もう正月もGWも怖くない! 月末締め・10日払いの給与計算を“らくにする”4つの方法

杉山 晃浩

1月と5月——給与計算担当者にとっては「地獄の月」です。
なぜなら、月末締め・10日払いというスケジュールと、正月休みやゴールデンウィークが丸かぶりしてしまうから。
「銀行の締切は2営業日前まで」「勤怠データが揃わない」「休日出勤で対応」…
こうした悩みは、決して珍しいものではありません。

本記事では、そんな中小企業の給与計算担当者や、給与計算を家族で担っている経営者の奥さまに向けて、
**「業務を効率化し、休暇を犠牲にしないための4つの具体的な方法」**をわかりやすく解説します。

クラウド勤怠、外注化、支給日の見直し…すぐに始められる改善策ばかりです。
給与計算の「仕組み」を見直して、来年こそ安心して旅行や家族との時間を楽しめる働き方を実現しませんか?

第1章:なぜ1月と5月は給与担当者にとって“地獄の月”なのか

給与計算の締め日が「月末」、支給日が「翌月10日」というスケジュールを採用している企業は少なくありません。一見すると一般的で安定感のあるサイクルに見えますが、実はこの方式には“地雷月”があります。それが1月と5月です。

理由は明確。1月は年末年始の休業、5月はゴールデンウィークにより、銀行の営業日が極端に少なくなるからです。給与の振込データは支給日の2営業日前までに銀行へ提出する必要があるため、通常であれば8日や9日が締切となる10日払いが、1月・5月には実質的に4月末や12月末までに完了していなければならないという事態に。

「正月もGWも出勤しなければならない」
「家族旅行なんて夢のまた夢」

給与計算担当者にとって、こうした悲痛な声は他人事ではないのです。


第2章:それでも外注しない中小企業──「もったいない誤解」が生む負担

こうした過酷なスケジュールの中で、なぜ今も多くの中小企業が給与計算を社内で抱え続けているのか?
その理由のひとつが、「外注はコストアップになるからもったいない」という誤解です。

実際には、給与計算を社内で処理し続けることで生じる**“見えないコスト”**の方がはるかに高額になることもあります。

  • 担当者の退職や病欠で誰も引き継げない

  • ミスによる従業員との信頼関係の崩壊

  • 労基署対応・未払い残業問題・助成金の申請ミス

これらは、会社の信用や生産性に関わるリスクです。「外注=経費」ではなく、「外注=経営の保険」と捉える視点が必要なのです。


第3章:給与計算を“らく”にする4つの実践策【現場が変わる仕組み】

では、実際に給与計算を「らくにする」にはどうすればよいのでしょうか?ここでは、特に有効な4つの方法をご紹介します。

① 支給日を10日から15日に変更する

5日後ろ倒すだけで、GWや年末年始の影響を受けにくくなります。労働基準法では「月1回以上、一定日に支払う」ことが求められているため、15日払いでも法令上まったく問題なし
就業規則と労働条件通知書を改訂すれば、スムーズに導入できます。

② クラウド勤怠を導入する

紙のタイムカードやExcel集計では、締切前の集計が追いつかないのが現実。
KING OF TIMEやジョブカンなどのクラウド勤怠システムを導入することで、リアルタイムで勤怠データを可視化・集計可能。結果、給与担当者の作業は「確認と微調整」だけに。

③ 地雷月を見える化する「先読みカレンダー」の作成

毎年12月に「来年の給与振込締切カレンダー」を作成・社内共有しましょう。
特に部署ごとに勤怠を締める企業では、「遅れた部署は賞与査定に響く」といったルールを設けることで、管理職の意識改革にもつながります。

④ 給与計算の外注化

最大の改善策が「給与計算の外注化」です。
社労士や給与計算専門BPOと連携し、勤怠連携から明細作成・振込データ作成まで一気通貫でアウトソーシング
属人性を排除し、担当者の退職や休職にも動じない体制が構築できます。


第4章:外注化はコストではなく「経営の保険」である理由

給与計算の外注は、単なる「人件費の代替」ではありません。それは経営のリスクマネジメントです。

たとえば、クラウド給与システム(ネットde賃金・ネットde明細など)と連携することで、

  • 給与明細をスマホで確認

  • 振込データを出先から送信

  • 社会保険料や法改正にも自動対応

といった**「旅先からでも業務が完結」する仕組み**が構築できます。
実際に、あるクリニックでは、院長夫人が長年給与計算を担当していましたが、外注化とクラウド化により、「初めて正月に海外旅行へ行けた」と語ってくれました。

これは「時短」でも「ラク」でもなく、働き方の変革です。


第5章:従業員にもメリットがある「仕組みで守る給与計算」

給与計算の“仕組み化”は、経営者や担当者だけでなく、従業員にとっても多くのメリットがあります。

  • 給与計算ミスの防止 → 信頼関係の向上

  • ペーパーレスで明細がすぐ見られる → 利便性アップ

  • 年末調整の電子化やマイナポータル連携など、行政対応の効率化

従業員にとって「給与」は最も大切な生活の基盤。そこに安心感を提供することは、企業の信頼価値の向上にもつながります。


第6章:やってはいけないNG対応──締め日を前倒しするリスク

「締め日を20日にすれば余裕ができるのでは?」という声もあります。
しかし、これは社労士的には最も避けるべき方法です。

  • 残業代の翌月払いが合法かどうかの判断が分かれる

  • 助成金の申請時に整合性が取れない

  • 変更時の説明・運用コストが高すぎる

短期的には楽に見えて、中長期的には大きなトラブルのもとになりかねません。


最終章:給与計算の“構造改革”が、経営者の自由と信頼を生む

給与計算を「人に頼る」のではなく、「仕組みに任せる」こと。
それは、単なる効率化ではなく、経営の安定化と未来の自由をつくる第一歩です。

働き方改革とは、現場の負担を減らすことだけでなく、
「経営者自身が、自分の人生を犠牲にしない経営を選ぶ」ことでもあります。

来年こそ、正月やゴールデンウィークを家族と過ごし、旅行にも行ける会社に。
それは、あなたの意思決定ひとつで、今日から始められます。

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