その夏休み、運用ルール大丈夫ですか? 人事・労務が押さえるべき7つのポイント
杉山 晃浩
「うちは昔からお盆の時期に“夏休み”を与えてるから、大丈夫でしょ」
──本当にそうでしょうか?
夏季休暇(いわゆる“夏休み”)は法律で定められた制度ではなく、会社ごとに運用方法が異なります。だからこそ、**「毎年なんとなく与えている」**というケースでは、思わぬトラブルを招くことも。
今回は、人事・労務担当者が押さえるべき「夏季休暇の7つのチェックポイント」を解説します。求人票や就業規則にも関係する大切なテーマですので、ぜひご確認ください。
【1】夏季休暇は「休日」か「休暇」か?分類で対応が変わる!
まず大前提として、夏季休暇は「休日」ではなく「休暇」として取り扱われるのが一般的です。
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休日:会社があらかじめ「この日は働かなくていい」と定めた日(例:日曜、祝日)
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休暇:働く予定だった日を“特別に休める”制度(例:年次有給休暇、慶弔休暇、夏季休暇)
つまり、「夏季休暇」は休暇であり、年間休日数には含められないのが原則です。
これを誤って「年間休日120日(うち夏季休暇3日含む)」と求人票に書いてしまうと、行政指導や労働条件の誤認トラブルにつながります。
✅ ポイント:就業規則で「お盆期間を休日」と定めていれば、休日として扱えるケースもあります。
【2】夏季休暇を“有給”で与える必要はある?
法律上、会社に夏季休暇を「有給」で与える義務はありません。
つまり、無給で与えても違法ではないのです。
しかし、実務では「有給」扱いで付与している企業も多く、それが当たり前と思っている社員も少なくありません。
注意点としては、
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有給か無給かは明確にルール化
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給与明細や就業規則で根拠がわかるようにする
ということ。曖昧な運用は後々のトラブルにつながります。
【3】年次有給休暇を「夏休み」として使わせるのはOK?
「夏季休暇は年休を使ってね」という運用は、労働者の同意があれば可能です。
ただし注意すべきは、“強制”になっていないかどうか。
会社側が一方的に「この日を年休として処理する」とするのは原則NG。
どうしても一斉に年休を取得させたい場合は、「計画的付与制度(年5日を超える部分について)」を就業規則と労使協定で整備しておく必要があります。
【4】一斉取得制?交代取得制?業務に応じた運用設計の工夫
お盆に会社を丸ごと止めて一斉に夏季休暇を取らせるのか、それとも交代で取らせるのか。これは業種・業務形態によって大きく分かれます。
一斉取得のメリット:
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計画が立てやすく、公平感がある
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工場・建設業などでは通例
一斉取得のデメリット:
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顧客対応・納品対応が困難になる
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緊急時の体制が崩れる
交代取得のメリット:
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業務を止めずに運用できる
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自由度が高く、社員に好まれやすい
交代取得のデメリット:
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調整が煩雑になる
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業務負担が偏る場合がある
✅ ルール例:「7月~9月の間に3日間取得すること」といった期間指定+取得義務づけが有効です。
【5】就業規則に夏季休暇の規定はあるか?
「なんとなく与えてる」「社内の慣行でやってるから」という企業は要注意です。
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誰が対象か(正社員のみ?パートも含む?)
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何日与えるか、有給か無給か
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取得時期や方法
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計画的付与とするのか、自由取得とするのか
こうした点を就業規則や社内規定に明文化しておかないと、社員からの問い合わせや不満、平等性を巡るトラブルの原因になります。
【6】求人票・労働条件通知書に正しく反映しているか?
夏季休暇を「休日」と誤って記載してしまうケースは非常に多く、ハローワークや求人媒体でも指導対象となり得ます。
正しい書き方の例:
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年間休日数:110日(土日祝・年末年始含む)
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その他休暇:夏季休暇3日(特別休暇)、年次有給休暇、慶弔休暇あり
このように、休日と休暇は分けて記載するのが基本ルールです。
【7】夏季休暇中の緊急対応・連絡体制は整っているか?
全員が夏休みに入ってしまい、電話もメールも誰も対応できない──そんな状態になっていませんか?
特に一斉取得制度を採用している企業では、
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緊急連絡先の設定
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当番制での社用携帯所持
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クレーム対応フローの明文化
などが求められます。
✅ BCP(事業継続計画)の観点からも、「誰が・どう対応するか」は決めておきましょう。
おわりに:
夏季休暇は法律で定められていない自由な制度ですが、だからこそ運用次第で“差がつく”部分でもあります。
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就業規則を整備する
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求人票や労働条件通知書に正確に記載する
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社員への説明責任を果たす
これらを実行することで、採用の場でも信頼を得やすくなり、働きやすい職場づくりにもつながります。
「うちは昔からこうだから…」という慣習に頼らず、一度、自社の夏季休暇のルールを見直してみませんか?
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