退職金制度の見直しが未来を守る ― 社労士が語る、インフレ時代の賢い選択4
杉山 晃浩
【第4回】制度見直しは社員説明がカギ!不利益変更を乗り越えるために
はじめに:見直しを成功させる最大のカギは「社員説明」
ここまで、
-
退職金制度を放置するリスク
-
中退共一本頼みの限界
-
確定拠出型(DC型)への見直し提案
をお伝えしてきました。
しかし、どれだけ素晴らしい制度を設計したとしても、
社員の理解と納得を得られなければ失敗に終わる可能性があります。
特に、既存の退職金規程を変更する場合は、
**「不利益変更」**という非常に慎重な対応が求められます。
今回は、制度見直し時に経営者が絶対に押さえておくべき、
✅ 社員説明のコツ
✅ 不利益変更リスクの乗り越え方
について、社労士視点で具体的にアドバイスします。
なぜ制度変更には「丁寧な社員説明」が必須なのか?
退職金制度は、
-
社員の将来設計に直結する
-
企業との信頼関係に深く関わる
非常にセンシティブなテーマです。
だからこそ、
✅ 「伝え方」が雑だと一気に不信感が広がる
✅ 誤解が生じると後戻りできない
という大きなリスクをはらんでいます。
とくに、確定給付型から確定拠出型に移行する場合、
社員の心理はこうです。
「今まではもらえる金額が決まっていたのに、これからは運用しないと増えないの?」
「なんだか損をするのではないか?」
このような**「不安感」**に、どう寄り添い、
どう納得してもらうかが成否を分けるのです。
不利益変更と労働契約法の基本
ここで押さえておきたいのが、
労働契約法第10条です。
要約すると――
労働条件の不利益変更は、
・個別の同意を得るか
・合理的な理由がある場合のみ有効
とされています。
つまり、
✅ 社員全員の個別同意をとる
または
✅ 社会的合理性をしっかり説明できる
このどちらかが必要です。
単に「会社が変えたいから」という理由では認められません。
【具体例】不利益変更に失敗したケース
例えば、ある運送会社D社では、
-
賃金カットと同時に退職金規程も見直し
-
しかし説明はわずか30分の全体会議のみ
-
書面交付もせず、「口頭で了解をとった」という体裁だけ
その結果――
数年後、退職社員から「減額は無効だ」と訴えられ、
結局、旧規程通りの退職金を支払う羽目に。
この事例からもわかるように、
制度変更は「説明責任」が極めて重いのです。
反発を防ぐためのポイント ~社員に伝えるべき5つのこと~
では、反発を防ぎ、納得を得るためには何をどう伝えればよいのでしょうか。
ポイントは次の5つです。
① なぜ今見直すのか(背景説明)
-
物価上昇、賃金水準の変化
-
会社の持続的成長のため
② どういう制度に変えるのか(制度概要)
-
確定拠出型への移行
-
毎月の拠出額
-
運用支援体制の整備
③ 社員にとってのメリット
-
資産形成支援
-
税制優遇メリット
-
透明性・納得感の向上
④ デメリットやリスクも正直に伝える
-
運用リスクがあること
-
しかしそれをサポートする体制があること
⑤ 会社として社員を支える意思
-
継続的な説明会
-
運用教育の実施
-
個別相談窓口の設置
【実務ノウハウ】説明資料・同意書の作成例
実際に見直しを進める場合、
次の書類をきちんと準備することをおすすめします。
✅ 説明会資料(わかりやすい図解付き)
✅ 退職金制度変更のお知らせ(文書)
✅ 個別同意書(署名・押印)
✅ 質問受付窓口の案内文
特に個別同意書は非常に重要です。
後々、
「説明を受けていなかった」
「同意していない」
と争われるリスクを最小化するためにも、必ず取得しておきましょう。
社員巻き込み型で進める、制度変更の成功パターン
さらに一歩進んで、
**「社員を巻き込んだ制度作り」**を目指すと成功率が上がります。
例えば、
-
退職金制度見直しプロジェクトチームを立ち上げる
-
若手・中堅社員をメンバーに加える
-
社員アンケートを実施する
-
途中経過を共有し、意見交換会を開く
こうすることで、
「会社と社員が一緒に未来を作る」
というポジティブな空気を醸成できます。
制度変更を「押し付け」ではなく、
**「一緒に良い制度を作るプロジェクト」**にすることが、何より大切なのです。
【まとめ】見直しを「会社と社員の未来を守るプロジェクト」にする
退職金制度の見直しは、単なる「コストカット」ではありません。
それは、
✅ 会社の持続的成長
✅ 社員の人生支援
✅ 経営リスクの適正管理
を同時に実現する、大きな経営課題です。
そして、成功のカギは
社員の理解と納得
にかかっています。
✅ 背景を正直に伝える
✅ メリット・デメリットを丁寧に説明する
✅ 個別同意をしっかり取る
✅ 社員を巻き込む
この基本を大切に、
ぜひ「未来を守るプロジェクト」として退職金制度の見直しに取り組んでください。
もしも『自社の力だけでは無理だ…』と考えるのなら、気軽にオフィススギヤマグループを頼ってください。
お問い合わせはコチラからお願いします。