第3回:ゼロからできる!中小企業の管理職育成の仕組み

杉山 晃浩

それでも中小企業では管理職育成が進まないのか?

これまで管理職に求められるスキルや中小企業における管理職の課題について詳しく説明した。ここまでの内容を踏まえると、「管理職育成の重要性は理解しているが、実際どうすればいいのかわからない」という経営者や人事担当者も多いのではないか。

中小企業や零細企業では、大企業的な研修プログラムを導入するのが難しい。 人材や資金の制限があり、教育担当者に時間の余裕がない場合がほとんどだ。 さらに、「管理職の育成よりも、日々の業務を捌くことが最優先」という意識が強いため、結果的に管理職の育成が後回しになってしまう。

しかし、適切な仕組みを作らずに管理職を放任し続けると、組織の成長が止まり、経営者がいつまでも現場の細かい課題に追われることになる


1. 管理職の役割を明文化する

「管理職とは何か?」を
企業として管理職を定義し、誰もがその役割を理解できるようにしておきましょう。

1-1. 「管理職の役割は何なの」か?

  • 管理職自身が何をしたらいいのか分からず、個人の業務に集中してしまう
  • 部下が管理職に何を期待すればいいのかわからないため、信頼関係が構築し難い
  • 経営者が管理職にどこまで任すべきか判断できず、結局経営者自身が指示を出し続ける

このような状況では、管理職はただの「肩書き」になってしまい、組織の機能が停止してしまいます。

1-2. 管理職の役割を明文化する方法
管理職の役割を具体的に明文化するために、次のような要素を含有させることを推奨する。

組織の目標を達成するための戦略を考える
部下の育成とサポートを行う
チームの業務効率を向上させる
経営者の意思を現場に伝え、調整役となる
部下の問題やトラブルを解決する

このように具体的な役割を決めることで、「管理職に求められること」が明確になり、本人も組織も迷わず行動できるようになる。


2. 段階的なOJT(実践型研修)を取り入れる

中小企業では、座学研修を行うリソースが不足していることが多い。そこで有効なのがOJT(On-the-Job Training)=実践型の研修だ。

2-1. OJTを導入しないとどうなる?

  • 「管理職に任命されたらすぐに現場でやってみる」状態になり、だれにも相談ができない
  • トライ&エラーを繰り返すだけで、成長には時間がかかる
  • 部下が管理職の未熟さに不満を抱え、離職率が上がる

OJTは「いきなりすべてを任せる」のではなく、段階的に管理職の仕事を経験させることがポイントです。

2-2. OJTを活用した管理職育成の流れ

  1. 小さなチームのリーダーを経験させる

    • いきなり部門全体のマネジメントではなく、2〜3人のチームリーダーから始める
    • 目標設定や進捗管理の練習をする
  2. 他の管理職の仕事を見学させる

    • すでに管理職として活躍している人の仕事を観察し、実際のマネジメントを学ぶ
  3. 管理職候補者に1つのプロジェクトを任せる

    • 例、「新商品の企画運営」「業務改善プロジェクト」など、小規模なプロジェクトのリーダーを経験させる
    • ここで指導役となる先輩管理職がフォローする
  4. 正式に管理職として任命する

    • これまでの経験を経た上で、正式に管理職として役割を果たす

3. 研修や学びの機会をどう作るか?

OJTだけでは補えない部分もありますが、定期的な研修や学びの機会を設けることも重要です。

3-1. 低コストで管理職研修を実施する方法

  • 社内で「管理職勉強会」を開催する
    • 管理職同士で月1回集まり、悩みや成功事例を共有する
  • 外部セミナーに参加させる
    • 必要に応じて、短期間のマネジメントセミナーやリーダーシップ講座を活用する
  • オンライン学習を活用する
    • 動画研修やeラーニングを活用すれば、コストを抑えながら学習機会を提供できる

4. メンター認証を活用する

管理職が孤立しないために、メンター(指導者)制度を導入することも有効だ。

4-1. メンター認定の特典

  • 若手管理職が、経験豊富な先輩から学べることができる
  • 管理職同士の横のつながりが生まれ、相談しやすくなる
  • 経営者がすべてをフォローする必要がなくなり、負担が軽減される

4-2. メンター制度の運用例

  • 新任管理職に対して、先輩管理職が1人サポート役としてつく
  • 月に1回程度のフォローアップ面談を行う
  • メンターがアドバイスをするだけでなく、経験を共有する

まとめ

中小企業でも管理職育成は十分可能であり、「役割の明確化」「OJTの活用」「継続的な学習機会」「メンター認定」という4つの要素を活かして、管理職を効果的に育てることができる。

経営者が「育成に手が回らない」と考えて放置すると、結果的に組織の成長が滞り、負担がさらに増えることになる

次回は、「管理職の適性を見極める!人選のポイント」について解説する。 管理職の選択を間違えると、わざわざの育成も無駄になりません。

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