退職代行の裏側、全部暴きます──弁護士しかできない“アレ”の話
杉山 晃浩
第1章:退職代行って「魔法のサービス」なの?
最近よく耳にする「退職代行」。
LINEひとつで会社を辞められて、有給もバッチリ、会社とのやりとりゼロ…そんな夢のようなサービスだと思っていませんか?
確かに、ブラック企業から抜け出せない人にとって、退職代行は一筋の光です。
でも本当に「全部お任せ」でトラブルなく辞められるのでしょうか?
その答えは──NOかもしれません。
実は退職代行には、法律上の“越えてはいけないライン”があるのです。
第2章:弁護士法第72条とは?退職代行との関係
この法律、一般の方にはあまりなじみがないかもしれません。
ですが、退職代行業者にとっては非常に重要な「ボーダーライン」です。
● 弁護士法第72条(ざっくり解説)
弁護士でない者が報酬を得て法律事務を行うことは禁止されています。
要するに、弁護士資格のない人が「法律に関する交渉」や「代理行為」を仕事にしてはいけないということ。
これを知らずに、退職代行業者に“なんでもお願い”してしまうと、違法行為に巻き込まれる可能性すらあるのです。
第3章:“アレ”は弁護士しかできません
退職代行の現場では、さまざまな対応が求められます。
その中で、**弁護士しかできない“アレ”**とは──そう、「交渉」です。
たとえば、こんなシーンを思い浮かべてください。
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「有給休暇を使いたいです」とお願いしたい
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「未払いの残業代をもらいたい」
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「損害賠償なんて脅されて困ってる」
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「会社からの連絡をすべてシャットアウトしたい」
これらすべて、「ただ伝える」では済まず、法律上の交渉が必要になります。
つまり、弁護士でない業者はそもそも対応してはいけないのです。
第4章:業者の“抜け道”──労働組合との提携とその終焉
過去には、非弁問題を回避するために、「退職代行業者が自ら労働組合を作って提携する」という形が流行しました。
一見すると合法に見えましたが──2024年11月、東京弁護士会がこの手法に公式NGを出しました。
「実質的に業者が交渉しているなら、それは非弁に当たる可能性が高い」と。
この見解を受けて、2025年6月以降、大手退職代行業者が次々と「交渉できます」との記載を削除。
表向きは変わっていないように見えて、業界の地殻変動が起きていたのです。
第5章:トラブル事例に学ぶ「裏切られた退職代行」
実際にあったこんな事例をご紹介します。
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会社に伝えただけで業者は終了
→ その後、会社から自宅に何度も電話&訪問。「本人に話さないと退職させない」と言われ、結局本人が対応。 -
有給休暇は使えませんと会社に言われた
→ 業者に相談しても「弁護士にご相談を」と言われ、追加で弁護士費用が発生。 -
退職金が支払われない・源泉徴収票が届かない
→ 業者は「交渉できません」で音信不通に。
このように、「退職代行に頼んだから安心」ではなくなってきているのです。
第6章:じゃあどうすればいいの?失敗しないための選び方
退職代行を使うなら、以下のポイントを確認してください。
✅ チェックリスト
チェック項目 | Yes/No |
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「できること・できないこと」を明確に説明してくれるか? | ✅ |
弁護士資格を持つ担当者がいるか? | ✅ |
有給や損害賠償などの交渉に対応できるか?(弁護士か?) | ✅ |
LINEやメールの返信が誠実か? | ✅ |
実績・口コミが不自然に良すぎないか? | ✅ |
業者の中には「全部できます!」と曖昧なまま受任し、トラブル時には「弁護士にご相談を」と丸投げする例もあります。
最初から弁護士に依頼する方が、かえって安心・安全・安価になることも。
第7章:まとめ──“アレ”が必要になるのは、意外とすぐそこにある
退職代行は、「意思を伝える」だけなら、今でも一定の役割があります。
ですが、その先にトラブルの火種があるなら、対応できるのは弁護士だけです。
あなたの退職が、思わぬ法的トラブルに発展しないように。
そして、会社としても、感情的な対応ではなく、冷静かつ法的に整った対応ができるように──。
**「弁護士しかできないアレ」**が必要になる場面は、あなたのすぐ目の前にあるかもしれません。