ひとつのITツールにこだわり続けると生産性の低下をまねくリスクが発生します
杉山 晃浩
最近のITツールの進歩は目覚ましいものがあります。だからこそ、色々ありすぎて何が良いのか、どれが自社に合っているのかがわかりにくいですよね。
なかでも、HR系ツールだと、人事労務、経理、ワークフローなどが一元化されているオールインワンのタイプの需要が高いようで、大小様々なIT企業が参入しています。
「みんな大好きオールインワン」は、果たして本当にあなたの会社の業務効率を劇的に向上させてくれるのか?
一般的にオールインワンのシステムでは、「一つのソフトでなんでもできる」が売りなわけです。
一方で、ある分野に強いITツールは、「一つのソフトで一つのことしかできないけれど、API連携で他のシステムと繋がれるので、何でもできる環境があります」ということが売りになります。
正直なところ、オールインワンのシステムでは、得意分野に強弱があり、そのシステムを使い続けることで、手間が増え生産効率が全く上がらないという残念な結果に陥ってしまうことがあります。
シンプルな使い方をするだけなら、オールインワンシステムは十分ニーズを満たしてくれるものもありますが、システムが想定していないイレギュラーや特殊な計算には対応していないケースは多く、手計算や目視確認といった力業で場当たり的に対処している企業も少なくありません。
もしあなたが今そのような状況にあるのならば、オールインワンシステムにこだわる必要はないと考えます。
なぜなら、ITツールの導入に際して「オールインワン」のアプローチを選択する経営者の意思決定は、一見すると合理的に思えます。すべての機能を一つのプラットフォームでカバーできれば、操作性の統一やトレーニングの効率化、さらにはコスト削減にもつながるからです。
しかし、実際にはこのようなオールインワンツールが必ずしも企業のニーズに合致するとは限りません。特に、API連携の欠如や機能的な制限がある場合、先の例のように逆に業務の効率化を妨げる原因にもなり得るのです。
しかし経営者はこのことに気づきにくい。
なぜなら実務をするのは経営者ではないからです。実務担当者が実際どの程度の時間と労力をかけてオールインワンシステムでは容易に実現できないことを知恵と工夫と根性でどうにか実現しているのかを経営者は知りません。
こうした課題に直面した際、実務担当者が経営者や意思決定者を説得するためには、以下のアプローチが有効です。
1. 具体的なケーススタディの提示
オールインワンツールを導入したことで生じた具体的な問題点や、他のシステムを組み合わせた場合の成功事例を示すことで、経営者に対して実際の効果やリスクを理解してもらいます。
2. ROI(投資収益率)の計算
経営者は数字を重視する傾向にあるため、オールインワンツールの導入によるコスト削減と、API連携や他の専門ツールを組み合わせることによる業務効率化・収益向上の可能性を、具体的な数字で示すことが効果的です。
3. 柔軟性と将来性の観点からの説明
ビジネス環境は常に変化しており、今日効果的なツールが明日も同じように機能するとは限りません。オールインワンツールに固執することのリスクと、柔軟かつ拡張可能なシステム構成のメリットを説明します。
4. パイロットプロジェクトの提案
全社規模での大規模な変更にはリスクが伴います。まずは小規模な部署やプロジェクトで、他のシステムの導入をテストすることを提案します。成功例を通じて、そのメリットを実証することができれば、経営層の支持を得やすくなります。
5. ユーザーの声の収集
実際にツールを使用する従業員からのフィードバックを集め、オールインワンツールの限界や他のツールとの連携によるメリットを明確にします。経営者は、自社の従業員の声を無視しにくい傾向にあります。
最終的には、経営者がオールインワンツールの導入に固執する背景には、短期的なコスト削減や運用の簡略化という目的がありますが、長期的な視点で業務の効率化と成長を実現するためには、より柔軟で拡張性の高いIT戦略が必要です。
そのことに気が付かない経営者では、その企業の将来は明るくないのかもしれません。
オフィススギヤマグループでは、業務効率化のためにアウトソーシングを受注しています。
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