「人的資本開示」が当たり前になる前に──中小企業が今すぐ始めるべき理由
杉山 晃浩
第1章|人的資本ってそもそも何?
「人的資本(Human Capital)」という言葉をご存じでしょうか?
簡単に言えば、**人材が持つ“経済的価値”**のことです。知識や経験、スキル、健康状態、さらにはやる気やエンゲージメントまでを含めて、「人の中にある会社の資本」と捉える考え方です。
かつては、「設備」や「土地」などの物的資本こそが会社の強みとされていました。しかし現代では、モノより人。特に中小企業では、「この人がいるから成り立っている」といった構造も珍しくありません。
つまり、人的資本は会社の価値そのものとも言える存在になってきているのです。
第2章|なぜ今、人的資本が注目されているのか?
2023年、日本の上場企業に対して「人的資本の情報開示」が義務化されました。有価証券報告書において、次のような項目の開示が求められています。
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女性管理職比率
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男女間賃金格差
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育児休業取得率
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人材育成方針とその成果指標
これは、投資家が企業を評価する際に「人をどう育てているか」「働きがいのある会社か」を重要視するようになってきた証拠です。いわゆる**ESG投資(環境・社会・ガバナンス)**の「S(社会)」において、人的資本は最重要項目なのです。
加えて、働き手である若者も「人を大切にしている会社」を選ぶ傾向が強くなっています。採用・資金調達・経営評価──あらゆる面で、人的資本は“見える化”が求められる時代に入ったのです。
第3章|開示義務は中小企業にもやがて来る
「うちは上場していないから関係ないよ」──そう思う方も多いでしょう。しかし、この“開示の波”は確実に中小企業にも及んできます。
たとえば、
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上場企業との取引がある場合、サプライチェーン管理の一環として、人的資本への取り組み状況の提出を求められるケースが増加しています。
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**金融機関による「非財務情報評価」**が進んでおり、融資審査に人的資本データが関係してくる可能性も出ています。
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補助金の申請要件として、「女性活躍推進の取組」や「離職率の記録」が必要な場面も増えてきました。
つまり、人的資本の整備は「任意」ではなく「実質的な前提条件」になりつつあるのです。
第4章|今から始めることで得られる“先行者メリット”
「将来的に義務になるから」ではなく、今から整備を始めることで得られるメリットも見逃せません。
メリット1|採用力の強化
人手不足が深刻な今、「育ててくれる会社」「長く働ける会社」であることを発信できれば、応募数・質ともに改善します。
メリット2|社員の定着と成長
人材育成の方針を言語化し、制度として回すことで、社員の納得感と成長意欲が高まり、離職率も下がります。
メリット3|金融・行政からの評価アップ
整備された人的資本データは、金融機関や自治体からの信頼にもつながり、融資や補助金の加点要素になることも。
メリット4|企業価値の向上とブランディング
「人を大事にしている企業」としてのブランド構築は、社員・顧客・地域社会すべてにプラスの影響を与えます。
第5章|中小企業でもできる!人的資本の整備ステップ
人的資本経営は、何も難しいことではありません。次のようなステップで段階的に進めていきましょう。
ステップ1|「人」に対する経営方針を言葉にする
「どんな人を育てたいか」「会社として人をどう大切にするか」を、社長や役員の言葉で明文化することから始めます。
ステップ2|数値で現状を“見える化”する
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離職率
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年間の研修時間
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育児休業取得率
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賃金の男女差
など、簡単なExcelで集計できる指標を毎年追いかけてみましょう。
ステップ3|制度・評価・育成体制を整える
評価制度やキャリアパスの整備、OJT・OFF-JTの再設計など、「育てる仕組み」をつくっていきます。
ステップ4|外部への発信を始める
採用ページ、会社案内、求人票などに「育成方針」や「人への投資」を明記すれば、対外的な信頼感が増します。
第6章|社労士ができる人的資本支援とは?
人的資本は、まさに社労士が専門性を発揮できる領域です。
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人的資本方針の策定支援
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離職率などのKPI整理と分析
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人事評価・キャリア制度の設計
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教育研修体制の設計と助成金提案
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社内ルールや就業規則の整備
中小企業の現実に合わせた「できる範囲」での人的資本整備を一緒に伴走できる存在として、社労士を頼っていただきたいところです。
終章|“選ばれる会社”になるために、今こそ一歩を踏み出そう
人的資本経営は、一部の大企業の話ではありません。
**「人が辞めない会社」「人が育つ会社」「人に選ばれる会社」**を目指すなら、企業規模にかかわらず、今から取り組む価値があります。
人的資本の整備は、すぐに結果が出るものではありません。だからこそ、先に始めた企業が圧倒的に有利です。
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