その食事手当、大丈夫? 社員想いが“リスク”に変わる前に知っておきたい制度の話

杉山 晃浩

第1章:社員想いのつもりが、思わぬ落とし穴に…

「物価が上がって、昼ごはん代もバカにならんらしいな」

最近、社員のそんなつぶやきが気になった田中社長。地元で20名ほどの従業員を抱える製造業の会社を経営しています。

「頑張ってくれてる社員に、昼食代くらいは会社が出してやりたい」

社員思いの田中社長は、月5,000円の「食事手当」を支給することに決めました。現場は大喜び。良いことをした気分でいっぱいでした。

ところが数ヶ月後、顧問税理士との面談でこんなことを言われます。

「その食事手当、給与として全額課税になります。しかも社会保険料も増えますよ」
「え…?これって福利厚生じゃないんですか?」

そう、「善意で出した食事手当」が、結果的に“税と社保のリスク”になるケースは珍しくないのです。


第2章:「食事手当」は税法・社保・労基法でこんなに扱いが違う

社員のためを思った支給でも、実は「どう支給するか」によって税務や社会保険の扱いが大きく変わります。

■ 現物支給(弁当や食堂方式)の場合

  • 社員1人あたり 月3,500円以内の補助であれば、所得税・住民税とも非課税

  • 会社が食費の半額以上を負担していることが条件

■ 現金支給(給与と一緒に渡す食事手当)の場合

  • 全額が給与扱い

  • 所得税・住民税はもちろん、社会保険料の計算にも含まれます

  • 残業代の計算基礎にも含まれ、割増賃金の支給漏れリスク

さらに、「規程がないまま運用していませんか?」
これはとても重要なポイントです。

社内に「食事手当に関するルール(規程)」がなければ、たとえ現物支給でも、調査時に「給与と同じもの」と見なされる恐れが出てきます。


第3章:「正社員だけ」はもうNG?同一労働同一賃金にも注意

近年、働き方改革により強調されるようになった「同一労働同一賃金」。

  • 「正社員には食事手当があるけど、パートにはない」

  • 「契約社員や派遣社員は対象外」

このような運用をしていると、不合理な待遇差として労基署や労働局からの是正勧告を受ける可能性があります。

福利厚生であっても、「その人の雇用形態」や「業務内容」に応じて、合理的な理由がなければ差をつけることは難しくなっているのです。

一方で、うまく制度設計をすれば、全社員にとって「この会社にいてよかった」と思える環境を作ることも可能です。


第4章:じゃあ、どうすればいい?実践的な対応策まとめ

「リスクは避けたい。でも社員に喜ばれる制度も作りたい」
そんな企業が取り入れている、現実的な方法を3つご紹介します。


✅ 方法①:現物支給で“非課税枠”を活かす

  • 弁当業者と会社が契約

  • 社員は実費の一部のみ負担、会社が残りを補助

  • 月額3,500円以内なら、税も社保もかからずに済む

これは会社・社員の双方にメリットがある手段です。しかも「現物支給」なので給与課税の対象外にもなりやすい。


✅ 方法②:残業時の軽食は「福利厚生費」で処理できる可能性あり

  • 緊急対応・突発業務での残業時に、軽食を無償で提供

  • 社員全体への提供であれば、「福利厚生費」として経費処理可

  • 給与扱いとならない可能性が高い

ただし、明確なルールや実態が必要です。適用には注意も必要です。


✅ 方法③:すべての前提として、“ルール(規程)”の整備が不可欠

  • どの手当を誰に、どう支給するのか

  • 金額や方法、非課税要件に合致しているか

  • 同一労働同一賃金や社内公平性も考慮できているか

これらを明文化した「食事手当規程」を設けておくことで、税務・社保・労基法すべてに説明がつく制度になります。


第5章:「会社の善意」を制度に変える、たった一つの方法

社員想いの支援は、とても素晴らしいことです。

けれど、善意だけでは「制度」になりません。
せっかく支給しているのに、課税・社保負担が増える。
社員から「他の人と差がある」と思われる。
それでは、誰も幸せになれないのです。

『食事手当規程』を整備しましょう。

明確なルールがあるだけで、調査対応もラクになりますし、社員にも安心してもらえます。


第6章:専門家に相談するという選択肢

規程があるだけで、会社も社員も守れます。
経営者の優しさを「制度」としてカタチにしませんか?

オフィススギヤマでは、企業ごとの実情に合わせた食事手当規程の作成、非課税制度の設計、同一労働同一賃金のチェックなども対応しています。

✅「規程がないまま運用していませんか?」
→ 税務署・労基署の調査で困る前に、今すぐチェックを。

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