社会保険料に潜む“ステルス増税”──社員の手取りが増えない本当の理由
杉山 晃浩
第1章 給料は上がっても生活は苦しい──誰も得していない現実
「賃上げしました」
「ベースアップしました」
こんな言葉を耳にしても、給与明細を見れば社員の手取りはほとんど増えていない。むしろ、減っているケースさえあります。
一方、賃上げに踏み切った経営者は「人件費が増えただけで、社員からは感謝されない」と嘆きます。
そう、いまの日本は「社員も経営者も報われない」仕組みが作られてしまっているのです。
第2章 子ども・子育て支援金制度という“新たな名目”
2026年度(令和8年度)から導入される「子ども・子育て支援金制度」。
名目は「子育て世帯を社会全体で支える」。しかし、その実態は全経済主体=企業も社員も、強制的に財布を差し出せという仕組みです。
児童手当の拡充や新しい給付制度の財源として、「社会保険料」に上乗せされるかたちで徴収されます。
つまり、社員は手取りを削られ、経営者は人件費を増やされる。両者が同時に犠牲になるのです。
第3章 なぜ“税金”ではなく“社会保険料”なのか?
もし「新しい税金」として徴収すれば、国会での議論や世論の批判を避けられません。
そこで政府が選んだ手口は、“社会保険料に紛れ込ませる”ことでした。
医療保険料に抱き合わせる形で徴収し、給与明細に新たに「子ども・子育て支援金額」を表示させる。
社員や企業が気づいたときには「もう取られている」状態を既成事実化する戦略です。
これはまさに姑息なやり方であり、国民の目を欺いたステルス増税にほかなりません。
第4章 ステルス増税の正体──静かに財布を狙う仕掛け
政府は「最終的な負担率は0.4%程度」と説明します。
一見、小さな数字に見えるかもしれません。
しかし、給与や報酬から自動的に吸い上げられ、全国民から徴収される。積み重なれば兆単位の負担増です。
しかも、段階的に導入されるため、人々が気づいたころには「手遅れ」になっています。
これこそが“ステルス”の所以です。
第5章 経営者と社員、両方が被害者にされる構図
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社員は、物価高に耐えながら、さらに実質賃金を削られる。
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経営者は、人件費増で利益を圧迫され、賃上げの努力が評価されない。
政府は「未来のため」と美しい言葉を並べますが、実態は企業と労働者を同時にすり潰す制度です。
このままでは「頑張っても報われない」という空気が社会全体に広がり、企業の成長意欲も、社員の働くモチベーションも根こそぎ奪われかねません。
第6章 “美辞麗句”の裏にある不都合な真実
「子ども支援」
「未来への投資」
耳障りの良い言葉を並べても、やっていることは国民の財布から静かにお金を抜き取る行為にすぎません。
本当に必要なのは、透明で公正な制度設計です。
しかし政府は、「子育て支援」という大義名分を振りかざし、実際には安易な財源確保に走っている。
これで少子化が改善するでしょうか?
むしろ「将来が不安だから子どもを持てない」という声を強める逆効果になりかねません。
第7章 結論──黙っていたら、手取りは絶対に増えない
私たち経営者も社員も、この制度の前では同じ被害者です。
政府が“社会保険を使った隠れ増税”を続ける限り、社員の手取りは増えません。
企業が賃上げしても、その努力は社会保険料という形で吸い取られていきます。
だからこそ、私たちは声を上げなければなりません。
「透明で公正な制度を作れ」と。
「姑息なステルス増税で国民を欺くな」と。
このまま黙っていれば、未来の日本は「働いても報われない社会」に固定されてしまいます。
いまこそ、経営者も社員も一緒になって声を上げるべき時です。