その遺産分割、本当に大丈夫? “争族”を防ぐために今すべき2つの備え
杉山 晃浩
■ 第1章:「うちは大丈夫」が一番あぶない?
「うちは仲がいいから、相続でもめるなんてないよ」
「財産もそんなにないし、大きな問題にはならないはず」
──そんなふうに思っている方ほど、実は注意が必要です。
最近では、家族の仲が良かったはずなのに、相続をきっかけにケンカや絶縁状態になるケースが増えています。
これをよく**「争族(そうぞく)」**と呼びます。
遺産分けをめぐる争いは、お金持ちだけの話ではありません。
むしろ一般の家庭のほうが「相続の準備がされていない」ことが多く、もめやすいのです。
■ 第2章:中小企業の社長や家に不動産がある人は特に要注意!
とくに以下のような方は、相続でもめる可能性が高くなります:
-
自営業や会社を経営している(自社株や経営権がある)
-
家や土地などの不動産がある(分けにくい資産)
-
子どもが複数人いる(全員が納得するのが難しい)
-
相続人同士の関係に温度差がある(たとえば再婚・兄弟仲・遠方に住んでいる など)
たとえば会社の株を全部長男に渡すと決めていても、
次男や長女が「自分はもらえるはずだった」と不満に思えば、そこから感情のもつれが生まれます。
また、家や土地を誰が相続するかでケンカになるケースもよくあります。
「住んでるのは兄だけど、私にも相続する権利はあるでしょ?」という主張です。
■ 第3章:もめないために、今すぐできる“2つの備え”
相続をスムーズに進めるために、私たちが特におすすめしている備えが2つあります。
それは…
✅【1】法的にしっかり効力がある「遺言書」
✅【2】想いを伝える「エンディングノート」
この2つをきちんと準備しておけば、遺産分割がスムーズになり、
家族間の争いをかなりの確率で防ぐことができます。
■ 【1】遺言書:あなたの“本当の意志”をしっかり形に残す
遺言書(ゆいごんしょ)は、
「私が死んだあと、この財産は誰にどう渡すのか」を書き残すための正式な書類です。
これがあると、遺族は迷わずに手続きを進めることができます。
逆にこれがないと、相続人たちで“誰が何をもらうか”をゼロから話し合わなければならず、
意見の食い違いや争いが起きやすくなります。
また、遺言書には「法的な力」があります。
つまり、「これは長男に全部渡す」と書いておけば、他の人が「いや、私も欲しい」と言っても基本的には通りません(※ただし“遺留分”など一部の例外あり)。
● 公正証書遺言がおすすめです
遺言書にはいくつかの種類がありますが、特におすすめなのが**「公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)」**です。
これは公証人(法律のプロ)に作ってもらう遺言で、あとから「偽造だ」と言われる心配がありません。
また、家庭裁判所での検認手続きも不要なので、手続きが早くスムーズです。
● 遺言執行者(いごんしっこうしゃ)も決めましょう
「遺言を書いて終わり」ではなく、誰がその内容を実行するか(銀行や不動産の名義変更など)も重要です。
そこで必要なのが「遺言執行者」という存在。
専門知識が必要な手続きも多いため、行政書士や司法書士などの専門家にお願いするのが安心です。
■ 【2】エンディングノート:家族に“想い”を伝えるやさしい道具
エンディングノートとは、
「自分の人生のまとめ」「家族への手紙」「自分の考えを伝えるノート」のようなものです。
財産のこと、希望する医療のこと、お葬式のこと、そして家族へのメッセージなど、自由に書くことができます。
● 法的な効力はないけれど、とても大きな意味がある
エンディングノートは遺言書とちがって、法律的な力(法的拘束力)はありません。
でも、家族が気持ちを整理するのにとても役立つツールです。
たとえば遺言では「長男に会社を任せる」と書いてあっても、
他の兄弟が「なんで?」と思うかもしれません。
でもエンディングノートに、
「長男は10年にわたり一緒に会社を育ててくれた。安心して任せられると思っている」
と書いてあったら、納得する気持ちが生まれます。
● こんなふうに活用できます
-
財産一覧をまとめておく(家族が探しやすくなる)
-
相続人へのメッセージ(誰かを責めるのではなく、思いを伝える)
-
自分の人生を振り返る(自分自身の気づきにもつながる)
■ 第4章:遺言書とエンディングノート、両方そろって“安心”が生まれる
どちらか一方では不十分です。
書類 | 目的 | 強み |
---|---|---|
遺言書 | 誰に何を渡すか明確にする | 法的に強い指示ができる |
エンディングノート | 想いや背景を伝える | 気持ちの部分で家族が納得しやすい |
✅「遺言書で“決めて”、エンディングノートで“伝える”」
この両方があることで、家族は安心して手続きを進めることができます。◆お勧めエンディングノート3選◆
一番わかりやすい エンディングノート(リベラル社)
書いて安心 エンディングノート(主婦の友社)
父よ!母よ!これだけは書き残してくれノート(自分図鑑合同会社)
■ 第5章:専門家と一緒に進めれば、もっと安心です
「自分で全部やるのは不安…」「ちゃんとできているか確認したい」
そう思われた方は、専門家に相談することをおすすめします。
📌 行政書士法人杉山総合法務では…
-
遺言書の作成サポート(公正証書)
-
遺言執行者の引き受け
-
相続発生後の手続き代行・財産管理支援
-
エンディングノートの書き方支援
など、遺産分割をめぐるトラブルを未然に防ぐための実務的な支援を行っています。
■ 最後に:準備するのは“今”です
相続は、いつ起きるかわかりません。
だからこそ、「元気なうち」「問題がないうち」に準備をするのが一番大切です。
家族のために、そして会社の未来のために──
「書くこと」「託すこと」から、あなたの相続対策をはじめてみませんか?