最初の印象で評価が決まる?──初頭効果が引き起こす『評価制度の落とし穴』

杉山 晃浩

第1章 なぜ「最初の印象」が評価をