社労士が警鐘!障害年金申請の正しい知識と落とし穴 第3回:手続き完全ガイド!必要書類・流れ・注意点
杉山 晃浩
はじめに
障害年金の対象になりそうだとわかっても、「実際どうやって申請するの?」という壁があります。
制度の内容がわかっていても、手続きの流れや書類の準備が大変で、途中で諦める人も少なくありません。
今回は、障害年金の申請手続きについて、準備から提出までの流れを詳しく解説します。
特に診断書の重要性や、社労士として現場で感じる注意点もお伝えします。
1. 手続きの流れをざっくり確認
障害年金の申請は、大きく次の5ステップです。
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初診日を確認する
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必要書類を集める
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診断書を医師に依頼する
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申立書(病歴・就労状況)を作成する
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年金事務所に提出する
順番に見ていきましょう。
2. 初診日を確認する
まず「初診日」が非常に重要です。
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どの病気で
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いつ
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どこの病院で診察を受けたか
を確定させます。
初診日は年金の種類(厚生・基礎)の決め手となり、カルテや紹介状、健康診断の記録などから証明します。
ポイント:
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古いカルテは5年程度で廃棄されることが多い
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診療報酬明細(レセプト)を病院に頼む手もある
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病院が廃院の場合、地域の医師会や健康保険組合に問い合わせる
3. 必要書類を揃える
障害年金の申請では、以下の書類が基本です。
✅ 診断書(障害状態確認用の特別な様式)
✅ 病歴・就労状況等申立書(本人が作成)
✅ 受診状況等証明書(初診日を証明する書類)
✅ 年金手帳や基礎年金番号通知書
✅ 戸籍謄本(または住民票)、本人確認書類
✅ 所得証明(20歳前障害の場合)
ここで重要なのは、診断書です。
4. 診断書の依頼のコツと注意点
診断書は年金用の特別な様式で、一般的な診断書とは違います。
これが不十分だと、申請が通らないことが多いです。
社労士としての実体験では、次のことを意識してもらうと成功率が上がります。
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予約時に「障害年金の診断書が必要」と伝える
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医師に生活上の困難(例:トイレ、食事、着替え、通勤、対人関係の問題など)を正直に話す
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家族や支援者の意見・メモも役立つことがある
注意:
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医師は「診断書を出す義務はない」と考えている場合もある
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医師を怒らせないことが非常に大切(第2回で触れた通り)
過去には「診断書を書いてほしい」と医師に伝えたところ、「あなたは年金目当てか」と拒絶され、スタッフが障害年金と聞くと動悸を覚えるほどショックを受けたケースもありました。
そのため、誠実な姿勢と正直な申請が非常に大切です。
5. 病歴・就労状況等申立書の作成
この書類は、過去から現在までの病気やケガの経過を時系列でまとめるものです。
ポイント:
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初診から現在までの大きな節目を簡単に書く
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入院・手術・治療歴を書き漏らさない
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就労状況(働けなくなった時期や内容)を具体的に記載する
例:
「平成28年ごろ、気分の落ち込みが強くなり欠勤が増加。同年10月に退職、以後通院治療中」
→ 簡潔でも実態が伝わる文章が◎
6. 年金事務所での提出・相談
書類が揃ったら、年金事務所で手続きします。
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事前予約をして相談窓口へ
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提出書類を確認してもらう
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その場で不足が見つかれば追加提出する
提出後は、日本年金機構で審査が行われ、3か月~半年ほどで結果が届きます。
7. よくある落とし穴と対策
落とし穴1:「診断書が軽めの内容」
→ 医師に生活上の困難を具体的に説明してから作成してもらう。
落とし穴2:「病歴申立書が雑」
→ 家族や支援者と一緒に、時系列をしっかり整理して書く。
落とし穴3:「初診日が証明できない」
→ 古い病院や健診記録、場合によっては医師会・健保組合にも相談。
8. 社労士の立場からの一言
私たち社労士は、申請の「通し屋」ではなく、正しい申請を支援する専門家です。
だからこそ、申請を希望する方には次のことを忘れないでほしいと思います。
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対象外の人には、きっぱりと「通らない」と伝えます
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医師との信頼関係を壊さないように行動します
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本当に困っている方の申請を優先します
制度を正しく使うことは、未来の障害年金制度を守ることにもつながります。
まとめ
今回は障害年金の手続きの流れ、必要書類、診断書の依頼のコツ、注意点までをお話ししました。
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初診日確認は徹底的に
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診断書は生活状況をしっかり伝えて依頼
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病歴申立書は簡単すぎず具体的に
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提出は年金事務所の予約相談が安心
次回は、年金額の計算方法やモデルケース、加算の話など「お金の話」に焦点を当てます。ぜひお読みください。
👉 次回予告:「いくらもらえる?障害年金・厚生年金の計算方法」