【速報】最高裁が「事業場外みなし労働時間制」に新判断!働き方改革時代の労働時間管理はこう変わる

杉山 晃浩

今日のテーマは、ちょっと難しそうに聞こえるけれど、実は私たちみんなの未来の働き方に大きく関わる、とっても大切なニュースです。

2024年4月16日、日本の裁判所のトップである最高裁判所が、ある働き方のルールについて、今までとは少し違う新しい考え方を示しました。それが「事業場外みなし労働時間制」に関する判断です。

「事業場外みなし…」と聞いて、「???」となった人も多いでしょう。大丈夫です!この記事を読めば、このニュースがなぜこんなに注目されているのか、そして私たちの働き方がこれからどう変わっていくのか、きっと分かります。

さっそく、一緒に見ていきましょう!


 

第1章:そもそも「事業場外みなし労働時間制」って何?

 

まずは、この制度の基本的なことを説明します。

「事業場」とは、会社やお店など、働く場所のこと。「事業場外」とは、会社から離れた場所、という意味です。例えば、外回りの営業、出張、最近増えているテレワークや在宅勤務などがこれにあたります。

「みなし労働時間制」の「みなし」は、「~と考える」という意味です。つまり、「実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決めておいた時間を働いたとみなす」という制度なのです。

法律(労働基準法第38条の2)には、こう書かれています。

労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。

簡単に言うと、会社が「従業員がいつ、どこで、どれくらい働いているのか、正確に把握するのが難しい」という場合に、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間(たとえば1日8時間)働いたとみなすことができる、という制度です。

たとえば、東京に本社がある会社で、あなたが福岡に出張して一人で商談をするとします。会社は、あなたが福岡で何時から何時まで商談して、その後に休憩を何分取ったか、正確に知ることができませんよね。こんなときに、この「みなし」のルールが使われることがあります。


 

第2章:なぜ今、この判決が注目されているのか?事件の概要と二審判決

 

今回の裁判は、広島県にある協同組合で「指導員」として働いていた方の訴えから始まりました。

この指導員の方は、主に九州地方の企業を訪問し、外国人技能実習生のサポートをするのが仕事でした。訪問スケジュールは自分で決めることができ、会社から細かく指示されることもありませんでした。

会社は、指導員が月末に提出する「業務日報」で労働時間を把握していると考えていました。この日報には、始業・終業時刻や休憩時間などが書かれていたからです。

裁判では、この指導員さんが「私の働き方は、『労働時間を算定し難い』とは言えない。だから、『みなし労働時間制』は適用されるべきではない」と訴えました。

**二審の裁判所(福岡高等裁判所)**は、指導員さんの主張を認めました。 「業務日報があるんだから、会社は労働時間を把握できるでしょ。もし内容に嘘があったとしても、訪問先の企業に確認すれば分かるんだから、正確性は担保されているはずだ」と考えたのです。

その結果、会社は、この制度を適用せずに、残業代などを支払うよう命じられました。

「日報を提出しているなら、労働時間は分かる」というのは、私たちにとっても分かりやすい考え方ですよね。しかし、この二審の判断を最高裁判所はひっくり返したのです。


 

第3章:最高裁が示した「新判断」の核心とは?判決のポイントを徹底解説

 

最高裁は、二審の判決を**「おかしい」**と判断し、もう一度審理をやり直すように命じました。 この最高裁の判断こそ、今回のニュースの最も重要なポイントです。

最高裁が指摘したことは、たった一つ。

「業務日報の正確性を担保する具体的な事情について、検討が不十分だ」

これだけ聞いても、少し難しいですよね。もう少し詳しく説明します。

最高裁が言いたかったのは、「『日報があるから労働時間が分かる』『取引先に確認すれば正確性が分かる』というのは、ただの一般論にすぎない」ということです。

「本当に会社は、毎回すべての訪問先に電話をして、日報の内容が正しいか確認していたの?」「それは現実的に可能なことだったの?」

最高裁は、このように問いかけました。

「もし、会社が日報の正確性を確認できる仕組みがあったとしても、それが本当に現実的で、きちんと機能していたのかを、もっと具体的に調べるべきだ」と指摘したのです。

また、今回の判決には、ある裁判官の「補足意見」が添えられていました。 その意見には、「在宅勤務やテレワークなど、働き方がどんどん多様化している今、一律に『労働時間が分からない』と判断することは、ますます難しくなっている」と書かれています。

つまり、最高裁は、これからの時代は「みなし労働時間制」を安易に適用するのではなく、一人ひとりの働き方の実態を、もっと細かく見て判断する必要がある、というメッセージを送っているのです。


 

第4章:働き方改革時代の労働時間管理はどう変わるべきか?企業と労働者が取るべき行動

 

今回の最高裁判決は、特にリモートワークや直行直帰が多い企業にとって、大きな影響を与えます。

 

企業が取るべき行動

 

  • 「日報」だけで安心しない!

    • 日報などの自己申告制に頼るだけでなく、その正確性をどうやって担保するか、具体的な仕組みを考え直す必要があります。

    • 例えば、GPS機能を使った移動記録、オンラインツールでのタスク進捗管理、定期的なオンラインミーティングでの進捗確認などが考えられます。

  • コミュニケーションを密に!

    • 従業員との間で、業務の進め方やスケジュールについて、より具体的に話し合うことが求められます。

    • 「何時から何時まで働いたか」だけでなく、「どんな業務にどれくらいの時間がかかったか」を把握することで、より実態に近い労働時間管理が可能になります。

 

労働者が取るべき行動

 

  • 正確な記録を心がけよう!

    • 会社が定めた方法で、自分の労働時間や業務内容を、今まで以上に正確に記録することが大切になります。

    • これは、いざというときに自分の労働時間を証明するためにも役立ちます。


 

おわりに

 

今回の最高裁判決は、私たち一人ひとりが自分の働き方について、そして会社が私たちの労働時間をどう管理しているかについて、改めて考えるきっかけを与えてくれました。

単に「外で働いているから」という理由だけで労働時間を「みなす」のではなく、**「実際にどれくらい働いているのか」**を、企業と労働者が一緒になって真剣に考える時代になった、と言えるでしょう。

これからも、私たちの働き方はどんどん変わっていきます。その変化に合わせて、法律やルールも変わっていきます。この判決は、その大きな一歩なのです。

この記事が、皆さんの働き方や、社会の動きについて考えるヒントになれば嬉しいです。
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