最近、ちょっとした気遣いがないことで書類送検される事案が増えています!

杉山 晃浩

最近、ちょっとした気遣いが欠けていたことで、労災事故が発生し、書類送検される事例が増加しています。
次に、いくつか労働新聞の記事タイトルを表示します。

防塵マスク使用させず事前送検 笠岡労基署
「塩」を備えず書類送検 草刈り中の熱中症労災で 大町労基署
車庫の石綿2年放置 タクシー会社を書類送検 泉大津労基署
風雪注意報で解体止めず 建設業者を書類送検 郡山労基署
墜落対策を講じず書類送検 “別会社”の労働者が被災の労災で 茨木労基署

いかがでしょうか?
ちょっとした気遣いがあれば、書類送検を防げたのではないでしょうか?
例えば、防塵マスクの不使用については、安全性性教育を実施し、作業前の確認作業を怠らないようにすることで十分防げることです。「塩」の準備については、普通に暮らしている状態ではなかなか気が付かないかもしれません。でも、ちょっとした気遣いがあれば、塩飴の存在意義を思い出したかも知れません。ゴルフをされる方なら、南国の夏のゴルフ場には塩か常備してあることを思い出して、現場に塩を準備させるかもしれません。ちょっとした気遣いですね。

このような「気遣い」を見える化したものがリスクアセスメントだとお考え下さい。
今回は『労災事故防止のためのリスクアセスメントについて中小企業の経営者向けガイド』なるものを作成してみました。

『労災事故防止のためのリスクアセスメントについて中小企業の経営者向けガイド』

労災事故防止は、従業員の安全を守るだけでなく、企業の経営にも重要な影響を与えます。厚生労働省が推奨するリスクアセスメントは、労災事故を未然に防ぐための有効な手法です。ここでは、中小企業の経営者がリスクアセスメントを理解し、実施するためのガイドをわかりやすく説明します。

1.リスクアセスメントとは?

リスクアセスメントとは、職場における危険性や有害性を特定し、そのリスクを評価・分析し、リスクを低減するための措置を講じる一連のプロセスです。以下のステップに基づいて行われます​。

危険性または有害性の特定:職場内の作業や設備に潜む危険性を洗い出します。例えば、高所作業、化学物質の取り扱い、重機の操作などが含まれます。
リスクの見積もり:特定された危険性に対してリスクの度合いを評価します。リスクの評価は、事故の発生頻度や影響の大きさを基に行います。
リスク低減措置の検討:リスクを低減するための対策を検討し、優先順位を設定します。具体的な対策には、作業方法の変更、設備の改善、安全教育の実施などが含まれます。
リスク低減措置の実施と記録:決定した対策を実施し、その結果を記録します。これにより、実施した対策の効果を確認し、必要に応じて改善を行います。

2.リスクアセスメントの重要性

効果的なリスク管理
リスクアセスメントを実施することで、職場の危険性が明確になり、リスクに対する認識が全従業員で共有されます。また、安全対策の優先順位を合理的に決定することができ、残されたリスクについても明確な理由を持って管理できます​ 。
法令遵守
労働安全衛生法は、企業が適切なリスクアセスメントを行うことを求めています。法令遵守は、企業の信頼性を高めるだけでなく、法的トラブルを未然に防ぐためにも重要です。
経営改善
リスクアセスメントを通じて労災事故を防ぐことは、従業員の安心感を高め、労働生産性を向上させます。さらに、事故が減少することで、補償費用や訴訟リスクも低減され、経営の安定にも寄与します。

3.リスクアセスメントの実施方法

1. 危険性または有害性の特定
職場の作業内容や設備を詳細に調査し、どのような危険性が潜んでいるかをリストアップします。
従業員からのヒアリングや現場観察を行い、見落としのないようにします。
2. リスクの見積もり
リスク評価表を用いて、各危険性の発生頻度と影響度を数値化します。
これにより、どのリスクが最も優先的に対処すべきかを明確にします。
3. リスク低減措置の検討
法令に基づく措置を優先的に実施します。
具体的な対策としては、危険な作業の廃止や変更、安全設備の導入、安全教育の強化などがあります。
個人用保護具の使用やマニュアルの整備も有効な対策です​​。
4. リスク低減措置の実施と記録
決定した対策を計画的に実施し、その効果を評価します。
実施結果を記録し、定期的に見直しを行います。これにより、継続的な改善が図れます​​。

リスクアセスメントの導入事例

成功事例
ある中小企業では、リスクアセスメントを導入することで、年間の労災事故が大幅に減少しました。
具体的には、高所作業の際に安全ネットを導入し、作業前に安全教育を徹底することで、転落事故がゼロになりました。
また、従業員全員がリスクアセスメントに参加することで、安全意識が向上し、全体の作業効率も改善されました。

まとめ

リスクアセスメントは、労災事故を未然に防ぎ、職場の安全性を高めるための重要な手法です。中小企業の経営者にとって、リスクアセスメントを適切に実施することは、従業員の安心と企業の持続的な成長に繋がります。
ぜひ、リスクアセスメントを導入し、より安全で働きやすい職場を実現してください。

関連リンク
厚生労働省 リスクアセスメント情報
リスクアセスメント実施支援システム

このガイドを参考に、リスクアセスメントの実施を進めていきましょう。安全で生産的な職場作りの第一歩です。

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