社長の退職金が相続資金になる! 今こそ考えたい役員退職金の設計法
杉山 晃浩
■ 第1章:なぜ社長の退職金が“相続資金”になるのか?
社長の退職金は、会社から社長個人へ渡されるお金です。
これは社長が引退するときだけでなく、万が一の際には**「死亡退職金」**として遺族に渡されます。
この死亡退職金には、相続税において**「500万円 × 法定相続人の人数」まで非課税枠がある**ため、
遺族にとって相続資金(納税や生活費の原資)となる強力な財産移転手段になります。
しかし、退職金や死亡退職金の原資は、準備をしていなければ出てきません。
「会社が黒字だから大丈夫」と思っていても、いざという時には現金不足で十分な金額を払えないことも。
だからこそ、社長の退職金は計画的に積み立てるべき資金なのです。
■ 第2章:資金不足は“争族”を引き起こす
相続のトラブルで多いのが、**「遺産はあるけど現金がない」**というケースです。
たとえば、家や土地、自社株はあるけれど、納税や代償金を払うための現金が足りないと、
不動産を急いで売ったり、会社を圧迫したりすることがあります。
また、社長が突然亡くなった場合に、
**「死亡退職金が支払われなかったため、遺族の生活が苦しくなった」**という話もよく聞きます。
資金準備が不十分な相続は“争族”の火種になります。
だからこそ、会社のお金を「社長の退職金」という形で積み立てる仕組みづくりが重要です。
■ 第3章:社長の退職金を賢く積み立てる2つの方法
退職金を効率的に準備するためには、
**「生命保険」と「企業型確定拠出年金(企業型DC)」**という2つの武器を組み合わせるのがおすすめです。
【1】生命保険で退職金と死亡退職金の原資をつくる
会社名義で生命保険に加入し、退職時または死亡時に解約返戻金や保険金を受け取る方法です。
逓増定期保険や長期平準定期保険などがよく使われます。
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退職時 → 解約返戻金を受け取り、退職金の原資にする
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万一の時 → 死亡退職金として遺族に現金を渡す
この保険金は相続税の非課税枠(500万円 × 法定相続人)を活用できるため、
相続資金を効率よく準備できるのが強みです。
【2】企業型確定拠出年金(企業型DC)で積み立て運用
もう一つの強力な手法が、**「企業型確定拠出年金(企業型DC)」**です。
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会社が掛金を拠出(社長は満額:5.5万円/月を積み立てる)
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掛金は全額会社の経費(損金)として計上できる
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社長個人の退職金口座として運用され、運用益は非課税
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受け取るときは退職所得控除が適用され、税負担を大きく減らせる
さらに、60歳以降に企業型DCを一時金として受け取れば、
退職所得控除をもう一度使える可能性があり、税制メリットは非常に大きいのです。
■ 第4章:出口戦略を考えることで“キャッシュを最大化”する
退職金や企業型DCを受け取る際には、
**「どう受け取るか」**で手元に残るお金が大きく変わります。
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一時金で受け取るのか?
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年金形式で分割して受け取るのか?
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他の退職金や保険の受取時期とどう組み合わせるのか?
ここで重要になるのが、出口戦略を持つFP(ファイナンシャルプランナー)の存在です。
税金・社会保険料・資産運用をトータルで見渡し、
**「最もキャッシュが残る受け取り方」**を設計することが可能です。
■ 第5章:役員退職弔慰金規程で“遺族に安心を残す”
退職金の積立だけでなく、
**「役員退職弔慰金規程」**を整備することも欠かせません。
これは、社長や役員が亡くなったときに、
会社から遺族へ死亡退職金や弔慰金を支払うルールを明文化したものです。
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いくら支払うか
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誰に渡すか
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税務上の取り扱いを明確化
これらを決めておくことで、遺族が迷わずお金を受け取れると同時に、
会社側も税務リスクを回避できます。
社労士として、この規程の作成・整備は強力なサポートポイントです。
■ 第6章:今すぐできるアクションプラン
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現状の退職金制度と資産の確認
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企業型DCの導入検討(社長は5.5万円/月を満額積立)
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生命保険を組み合わせた資金計画
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FP・社労士・税理士との三位一体で出口戦略を設計
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役員退職弔慰金規程を作成し、死亡退職金をルール化
この5つを進めるだけで、
**「会社も家族も守るお金の仕組み」**が完成します。
■ 第7章:まとめ──社長の退職金は“未来への投資”
社長の退職金は、自分のためだけでなく、家族のため、会社の未来のための資金です。
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生命保険で“いざ”の時の現金を確保
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企業型DCで“老後”と“相続”両方に強い仕組みを構築
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役員退職弔慰金規程で遺族の生活基盤を守る
この3つを組み合わせた設計は、
**「社長にしかできない最後の経営判断」**とも言えます。
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