カスタマーハラスメントに対してどのような対応をとっていますか?
杉山 晃浩
1. 事件・事故の概要
近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)は深刻な社会問題として注目を集めています。多くの事件や事故が報告されており、従業員が顧客からの理不尽な要求や暴言、さらには暴力にまでさらされるケースが増加しています。例えば、2022年には某飲食チェーン店で、顧客が店員に対して土下座を強要し、その様子をSNSで拡散するという事件が発生しました。このような行為は、従業員の精神的・身体的負担を増大させ、労働環境を著しく悪化させる要因となっています。
2. 行政の動き
このような背景を受けて、厚生労働省はカスハラ対策を強化するための法整備を進めています。2022年には「職場のハラスメントに関する実態調査」が行われ、カスハラの現状とその影響が詳細に報告されました。さらに、厚労省はカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを策定し、企業に対して具体的な対応策を提示しています。2025年の通常国会には、労働施策総合推進法の改正案が提出される予定であり、企業に対して従業員保護を義務付ける方向で調整が進められています。
3. 企業の対応
多くの企業がカスハラ対策に積極的に取り組んでいます。例えば、JR東日本は2023年に「カスハラには対応しない」との方針を公表し、顧客対応の際に従業員を保護する姿勢を示しました。また、タクシー大手の日本交通は、カスハラ客に対して乗車拒否や慰謝料の請求を行う可能性を示しています。さらに、多くの企業が監視カメラを設置し、ハラスメント行為の証拠を保全する取り組みを行っています。
4. 具体的な対策
企業が取り組むべき具体的な対策として、以下のようなものが挙げられます。
- 対応マニュアルの策定:
- カスハラ行為に対する具体的な対応方法を定め、従業員に周知徹底します。
- 従業員の相談体制の整備:
- 従業員がカスハラ被害を受けた際に相談できる窓口を設置し、迅速に対応できる体制を整えます。
- トレーニングの実施:
- 従業員に対して、カスハラ行為に対処するためのトレーニングを定期的に実施します。
- 監視カメラの設置:
- 監視カメラを設置して、ハラスメント行為を抑止し、発生した場合の証拠を保全します。
- 法的措置の検討:
- カスハラ行為が悪質な場合は、法的措置を検討し、顧客に対して適切な対応を取ります。
5. 社会全体での意識改革
カスハラ対策は企業だけでなく、社会全体で取り組むべき課題です。行政や関係省庁は、カスハラの防止に向けた啓発活動を進めています。消費者庁や厚生労働省、経済産業省などが連携し、カスハラ防止に向けたポスターやガイドラインを作成し、一般に広く周知しています。また、東京都などの地方自治体も独自の条例を制定し、カスハラ対策を強化しています。
結論
カスタマーハラスメントは、現代社会において深刻な問題となっています。行政と企業が連携して適切な対策を講じることが求められます。具体的なマニュアルの策定や相談体制の整備、トレーニングの実施、監視カメラの設置、法的措置の検討など、多角的なアプローチが必要です。さらに、社会全体での意識改革が進むことで、従業員が安心して働ける環境が整い、企業の持続可能な発展が期待されます。
厚生労働省が作成したカスタマーハラスメント対策企業マニュアルがわかり易い資料となりますので、一度読んでみましょう。そして、自社向けにアレンジすることをおすすめします。