あなたの親を守れるか? プラチナNISAという“甘いワナ”にご用心

杉山 晃浩

第1章:制度は“支援”か、それとも“囲い込み”か?──静かに進むプラチナNISAとは

2026年4月からの導入が検討されている「プラチナNISA」。 その概要は、65歳以上の高齢者を対象とした新たな非課税制度で、毎月分配型投資信託やJ-REIT(不動産投資信託)への投資に対して、一定額の分配金や譲渡益が非課税になるという仕組みです。

一見、ありがたい制度に思えるかもしれません。 「年金だけでは不安な高齢者に、投資でプラスの収入を得てもらおう」という説明に、多くの人が納得しそうになります。

しかし、その導入経緯や内容を冷静に見つめると、国が進める「貯蓄から投資へ」の次のステージ──“取り崩し促進”という政策意図が透けて見えます。 国は「高齢者の現預金」に目をつけ、金融商品という形で回収にかかっているようにも映るのです。


第2章:「毎月お小遣いがもらえる」その裏にある“本当のカラクリ”

プラチナNISAの最大の売り文句は「毎月、分配金という形で収入が得られる」という点です。 確かに、高齢者にとっては定期的にお金が入ることは安心につながるかもしれません。

しかし、この分配金、実は必ずしも運用益ではありません。

いわゆる「タコ足配当」と呼ばれる、元本を削って分配金を出す仕組みの商品も少なくありません。 つまり、見かけ上の収入があっても、資産は確実に減っていく──。 このことに気づかないまま、長期間運用を続けてしまうと、 「気づいたときには手元資産が大きく目減りしていた」という事態になりかねません。

人気YouTubeチャンネルで知られる「脱税理士」スガワラ先生も、 このプラチナNISAについて「高齢者を狙った制度であり、注意が必要」と警鐘を鳴らしています。


第3章:高齢者をターゲットにした“高コスト投信”の再販ルートか?

プラチナNISAの対象となる投資信託の多くは、毎月分配型です。 これらの商品は、手数料や信託報酬が高く、金融機関にとって非常に“売りやすい”商品群。

かつて問題視された「高齢者向け高コスト投信」が再び表舞台に出てくるきっかけになるのでは? という声も出ています。

制度によって、売りやすく、説明しやすく、非課税という“免罪符”まで得た高コスト投信。 本当にそれが高齢者にとって必要なものなのでしょうか。


第4章:「非課税」に騙されるな──“税制強化”のステルスな現実

プラチナNISAは「分配金が非課税になります」と強調されますが、 今の日本は“見えにくい増税”が進んでいる社会です。

たとえば、社会保険料の負担増、消費税の実質負担拡大、住民税の控除縮小など、 現役世代・高齢者世代を問わず、静かに生活を圧迫する施策が増えています。

その中で、プラチナNISAだけが「甘い制度」であるはずがあるでしょうか? これは、非課税という飴を見せておきながら、 実際には高齢者の資産を“自発的に”投資市場に流入させるための制度だと見ておくべきです。


第5章:あなたの親が「相談なしに口座を開設」する前にできること

高齢者が金融商品に手を出すとき、家族に相談しないケースは意外と多いものです。

「銀行の人が言うなら大丈夫だと思った」 「毎月お金が入るって言われたから安心だと思った」

そういった声を何度も耳にしてきました。

家族としてできることは、難しい金融知識を教えることではありません。 まずは、

  • 「プラチナNISAって知ってる?」

  • 「毎月お金がもらえるって話、本当に大丈夫なのかな?」 といった声かけから始めることです。

また、金融機関から勧誘された場合の対応フローや、 疑問があったら一度家族に相談するというルールを作っておくのも有効です。


第6章:選挙が変えるかもしれない“流れ”──今こそ声を上げるタイミング

制度というものは、常に「民意」の影響を受けます。 2025年の参院選挙は、まさにその分岐点。

ここで、現状の「増税路線」や「資産活用政策」に疑問を感じた有権者が 声を上げ、行動すれば、制度導入を見直す契機になるかもしれません。

「親の資産を守る」ことは、「未来の自分を守る」ことにも直結しています。 「政治に無関心でいられても、無関係ではいられない」── そんな時代の中で、私たちは何を選ぶのか。


結び:

プラチナNISAは、表面的には「優しい制度」に見えます。 しかし、その本質を見抜けば、「甘いワナ」に他なりません。

大切な家族が、知らずに損をすることがないように。 情報を共有し、対話を重ね、そして必要なときに声をあげる。 その小さな積み重ねこそが、家族と社会を守る一歩になるのです。

※参考記事 プラチナNISA構想で「毎月分配型」投信に焦点(2025年5月19日:日本経済新聞)

 

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