副業が会社の地雷になる!? 企業が絶対に避けるべき“危険スキーム”7選
杉山 晃浩
第1章|雇用と外注の“二重契約”スキーム(擬装副業)
【スキーム概要】 所定労働時間中は正社員として勤務し、定時以降は“外注”として同じ業務を請け負う形式。
【問題点】 このモデルは、社会保険料や税負担を軽減するための工夫として提案されたこともありますが、厚生労働省のガイドラインでは明確に否定されています。
実態が雇用であるのに、形式的に業務委託に切り替えるのは「偽装請負」と判断されやすく、労働基準法・労災保険法・社会保険法違反に問われるリスクがあります。
【企業リスク】
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社会保険料未納の指摘(遡及請求あり)
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労災が発生した場合に給付対象外、もしくは企業責任拡大
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請負契約の無効化 → 未払い賃金請求の対象に
第2章|同業他社で働く“競業副業”スキーム
【スキーム概要】 本業と同じ業種・類似業務を、他社の副業で行うケース。 たとえば、ITエンジニアが就業時間外に別の受託開発会社で働くなど。
【問題点】 機密情報の漏洩や、競合先へのノウハウ流出、取引先の横流しといったリスクが現実に発生します。
就業規則で「競業禁止」「副業許可制」を明記していない場合、後から問題化しても企業が対処しにくくなります。
【企業リスク】
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営業秘密漏洩での損害
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顧客情報・人材引き抜き
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競業避止義務違反を問えない(ルールがなければ懲戒困難)
第3章|本業の“持ち帰り業務”を副業として請け負うスキーム
【スキーム概要】 会社の仕事の一部を、定時後に業務委託契約で再発注するケース。 たとえば、日中に担当した設計作業の続きを“副業”として夜に自宅で進めるなど。
【問題点】 形式上は請負でも、実態は完全に会社の業務。契約形態が形骸化しており、脱法的な人件費削減とみなされる可能性があります。
【企業リスク】
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二重払い・未払賃金の指摘
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請負契約が労働契約と認定される(労災・社保適用)
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社内コンプライアンス違反の温床に
第4章|副業で“企業名とセットで炎上”スキーム
【スキーム概要】 社員が個人活動としてSNS配信やライバー、風俗、アダルト系などに関与。 副業自体よりも、それが企業名や本業と関連付けられることが問題。
【問題点】 炎上リスクが高く、企業イメージを大きく損ねる事態に。 副業を許容する際の線引き(信頼・信用・社会常識)が不可欠です。
【企業リスク】
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ネット炎上 → メディア報道 → 信用毀損
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採用活動への悪影響
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顧客・取引先からのクレーム
第5章|社員が“黙ってやってる”無申告副業スキーム
【スキーム概要】 会社に報告せず、隠れて副業しているケース。 深夜アルバイト、デリバリー、YouTuber、せどりなど実態は多様。
【問題点】 健康管理、労働時間通算、割増賃金の責任、労災などの管理が一切できず、企業にとっては「爆弾」を抱えるような状態。
【企業リスク】
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本業で過労死 → 労災認定+損害賠償請求
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社員の疲労による業務ミス・事故の発生
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管理責任を果たしていないと見なされる
第6章|名ばかり外注化“社内副業”スキーム
【スキーム概要】 一部業務を外注化して“社内メンバー”に発注。 しかし、実態は指揮命令の下で行われ、明確な業務分離がされていない。
【問題点】 「フリーランス風労働者」として処理しているが、労働実態が変わらなければ違法。厚労省の指導対象にもなり得る。
【企業リスク】
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偽装請負による労基署からの是正指導
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雇用保険・社保加入逃れとされる
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契約解除時に訴訟トラブルに発展
第7章|AI活用による“無責任副業”スキーム(最新型)
【スキーム概要】 社員がChatGPTなどを活用して副業でライティングや設計業務を受注。品質確認や責任所在が曖昧なまま納品。
【問題点】 著作権・品質問題に加え、社内PCや業務ノウハウの流用といった情報漏洩リスクも浮上。AI時代特有の“見えない副業”として注意。
【企業リスク】
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著作権侵害・品質不良トラブル
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情報漏洩・セキュリティ事故
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本業のPC・リソースを私的流用
まとめ|会社を守るのは“想定と整備”の力
副業=悪ではありません。 しかし、スキームの構造とリスクを“会社として知らない・把握していない”状態こそが最も危険です。
副業容認の前に、まずは
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就業規則でのルール整備
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副業申告の仕組み
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競業・健康・労働時間に関するリスク評価
こうした「見えないリスクの見える化」が会社を守ります。