2026年5月分 人事労務クイズ~ハラスメント相談対応とメンタルヘルス~

問題  ∼ ハラスメント相談対応とメンタルヘルス ∼

従業員からパワーハラスメントの相談を受けた際、企業として最初に行うべき対応はどれでしょうか

答え

【A】 すぐに加害者を処分する

【B】 客観的な事実確認を行う

【C】 被害者を退職させる

【B】 客観的な事実確認を行う

【相談対応の基本原則】
パワハラの申し立てがあった場合、企業には迅速かつ適切な対応が「パワハラ防止法」で義務付けられています。
事実関係が不明な段階での即時処分や、被害者の切り捨ては不当な対応となり、深刻な法的リスクを招きます。
まずは中立的な立場で「何が起きたのか」を正確に把握することが、すべての実務の出発点となります。

1. 「客観的な事実確認」の具体的な進め方
事実確認は、感情的なバイアスを排除し、以下の順序で慎重に進める必要があります。
・相談者(被害者)へのヒアリング: 「いつ、どこで、誰に、何をされたか」を時系列で聞き取ります。あわせて、本人が望む解決の着地点(謝罪、引き離し、処分など)も確認します。
・行為者(加害者)へのヒアリング: 相談者のプライバシーに配慮しつつ、事実関係を確認します。意見が食い違う場合は、目撃者などの第三者への聞き取りも検討します。
・証拠の集約: メールの履歴、録音データ、業務日報、周囲の証言など、客観的な証拠を積み上げます。

2. 加害者を保護・放置することの5つの経営リスク
「有能だから」「指導熱心だから」と加害者を擁護し、問題を過小評価することは、組織の根幹を揺るがす「時限爆弾」を抱える行為です。
・法的賠償リスク: 職場環境の是正を怠った「安全配慮義務違反」として、会社が損害賠償(慰謝料・治療費等)を請求される直接的な根拠となります。
・人材流出と採用難: 「不誠実な会社」というレッテルを貼られ、優秀な社員から離職していきます。また、SNS等の悪評により、採用コストが跳ね上がるリスクがあります。
・組織全体のモラルダウン: 「声を上げても無駄」「やったもん勝ち」という空気が蔓延し、全従業員のエンゲージメントと生産性が著しく低下します。
・メンタル不調の深刻化: 環境が変わらない絶望感から被害者の不調が悪化し、長期休職や重大な労災事故、自殺リスクに直結する恐れがあります。
・外部通報・統制不能のリスク: 社内窓口が信頼を失うと、被害者は労基署や弁護士へ訴えます。結果として、会社が事態をコントロールできなくなります。

3. 相談対応における「3つの鉄則」
・中立性の保持: 予断を持たず、双方の味方をしない「中立的なレフェリー」としての立ち位置を貫きます。
・プライバシーの徹底保護: 相談内容の漏洩は二次被害を招き、会社の信頼を失墜させます。
・不利益取扱いの禁止: 相談したことを理由とする不利益な扱いは、それ自体が法律違反(処罰対象)となります。

4. メンタルヘルスへの配慮と措置
・緊急の安全確保: 被害者の体調が著しく悪い場合は、事実確認と並行して、速やかに加害者との接触を断つ(配置転換、在宅勤務の活用など)緊急措置を検討します。
・産業医等との連携: 早期に専門家による面談を設定し、医学的見地から就業継続の可否や配慮事項について助言を仰ぎます。

まとめ:公正な対応が「会社」を守る
「有能な社員」であっても、ルール違反を犯した以上、公正な処分を下す必要があります。
それが組織の規律を保ち、結果として全従業員の健康と会社の利益を守る「最強のリスクマネジメント」に繋がります。