介護職の人事評価項目をわかり易くしてみる

杉山 晃浩

昨日は、看護職の評価項目を、KPIの活用により可視化できるようにしました。可視化により、評価基準が崩れなくなるということをご理解いただけたと思います。

本日は、介護職の人事評価項目を考えてみたいと思います。
昨日介護職の評価項目を以下のように設定してみました。

介護職の人事評価項目の例

  1. 利用者ケアの質:利用者への日常ケアの質
  2. 介護技術の習熟度:基本的な介護技術の習得度
  3. 利用者とのコミュニケーション:利用者との信頼関係の構築
  4. 安全管理:転倒や事故防止への取り組み
  5. 業務の効率化:時間管理や業務遂行の効率
  6. 家族との連携:利用者家族との連絡調整や対応
  7. 介護記録の正確性:介護記録の正確な作成と管理
  8. チームワーク:他のスタッフとの協力や情報共有
  9. 問題解決能力:利用者や業務上の問題への対応力
  10. 自己研鑽:介護技術や知識の向上への取り組み

ちなみに、人事評価項目は多過ぎると効果を発揮しなくなります。
以下に、評価項目が多いことで起きる不具合をまとめています。

1. 評価の複雑化

評価項目が多すぎると、評価プロセスが複雑になり、評価者にとって負担が増します。各項目を詳細に評価する必要があるため、時間と労力がかかり、評価の精度が低下する可能性があります。結果として、評価の一貫性が損なわれることもあります。

2. 評価者の負担増加

評価項目が多いと、評価者が全ての項目を適切に評価することが難しくなります。評価者が多忙な業務の中で評価を行う場合、全ての項目を十分に考慮する時間が確保できず、表面的な評価にとどまることがあります。これにより、公平性や信頼性が損なわれるリスクが生じます。

3. 評価の主観性の増加

多くの評価項目を扱う際、評価者が各項目に対してどの程度の重要性を置くかが曖昧になることがあります。このため、評価者の主観が入り込みやすくなり、評価が一貫しない結果を招く可能性があります。また、評価者の好き嫌いが評価に影響を与えるリスクも高まります。

4. 被評価者の混乱

評価項目が多いと、被評価者にとって何が重要で、どの項目に焦点を当てて努力すべきかが不明瞭になります。これにより、職員が自分の業績をどう改善すればよいか分からず、モチベーションが低下することがあります。評価の目的が曖昧になることで、評価制度自体への信頼も失われる可能性があります。

5. 評価の一貫性の低下

多くの項目を評価する際、評価者ごとの評価基準が異なると、同じ業績でも評価結果が異なることがあります。これにより、評価の一貫性が低下し、職員間で不公平感が生じることがあります。不公平な評価は、職場の士気やチームワークに悪影響を及ぼします。

6. フィードバックの質の低下

評価項目が多すぎると、フィードバックの内容が分散しやすくなります。評価者が各項目に対して十分なフィードバックを提供できない場合、被評価者は具体的な改善点や強みを把握しづらくなります。これにより、評価をもとにした成長やスキル向上が難しくなります。

7. 管理コストの増加

多くの評価項目を設定すると、評価結果の集計や分析に必要な管理コストが増加します。これには、時間的コストやシステム上のコストが含まれます。特に大規模な組織では、評価プロセス全体の効率が低下し、運用が困難になることがあります。

いかがですか。評価項目の数を増やすことは、一見すると評価の精度や包括性を高めるように思えますが、実際には評価の複雑化、評価者と被評価者の混乱、評価の主観性の増加、一貫性の低下、フィードバックの質の低下、管理コストの増加などの不具合を引き起こす可能性があります。評価制度を効果的に運用するためには、適切な数の評価項目を設定し、評価プロセスを簡素で明確に保つことが重要です。

