました」
そう言いたかったはずです。
けれど、子どもたちが見ている前で波風を立てるわけにもいかず、
Bさんは笑顔で、もう一度同じ説明をしました。
この光景は、決して珍しいものではありません。
多くの保育園で、同じ説明・同じ不満・同じトラブルが、
形を変えながら繰り返されています。
保育園で起きている“繰り返される保護者トラブル”
保育園の保護者対応は、非常に繊細です。
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行事の運営方法
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服装や持ち物のルール
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保育方針や安全配慮
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子ども同士のトラブル
こうしたテーマは、
一度説明して終わるものではありません。
問題なのは、
同じ内容が、毎回「初めての相談」として扱われてしまうことです。
担任には担任の説明があり、
主任には主任の説明があり、
園長には園長の説明がある。
結果として、
「誰に聞くかで答えが違う」
という印象を保護者に与えてしまいます。
現場が疲弊する理由は「対応」ではなく「共有不足」
現場では、こんなことが起きています。
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担任が一人で抱えた対応が、誰にも共有されない
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口頭で伝えたつもりが、次の日には忘れられている
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「あの件、どうなった?」が分からない
つまり、
トラブルが“個人の対応履歴”で止まっているのです。
その結果、
毎回、最初から説明し直すことになります。
ベテラン保育士ほど、
「また同じ話になるから」と黙って対応し、
若手保育士ほど、
「どう答えたらいいか分からない」と萎縮します。
可視化とは何か
― 記録を増やすことではない
ここで重要になるのが「可視化」です。
可視化というと、
「書類を増やす」
「報告書を作る」
というイメージを持たれがちです。
しかし本質は違います。
可視化とは、
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何が起きたのか
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どう判断したのか
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次はどう対応するのか
を、誰が見ても分かる形で共有することです。
感情的なやり取りを、
「事実」と「判断」に分けて整理する。
これが、可視化の本当の意味です。
【事例】
「説明はしたはず」が通用しなかった保育園
ある保育園では、
行事の参加方法を巡って、同じ保護者から何度も不満が出ていました。
最初は担任が対応。
次は主任が対応。
最後は園長が対応。
それぞれが誠実に説明していましたが、
過去のやり取りが記録・共有されていなかったため、
毎回「初対応」になっていました。
保護者からすれば、
「前と違うことを言われている」
と感じても不思議ではありません。
結果、
不満は解消されず、
園への不信感だけが積み重なっていきました。
可視化されないトラブルが招く3つの経営リスク
可視化不足は、現場の問題にとどまりません。
確実に、経営リスクへとつながります。
① 保育士の精神的疲弊と離職増加
「また同じ対応か」という疲労は、
少しずつ心を削ります。
② 園としての信頼性低下
説明が一貫しない園は、
「しっかりしていない」という評価を受けます。
③ 小さな不満の長期化・深刻化
整理されない不満は、
より強い言葉、より過激な要求へと変わっていきます。
「園内で共有しているつもり」の落とし穴
多くの園長はこう言います。
「ちゃんと共有しています」
しかし実際には、
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共有の基準が曖昧
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フォーマットが統一されていない
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忙しさを理由に後回し
という状態が少なくありません。
結果として、
“共有しているつもり”で、実は見えていない
という状況が生まれます。
可視化は園長の負担を減らす仕組み
可視化が進むと、
園長がすべてを覚えておく必要がなくなります。
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前回の経緯がすぐ分かる
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判断の軸がぶれない
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職員が一人で抱え込まない
これは、
園長自身を守る仕組みでもあります。
第三者による可視化支援という選択
とはいえ、
日々の保育業務の中で、
可視化の仕組みを一から作るのは簡単ではありません。
そこで有効なのが、第三者の視点です。
外部が関わることで、
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感情を排した整理ができる
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園の立場を守る記録が残せる
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経営判断に使える情報になる
内部だけでは難しい可視化が、
現実的に機能し始めます。
杉山事務所が担える役割
― 保育士と園を同時に守るために
杉山事務所では、
保護者トラブルを単なる苦情として扱うのではなく、
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経営視点で整理
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再発防止につながる形で可視化
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園内にフィードバック
する支援を行っています。
「誰が悪いか」ではなく、
「どう仕組みで守るか」を考える。
それが、第三者支援の価値です。
まとめ
可視化できる園ほど、トラブルは長引かない
同じ説明が繰り返される園は、
対応力が低いわけではありません。
問題が見えていないだけです。
可視化は、
守りのための作業ではなく、
園を強くするための経営判断です。
園内だけで抱え込まず、
外部の力を使うことは、
これからの保育園経営において、
極めて現実的な選択肢だと言えるでしょう。