“ほうれんそう”ができない社員たちへ ― 報連相が根づく職場の育て方 【第2回】 報連相ができる職場はこう育てる!第一歩は“ルール化と見える化”から

杉山 晃浩

はじめに:「伝えてほしい」は伝わらない

「もっと早く言ってくれたらよかったのに…」という後悔が絶えない職場では、そもそも「何を、いつ、誰に伝えるべきか」の基準が共有されていないことが多いです。

「報連相ができない社員」には、実は「どう動けばいいのか分からない」という不安があります。

今回は、“報連相を文化として根づかせるための第一歩”として、「ルール化」と「見える化」の具体策をご紹介します。


報連相が習慣になる職場は「型」を持っている

報連相がスムーズに行われている職場には、共通して“型”があります。つまり、社員が「こういう時は、こう報告する」という行動の型を共有しているのです。

この型は、「感覚」で理解させるのではなく、明文化して教える必要があります。


【1】ルール化のポイント:報連相の基準を決める

以下は、実際に現場で効果があったルールの一例です。

▶ 迷ったら30分以内に相談する

「30分自分で考えて分からなければ、必ず相談する」というルールを設けると、タイミングを逃さず相談できるようになります。

▶ クレーム・トラブルは即報告

「何があっても30分以内に上司へ連絡」というルールにより、情報共有の遅れを防げます。

▶ 顧客対応は24時間以内に中間報告

「解決できていなくても、状況だけでも一度報告する」というルールにより、安心感を提供できます。

このように、「いつ」「誰に」「何を」報連相するのかをルールで定めることが、習慣化の第一歩です。


【2】見える化のポイント:ツールとテンプレートの活用

どんなにルールがあっても、日々の業務の中で活用されなければ意味がありません。そこで重要なのが“見える化”です。

▶ 日報・週報に「報連相欄」をつくる

報告すべきことを“書く場所”があるだけで、意識が変わります。例:

  • 今週の報告・連絡すべきことは?

  • 相談したいこと、迷っていることは?

▶ チャットツールで「報連相チャンネル」を設置

SlackやLINE WORKSなどに、専用の“報連相チャンネル”を作成しておくことで、「報告していい場」が明確になります。

▶ メールや報告文のテンプレートを配布

以下のような定型文を共有することで、報告のハードルを下げられます。

  • 「○○の件ですが、現在△△の状況です。完了予定は□□日です。」

  • 「ご相談です。□□について判断に迷っています。ご意見をいただけますか?」


【3】評価制度に組み込むことで“行動化”を促す

報連相を「やって当たり前」の風土にするためには、評価項目として明記することも有効です。

▶ 評価項目例:

  • トラブルやクレームを適切なタイミングで報告したか?

  • 上司・同僚との情報共有を意識して行っていたか?

  • 相談の頻度・質は適切だったか?

「報連相は評価の対象になる」と伝えるだけで、意識は大きく変わります。


【4】社労士が支援できる「報連相ルールづくり」

杉山社会保険労務士事務所では、次のような形で支援を行っています。

▶ 報連相ガイドラインの作成支援

企業の業種や社風に合わせて、「うちの会社ではどうするか?」というルールを一緒に作成します。

▶ 評価制度への報連相項目の導入支援

等級制度や行動評価表に、報連相の要素を無理なく組み込むお手伝いをします。

▶ テンプレート・報告書式のカスタマイズ提供

新人研修でも使えるような“ひな形”を用意し、実践に活かせるようにします。


まとめ:「文化はルールから始まる」

報連相ができる組織は、偶然そうなったわけではありません。

明確なルールを作り、それを見える形で共有し、評価にも組み込んでいるからこそ、“報連相が当たり前の文化”として根づいているのです。

次回は、ルールを作っても「それでも報連相ができない人たち」への具体的な対応策について、管理職や現場の工夫を中心にお話しします。

 

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