社長のための公正証書遺言入門 ― 行政書士が設計から関与する理由 ―

杉山 晃浩

第1章|「うちは財産が少ない」は、社長ほど危ない

経営者の方と相続の話をすると、よくこんな言葉を聞きます。

「うちは自宅くらいしかないから、大丈夫でしょう」

実はこの考え方こそが、相続トラブルの入口になることをご存じでしょうか。

相続で揉めている家庭の多くは、いわゆる「資産家」ではありません。
むしろ、持ち家と預貯金が少しある、ごく普通の家庭が一番揉めています。

理由は単純です。
分けにくい財産しかないからです。

  • 自宅は誰が住むのか

  • 売るのか、残すのか

  • 代償金はどうするのか

そして、社長が亡くなった場合、この問題は「家族の問題」だけでは終わりません。
会社の株式、連帯保証、金融機関との関係など、経営に直結する問題へと一気に広がります。

相続は、感情と現実がぶつかる場面です。
だからこそ、元気なうちに「意思」を形にしておくことが、社長としての重要な仕事になります。


第2章|公正証書遺言とは何か?なぜ社長に向いているのか

遺言にはいくつかの種類がありますが、経営者にとって最も現実的で、安全性が高いのが公正証書遺言です。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言のことです。
法律の専門家が関与するため、形式不備による無効のリスクが極めて低く、原本も公証役場で保管されます。

社長にとって重要なのは、次の点です。

  • 遺言が「確実に実行される」こと

  • 家族に判断や手続きを押し付けないこと

  • 相続開始後、会社や家庭が混乱しないこと

自筆で書く遺言は手軽ですが、
「書いたのに使えない」「解釈を巡って揉める」というケースが後を絶ちません。

公正証書遺言は、
「争わないための設計」ができる遺言だと言えます。


第3章|「公証役場に行けば完成」ではない現実

ここで、よくある誤解があります。

「公証役場に行けば、公正証書遺言は作れるんですよね?」

答えは、半分正解で、半分不正解です。

公証人は、法律に沿って文書を作成する専門家ですが、
「何をどう書くべきか」「家族関係をどう整理するか」まで踏み込んで設計する立場ではありません。

その結果、次のような問題が起こります。

  • 財産の書き漏れ

  • デジタル資産(ネット銀行・証券・暗号資産)が完全に抜けている

  • 表現が形式的で、社長の想いが伝わらない

これでは、「遺言はあるのに、家族が動けない」という事態になりかねません。

公正証書遺言で本当に大切なのは、
公証役場に行く前の準備と設計なのです。


第4章|行政書士が「設計」から関与する意味

行政書士法人杉山総合法務では、
公正証書遺言を「書類作成」ではなく、設計業務と考えています。

具体的には、次のような工程を行政書士が担います。

  • 相続人調査(戸籍の収集・確認)

  • 財産調査(不動産・預貯金・その他資産)

  • 相続関係図の作成

  • 遺言文案の作成と調整

これにより、
「誰に、何を、どう遺すのか」が明確になり、
家族が迷わず動ける遺言になります。

単に法的に有効な遺言ではなく、
“機能する遺言”を作ることが、行政書士が関与する最大の価値です。


第5章|公正証書遺言が完成するまでの一般的な流れ

杉山総合法務での一般的な流れを、簡単にご紹介します。

ステップ1|初回無料相談

家族構成や財産状況、不安に思っていることを整理します。
「何を聞けばいいか分からない」状態で問題ありません。

ステップ2|相続人・財産の整理

戸籍を収集し、法定相続人を確定します。
同時に、不動産や預貯金などの財産を洗い出します。

ステップ3|遺言内容の設計・文案作成

揉めにくい分け方、伝わりやすい表現を検討し、文案を作成します。
必要に応じて、公証人との事前調整も行います。

ステップ4|公証役場での作成

証人立会いのもと、公正証書遺言を作成します。
原本は公証役場で保管され、紛失の心配はありません。


第6章|今の社長に欠かせない「デジタル遺産」という視点

近年、特に重要性が高まっているのがデジタル遺産です。

  • ネット銀行

  • ネット証券

  • 新NISA

  • 暗号資産

  • スマートフォン内の情報

これらは「通帳」がありません。
IDやパスワードが分からなければ、存在しない資産と同じです。

杉山総合法務では、
ID・パスワードを封印リスト化し、金庫で保管する対応も行っています。

公正証書遺言とデジタル遺産対策は、
セットで考えるべき時代になっています。


第7章|「作って終わり」にしないために|遺言執行まで見据える

相続が発生した後、家族が本当に困るのは手続きです。

  • 銀行口座の解約

  • 名義変更

  • 年金の手続き

杉山総合法務では、遺言執行まで対応できる体制を整えています。
費用も原則として相続財産からの後払いとすることで、
残されたご家族の負担を減らします。


第8章|まとめ|公正証書遺言は「社長の最後の経営判断」

遺言は、亡くなった後のためのものではありません。
生きている今、社長が下す経営判断の一つです。

  • 家族を守る

  • 会社を混乱させない

  • 想いを形にする

そのための最も確実な方法が、
行政書士が設計から関与する公正証書遺言です。


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