中小企業の未来を変えるインターンシップ活用術 ― 採用・育成・業務改善の一石三鳥戦略 第3回:ゼロから始めるインターンシップ受け入れ準備マニュアル【中小企業向け】
杉山 晃浩
インターンシップを導入したいけれど、何から手をつければ良いかわからない――。
そんな声を多く耳にします。
実際、「興味はあるけど準備が大変そう」「大企業みたいに体制が整っていない」といった理由で一歩を踏み出せない中小企業は少なくありません。しかし、インターンシップは決して大企業だけのものではなく、中小企業だからこそ、学生にとって“リアルな仕事の現場”を体験できる魅力があります。
本稿では、これからインターンシップの受け入れを始めたい中小企業の皆さまに向けて、準備から実施・振り返りまでの流れを、実務目線でわかりやすく解説します。
Step 1:受け入れの目的を明確にする
最初にやるべきことは、「何のためにインターンシップを受け入れるのか」を明確にすることです。目的が曖昧なままスタートすると、社員のモチベーションも上がらず、学生にとっても学びの少ない体験になってしまいます。
たとえば、目的は次のように整理できます:
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地元学生との接点づくり(採用母集団形成)
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社員の教育力強化(若手育成)
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自社業務の見直し(マニュアル整備や業務整理)
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地域貢献や大学連携の一環
目的が明確になることで、インターンの内容や受け入れ方針に一貫性が生まれ、全社的に取り組みやすくなります。
Step 2:受け入れ時期・期間・対象を決める
次に決めるのは、いつ・どのくらい・誰を受け入れるのかという基本設計です。
● 受け入れ時期の例:
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夏季休暇中(7〜9月)…大学生の参加が最も多い
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春季休暇中(2〜3月)…就職活動直前期で意欲高め
● 期間の目安:
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1日(1day仕事体験)
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3〜5日(プチ体験型)
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2週間〜1ヶ月(実践・プロジェクト型)
● 対象者の設定:
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大学生(学部不問、または専攻を限定)
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地元高校生(地元定着志向の強化)
ここでは、「まずは1day体験から」「自社の仕事が伝わるには最低5日は必要」など、目的に応じた設計が必要です。
Step 3:プログラムの設計(学生に何を見せ、何をさせるか)
プログラム設計はインターンシップの成否を左右する重要な部分です。以下の3つのバランスが鍵となります。
① 実務体験
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接客、製造、営業同行、事務作業補助など
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“手を動かす”経験がリアリティを与えます
② 学びの要素
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業界理解、会社の理念、先輩社員の話など
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見学+質問タイムを設けると好評です
③ 自己成長支援
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振り返りシート記入+社員からのフィードバック
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最終日の成果発表会(小規模でも効果大)
学生が「来て良かった」「学べた」と感じるには、この3つの要素が揃っていることが重要です。
Step 4:社内体制と担当者を決める
インターンは、担当者個人の善意で回すのではなく、「組織的な受け入れ」として仕組み化することが成功のポイントです。
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受け入れ責任者(経営層や人事)
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実務指導担当(現場社員)
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総務サポート(備品や昼食手配など)
担当者は1人に固定せず、チームでフォローし合える体制にすると負担が分散します。また、事前に社内ミーティングで「学生に伝えたい自社の魅力」などを共有しておくと、社員のモチベーションも高まります。
Step 5:受け入れ前の学生対応
インターン当日の満足度は、事前準備でほぼ決まります。
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事前にメールで案内(持ち物、服装、集合時間など)
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簡単な自己紹介シートの提出を依頼(緊張感をほぐす)
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受け入れ初日はオリエンテーションを丁寧に実施
インターン初日は「第一印象」がすべて。会社の理念や働く人の雰囲気が伝わるように、笑顔と親しみのある受け入れを心がけましょう。
Step 6:実施中の運営と日々のフォロー
インターン期間中は「毎日の振り返り」が鍵です。
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日報を提出してもらい、社員が簡単にコメント
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雑談タイムで悩みや疑問を拾う
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写真や記録を残し、後で会社の広報素材に活用
また、困ったことが起きた場合の「対応フロー」も決めておきましょう。例:
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担当者が不在になった場合の代理者
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緊急連絡先の一覧化(怪我・体調不良など)
Step 7:最終日の振り返りと今後につなげる工夫
最終日は、インターンの学びを「自分の言葉」で振り返る時間にしましょう。
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成果発表(小規模でも構いません)
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指導社員からのフィードバック
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修了証の授与(記念に残る)
さらに、次のステップとして:
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SNSでの紹介(本人了承の上)
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希望者には会社説明会や座談会の案内
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アルバイト採用、インターン継続などの選択肢も提示
「また来たい」と思えるフィナーレが、次の採用にも繋がります。
まとめ:インターン準備は、“会社の仕組み”の整理そのもの
インターンシップ受け入れの準備は、単なる“受け入れ対応”ではありません。
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自社の業務を見直す
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社員の指導力を磨く
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若手育成の文化をつくる
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社外へのブランド力を高める
これらすべてが、インターンという入口から生まれるのです。
最初は1名・1日からでも構いません。小さな一歩から始めた企業が、地域における人材輩出拠点として評価されていくことも少なくありません。
次回は、インターンを通じて実際に改善された業務の事例や、受け入れが社内にどう変化をもたらしたかについて、実例を交えてご紹介します。
▼ 第4回:「業務改善・マニュアル化のチャンス!学生に教える過程が“組織力”を強くする」