それでは、評価プロセスをKPIで見える化していこうというのが本日の趣旨です。
介護の職場には、施設長、ケアマネージャー、介護福祉士、PT、OT、ST、看護師、管理者、生活相談員、運転手、無資格者など、さまざまな職務や身分の方が混在しています。これまでに相談を受けてきた中には、これらの人間関係で、パワハラが発生したり、スタッフが離職したりと、チームワークが上手くいっていない職場が多いように感じます。まぁ、『3人集まれば派閥ができる』なんて言葉もありますから、世の中の常なんでしょう。だから、8番目の項目にある「チームワーク:他のスタッフとの協力や情報共有」を深堀してみましょう。

チームワークに関する具体的なKPIと行動基準

  1. 情報共有会議の参加率

    • KPI: 月間情報共有会議の参加率(例えば、90%以上)
    • 基準: 月に開催される情報共有会議への出席率を90%以上に保つ。会議での発言や意見交換も評価対象とする。
  2. 引き継ぎノートの更新頻度

    • KPI: 引き継ぎノートの更新回数(例えば、週に3回以上)
    • 基準: 引き継ぎノートを週に3回以上更新し、最新のケア情報や注意点を他のスタッフと共有する。
  3. チームミーティングの開催回数

    • KPI: 定期的なチームミーティングの開催回数(例えば、月に2回)
    • 基準: 月に2回以上、チームミーティングを開催し、業務の進捗や問題点について話し合う。
  4. 他のスタッフからのフィードバック

    • KPI: ポジティブなフィードバックの件数(例えば、月に5件以上)
    • 基準: 他のスタッフからのポジティブなフィードバックを月に5件以上得る。フィードバックは匿名で集め、定期的に評価する。
  5. 共同作業の実施頻度

    • KPI: 他のスタッフとの共同作業の回数(例えば、週に2回以上)
    • 基準: 週に2回以上、他のスタッフと共同でケア業務を行い、協力して問題を解決する。
  6. 問題解決の迅速さ

    • KPI: チームで対応した問題解決の平均時間(例えば、平均2時間以内)
    • 基準: チームで発生した問題を平均2時間以内に解決し、迅速な対応ができるようにする。
  7. 情報共有ツールの利用

    • KPI: 情報共有ツールの利用率(例えば、100%)
    • 基準: 電子カルテや共有ファイルなどの情報共有ツールを100%活用し、全員が最新情報にアクセスできるようにする。
  8. 協力プロジェクトの達成率

    • KPI: チームで取り組んだプロジェクトの達成率(例えば、80%以上)
    • 基準: チームで取り組むプロジェクトの80%以上を期日内に達成する。
  9. スタッフ間のコミュニケーション満足度

    • KPI: スタッフ間のコミュニケーションに対する満足度スコア(例えば、満足度80%以上)
    • 基準: 定期的に実施するアンケートで、スタッフ間のコミュニケーションに対する満足度が80%以上であること。
  10. 緊急対応の協力度

    • KPI: 緊急対応時の協力の評価スコア(例えば、評価4以上/5段階)
    • 基準: 緊急時におけるチームの協力度を5段階評価で4以上とする。緊急対応の後にフィードバックを収集し、評価する。

評価項目1個に対して10個のKPIがあります。つまり、評価項目が10個ならば、100個のKPIがあるということです。でも、これって現実的ではありませんね。評価項目が多いと不具合をきたすことは既に述べた通りです。それでは、これらの10個のKPIをどのように使うのかお伝えします。
チームワークに関する10個のKPIの中から、スタッフごとに最も重要だと思われる項目を抜いて評価するようにします。したがって、ひとりひとりのKPIは異なっても構いません。
それではだれが決めるのかといえば、職場の長ということになります。その部門、部署を預かっている職場の長は、野球で言えば監督です。監督は、エースや4番打者をどう起用するのか、若手をどう育成し、戦力化するのかなどの裁量を一手に持っています。つまり職場の長も、スタッフごとにどのような起用をするのかを個別に判断しても良いということです。

いかがでしたか?
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