なぜ誰も教えてくれないのか 2026年企業型DC掛金上限改正と“売りっぱなし”の危険性

杉山 晃浩

第1章|企業型DCは「入れたら終わり」の制度ではない

企業型DC(確定拠出年金)を導入した経営者の多くが、
どこかでこう思っています。

「制度はもう整えた」
「あとは社員が勝手に積み立てていくものだ」

確かに、導入時には丁寧な説明があります。
制度概要、メリット、掛金設定、手続き。
導入フェーズだけを見れば、企業型DCは“完結した制度”に見えます。

しかし、社労士の立場から見ると、
企業型DCは“入れてからが本番”の制度です。

なぜなら、
企業型DCは法律と制度改正の影響を強く受ける仕組みだからです。


第2章|2026年に何が起きるのか ― 掛金上限改正の全体像

2026年は、企業型DCにとって非常に特殊な年です。

理由は、
掛金上限の計算ルールが、年の途中で2回変わるからです。

具体的には、

  • 2026年4月
     → 掛金上限が一時的に縮小

  • 2026年12月
     → 法改正により掛金上限が拡大・回復

つまり2026年は、

「春に枠が減り、冬に枠が増える」

という、極めて分かりにくい動きをします。

特に、
はぐくみ基金など他の企業年金制度と併用している企業では、
この影響を確実に受けます


第3章|なぜ、この重要な改正が経営者に伝わらないのか

ここで、素朴な疑問が出てきます。

「これだけ重要な改正なら、
誰かが教えてくれるのでは?」

残念ながら、そうとは限りません。

理由は構造的です。

多くの企業型DC販売業者の役割は、
「導入支援」までで止まっています。

  • 法改正の継続フォロー

  • 掛金上限の再計算

  • 給与システムへの反映確認

これらは、契約上の業務範囲外になっていることが多いのです。

結果として、

  • 経営者は知らない

  • 現場も気づかない

  • 誰も責任を持って教えない

という状態が生まれます。


第4章|知らないまま迎えると、実務で何が起きるのか

2026年4月。
もしこの改正を知らずに迎えた場合、何が起きるでしょうか。

例えば、

  • 掛金が上限を超えたまま拠出される

  • 給与計算上の控除額が誤ったまま処理される

  • 結果として、制度違反のリスクが生じる

ここで重要なのは、
「知らなかった」では済まされないという点です。

企業型DCは、
会社が制度主体となる仕組みです。

最終的な責任は、
経営者に帰属します。


第5章|12月の“枠拡大”はチャンスだが、放置すると活かせない

一方で、2026年12月には
掛金上限が回復・拡大します。

これは、本来であれば
社員にとって大きなチャンスです。

  • 4月に一度減額した人への再案内

  • もっと積み立てたい社員への説明

  • 福利厚生としての再評価

しかし、ここでも問題が起きます。

案内がなければ、何も起きないのです。

制度は自動では動きません。
設定変更も、説明も、意思確認も必要です。

フォローがない会社では、
このチャンスは静かに消えていきます。


第6章|定期フォローがない企業型DCが一番危ない理由

企業型DCにおいて、
最も危険なのは「制度そのもの」ではありません。

定期フォローがないことです。

  • 法改正に気づかない

  • 制度違反のリスクが高まる

  • 社員からの信頼が下がる

こうした問題は、
一気に表面化するのではなく、
静かに積み重なっていきます

だからこそ、
気づいたときには手遅れになりがちです。


第7章|社長がすべてを追う必要はない

― ただし「誰が見るか」は決めるべき

ここで、はっきりさせておきたいことがあります。

社長が、
年金制度の改正をすべて追いかける必要はありません。

それは現実的ではありません。

しかし、

  • 誰が制度を見るのか

  • 誰が改正をチェックするのか

  • 誰が社長に伝えるのか

この体制だけは、決めておく必要があります。

「丸投げ」は構いません。
「放置」だけが危険なのです。


第8章|まとめ|2026年改正が突きつける本当の問題

2026年の掛金上限改正は、
単なる数字の話ではありません。

この改正が突きつけているのは、

その企業に、
制度を“見続ける体制”があるのか

という問いです。

企業型DCは、
導入した瞬間よりも、
付き合い方の方が重要な制度です。

2026年は、
その差がはっきりと表に出る年になります。

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