第5回:管理職を育てる組織が成長する!成功事例と実践ポイント

杉山 晃浩

なぜ管理職の育成が組織の成長につながるのか?

これまで中小企業の管理職育成の課題や必要なスキル、適性を見極める方法について詳しく解説してきた。しかし、「管理職をしっかり育てると、どのように組織が成長するのか?」という視点がなければ、育成の重要性を実感しにくいかもしれない。

実際、管理職を体系的に育てることができた企業では、「経営者が現場業務から解放され、戦略的な経営に集中できるようになった」「社員の定着率が向上し、組織の生産性が大きく改善した」 といった成功例が数多く報告されている。

本稿では、管理職育成がどのように企業の成長につながるのかを、具体的な成功事例と実践ポイント を交えながら解説していく。


1. 管理職育成が成功した企業の事例

ケース①:現場頼みの組織から、管理職が主体となる組織へ(製造業A社)

【課題】
A社は30人規模の製造業で、経営者がすべての業務に関与しなければならない状況が続いていた。管理職は名ばかりで、実際には経営者が細かい指示を出し続けるため、管理職の自主性が育たなかった。

【取り組み】
A社は、管理職向けに以下の施策を導入した。

  1. 「管理職の役割定義」を作成し、管理職が何をすべきかを明確にした
  2. 月1回の「管理職ミーティング」を実施し、情報共有と意思決定を管理職主体で行うようにした
  3. 管理職候補者にOJTを実施し、リーダーシップを鍛えた

【結果】

  • 経営者が細かい指示をしなくても、管理職が自主的に意思決定できるようになった
  • 経営者は新規事業や取引先開拓など、経営に集中できるようになった
  • 部下のモチベーションも向上し、離職率が低下した

ケース②:トップセールス依存から、チーム営業への移行(サービス業B社)

【課題】
B社は営業職中心の企業で、これまで営業成績の良い社員が管理職になっていた。しかし、管理職が「自分が売ればいい」と考え、部下を育成しなかったため、チーム全体の営業力が向上せず、トップセールスに依存する体制が続いていた。

【取り組み】
B社は、以下の対策を講じた。

  1. 営業成績ではなく、「チームの成果を向上させる力」を管理職の評価基準に変更
  2. 管理職研修を実施し、「部下の育成とチーム営業の推進」を重視
  3. 管理職に「部下の目標設定とフォロー」を義務付けた

【結果】

  • トップセールス以外の社員も実績を上げられるようになり、会社全体の売上が向上
  • 管理職が「部下を育成する役割」としての意識を持ち、組織としての営業力が強化された

2. 管理職を育てるための実践ポイント

① 管理職の「評価基準」を変える

管理職を適切に育てるためには、「管理職の評価基準」を見直すことが不可欠だ。

例えば、次のような評価指標を導入することで、管理職の育成意識を高めることができる。

部下の成長度合いを評価する(部下がどれだけスキルアップしたか?)
チームの成果を評価する(管理職の売上ではなく、チーム全体の売上を重視)
部下とのコミュニケーションを評価する(1on1ミーティングの実施状況など)

管理職が「部下を育てること」に意識を向けるようになれば、組織全体の成長につながる。


② OJT+研修の組み合わせで成長を促す

管理職のスキルは、「現場経験」と「座学」のバランスが重要 だ。

実践的なOJTのポイント

  • 「小さなリーダー経験」を積ませる(プロジェクトリーダーやチームリーダーを経験させる)
  • メンター制度を導入し、経験豊富な管理職がフォローする

研修のポイント

  • 部下育成、問題解決、リーダーシップを強化する研修を実施
  • 定期的なフィードバックを行い、管理職の成長をサポート
  • READ AND WRITE を活用した日々の行動のくせ付け

③ 経営者は「現場の細かい仕事」から離れる

中小企業では、経営者が現場業務に深く関与しすぎることが多い。しかし、管理職を成長させるためには、経営者が適切に権限を委譲することが重要だ。

管理職に意思決定を任せる(すべて経営者が決めるのではなく、管理職に考えさせる)
「失敗を許容する文化」を作る(管理職がチャレンジしやすい環境を整える)

こうした環境が整えば、管理職は主体的に動くようになり、組織全体の成長につながる。


まとめ

管理職を育成することで、組織の成長スピードは加速する。今回紹介した事例や実践ポイントを振り返ると、次のようなポイントが重要だ。

管理職の役割を明確にし、適切な人材を選ぶ
評価基準を見直し、「部下の成長」や「チームの成果」を重視する
OJTと研修を組み合わせ、実践的な学びの場を提供する
経営者は管理職に権限を委譲し、主体的に成長させる

これらの取り組みを進めることで、経営者が現場業務から解放され、組織全体の生産性が向上する

本シリーズでは、「中小企業の管理職育成」をテーマに、基礎から実践までを詳しく解説してきた。今後、ぜひ自社で実践し、「管理職が成長し、組織が強くなる仕組み」 を作ってほしい。

管理職を適切に育成できる企業こそが、未来の成長企業 となる。今日から一歩を踏み出してみよう。

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