就業規則の教科書:新米経営者と人事担当者のためのトラブルなしマニュアル 第1回: 「就業規則の基本とは?経営者が知っておくべきはじめの一歩」
杉山 晃浩
はじめに
初めて従業員を雇うことを決めた経営者や人事担当者にとって、就業規則は避けて通れない重要なテーマです。しかし、就業規則を作成することに対して、「難しそう」「どう始めればいいのかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか?
実際、就業規則がしっかりと整備されていないと、トラブルが発生した時に会社側が不利になることがあります。特に、給与の支払い方法や休暇の取得、解雇の際の手続きなど、明確なルールがないと、後々問題に発展する可能性が高くなります。
今回は、就業規則の基本について、初心者でもわかりやすく解説します。就業規則がどのように企業にとって重要で、どんな場合に必要となるのか、そして、どのように作成していけばよいのかを順を追って説明していきます。
1. 就業規則とは?
まず最初に、就業規則が何かをはっきりと理解しておきましょう。
就業規則とは、従業員が働くためのルールをまとめたものです。会社と従業員の間で約束する基本的な事項が記載されています。これには、給与の支払い方法や勤務時間、休暇、福利厚生、労働条件、解雇の基準など、企業の運営に必要不可欠な事項が含まれます。
例えば、従業員が「自分の給与が未払いだ」と訴えた場合、就業規則に給与の支払い方法や支給日がきちんと記載されていれば、会社はその内容に従って対応できます。逆に、これらが不明確な場合、トラブルが発生しやすくなります。
1-1. 就業規則の主な役割
就業規則の役割は大きく分けて以下のようなものがあります。
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労働条件の明確化: 就業規則により、給与、労働時間、休暇の取り決めなどが明確になり、従業員は働きやすく、会社側もトラブルを防ぐことができます。
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労働契約の補完: 就業規則は、個別の労働契約書の補完的な役割を果たします。労働契約書がなくても、就業規則に基づいて従業員を雇うことができます。
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トラブル予防: 労働条件や規則が最初からきちんと決まっていれば、後々のトラブルを未然に防げます。例えば、就業規則に「残業が発生した場合は、必ず事前に上司に申請する」といったルールを設けることで、残業に関する誤解を防げます。
2. なぜ就業規則が必要なのか?
では、なぜ就業規則が必要なのか、具体的に考えてみましょう。
2-1. トラブルの予防
就業規則がなければ、会社と従業員の間でルールが曖昧になり、後々のトラブルを引き起こす原因になります。例えば、給与や休暇、労働時間などについて明確に決められていないと、誤解が生じ、給与未払いなどの問題が発生することがあります。
また、従業員が突然退職した場合、就業規則があれば、退職金や引き継ぎ業務などについても、スムーズに進めることができます。これらが曖昧だと、トラブルが長引き、会社の信頼を失う原因にもなります。
2-2. 法令遵守
就業規則は、労働基準法や労働契約法などの法律に基づいて作成する必要があります。これらの法律では、労働者の権利を守るためのルールが定められており、就業規則はそれに準拠している必要があります。
例えば、労働基準法では、労働時間や残業代の支払いについての基準が設けられていますが、これを守らないと企業が罰則を受ける可能性もあります。就業規則でこれらを明確に記載することで、企業は法令を守っていることを証明できます。
2-3. 従業員の安心感
従業員にとっても、就業規則は重要な役割を果たします。給与や労働時間、休暇などのルールが明確に定められていることで、安心して働くことができます。特に、新しい従業員にとっては、会社のルールが明確であることは、働きやすさに直結します。
3. 就業規則が必要な会社とは?
次に、どのような会社が就業規則を作成する必要があるのかについて見ていきましょう。
3-1. 従業員数が10人以上の会社
労働基準法では、従業員数が10人以上の企業は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があると定めています。これを怠ると、罰則が科される場合があります。
そのため、従業員が増えてきた段階で就業規則を作成することが求められます。
3-2. 従業員数が10人未満の会社
従業員数が10人未満の会社でも、就業規則を作成することは強く推奨されます。特に、将来的に従業員数が増えることを考えると、早い段階で就業規則を整備しておくと、後々の手間が少なくて済みます。
また、就業規則を作成しておくことで、従業員とのトラブルを未然に防ぐことができます。特に、給与の支払い方法や休暇のルールが不明確だと、後々大きな問題になりかねません。
4. 就業規則作成の流れ
それでは、実際に就業規則をどのように作成すればよいのかについて見ていきましょう。
4-1. 基本的な項目を決める
就業規則を作成するには、まず基本的な項目を決める必要があります。主な項目は以下の通りです。
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労働時間: 勤務時間、休憩時間、残業のルールなど
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給与: 支払い方法、支給日、手当の種類など
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休暇: 有給休暇、特別休暇、産休・育休など
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福利厚生: 健康保険、厚生年金、交通費の支給など
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解雇・退職: 解雇の条件、退職手続きなど
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ハラスメント防止: セクハラ・パワハラ防止のための方針
これらの項目について、企業の状況に合わせて具体的に決めていきます。
4-2. 法的要件を確認する
次に、法的要件を確認します。就業規則は、労働基準法や労働契約法などの法令に基づいて作成する必要があります。特に、労働時間や休暇に関する規定は、法令を遵守することが求められます。
4-3. 専門家に相談する
就業規則を作成する際には、社労士(社会保険労務士)に相談することをおすすめします。専門家は、法的に問題がないように、また、企業の実情に合った就業規則を作成してくれます。
まとめ
今回は、就業規則の基本について解説しました。就業規則は、従業員と会社の間で守るべきルールを定めるものであり、会社のトラブルを未然に防ぐために欠かせないものです。特に、給与や労働時間、休暇、解雇の手続きなど、基本的な項目をしっかりと決めておくことで、後々のトラブルを避けることができます。
次回は、給与や労働時間、休暇に関するルール作りについて、具体的な例を交えながら解説します。