社労士が警鐘!障害年金申請の正しい知識と落とし穴 第1回:障害年金・障害厚生年金とは?基礎知識と対象者を解説

杉山 晃浩

はじめに

病気やけがで生活や仕事が難しくなったとき、「この先、どうやって暮らしていけばいいの?」と悩む方は多いものです。そんなときに頼りになる制度が 障害年金 です。

障害年金というと、「重い障害の人だけがもらえるもの」とか、「働けなくなったら自動的にもらえるもの」と誤解されがちです。でも実際は、そうではありません。

今回の記事では、障害年金の基本から、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の違い、対象となる人の条件まで、できるだけわかりやすく解説していきます。まずは正しい知識を持つことで、将来必要なときに役立てられるようにしましょう。


1. 障害年金とは? ─ 制度の全体像

障害年金は、日本の公的年金制度の一つで、病気やけがで生活や仕事に大きな制限が出たときに支給されるお金です。

私たちが払っている年金には、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 国民年金(基礎年金)

  • 厚生年金

このうち、障害年金には次の2種類があります。

  • 障害基礎年金(国民年金加入者や20歳前から障害がある人が対象)

  • 障害厚生年金(厚生年金加入中に障害を負った人が対象)

つまり、年金を払ってきた制度によって、どちらの障害年金がもらえるかが決まります。

例を挙げると:

  • 自営業や主婦 → 国民年金なので「障害基礎年金」

  • 会社員・公務員 → 厚生年金なので「障害厚生年金」+「障害基礎年金(1・2級のみ)」

このように、加入していた年金によって、もらえる障害年金の種類が変わります。


2. 障害基礎年金と障害厚生年金の違い

では、障害基礎年金と障害厚生年金は、どこがどう違うのでしょうか?

◆ 加入制度の違い

  • 障害基礎年金
    → 国民年金加入者が対象(自営業、主婦、学生など)

  • 障害厚生年金
    → 厚生年金加入者が対象(会社員、公務員など)

◆ 支給される等級の違い

  • 障害基礎年金
    → 1級、2級の人が対象

  • 障害厚生年金
    → 1級、2級、3級の人が対象
    ※3級は厚生年金独自の仕組みです。

◆ 金額の違い

  • 障害基礎年金は定額で、1級・2級それぞれ決まった金額です(年額約99万円~)。

  • 障害厚生年金は、働いていたときの収入や加入期間によって金額が変わります。収入が高かった人ほど、もらえる年金額も多くなる仕組みです。


3. 対象者の条件を簡単に理解する

障害年金は、誰でももらえるわけではありません。以下の条件があります。

(1)初診日要件

病気やけがで初めて病院に行った日(初診日)が、年金制度に入っているときであること。

例:会社員が厚生年金加入中にうつ病の治療を開始した → OK
例:無年金期間に初診日 → 原則NG

(2)保険料納付要件

初診日の前に、一定の年金保険料をきちんと払っていること。
→ 過去1年間に未納がなければOKという緩和ルールもあります。

(3)障害等級の該当要件

病気やけがが、1級・2級(厚生年金は3級も)の障害状態であること。


4. 20歳前障害という特例

あまり知られていませんが、「20歳前障害」という仕組みがあります。

これは、先天性の病気や、子どもの頃の病気・けがで20歳になる前に障害状態になった場合、20歳以降に障害基礎年金を受け取れる特例です。

ここで重要なのは、「保険料を払っていなくてもOK」という点。親の扶養に入っている学生や主婦の子どもでも対象になります。

ただし注意点もあり、20歳前障害では「所得制限」があり、ある程度の収入があると支給停止になることがあります。


5. 制度の重要性と誤解されがちなこと

障害年金は、「税金で支える福祉」ではなく、あくまで「保険」の仕組みです。
つまり、自分が保険料を払ってきたからこそ、困ったときに支給されるものです。

ただし、ここで大事な注意があります。

社労士として相談を受けてきた中で、「本当に困っている人」がたくさんいる一方で、残念ながら「自分は障害年金が欲しい」と強く思うあまり、該当しないのに請求を試みる人も一定数存在します。

医師の中には、過去に不正受給を疑われた経験があるため、「障害年金」と聞くだけで強く警戒する方もいます。私自身も、医師に連絡を入れたとき、「お前たちは詐欺の片棒を担ぐのか」と厳しく叱られた経験があります。こうした現場のリアルは、あまり知られていません。

障害年金は、正しく請求すれば本当に役立つ制度です。ですが、その制度を悪用しようとする人がいることで、本当に必要な人が申請しづらくなることがあります。

このシリーズでは、「どんな人が対象か」「どんな条件で申請できるのか」を正しく知り、誤解や不正を防ぐことの大切さも伝えていきます。


6. まとめ:基礎知識を押さえて正しいスタートを切ろう

ここまで、障害年金の基本的な仕組みと、障害基礎年金・障害厚生年金の違い、対象者の条件、20歳前障害、誤解や不正の話まで触れてきました。

障害年金は、「知っているか、知らないか」で人生が大きく変わることがあります。
正しい知識を持つことで、本当に困っている人が制度を活用できるようになるのです。

次回の記事では、もっと具体的に「もらえる条件」について詳しくお話しします。
初診日、納付要件、障害等級、そして20歳前障害の特例について、さらに深掘りしますので、ぜひ続けてお読みください。


🌟 最後に一言

障害年金は魔法の制度ではありません。
ですが、正しく申請すれば、困っている方の生活を支える力強い制度です。
社労士としても、誤解なく、正しい使い方を広めていきたいと思っています。


👉 次回予告:「もらえる条件をわかりやすく!初診日・納付要件・障害等級」
お楽しみに!

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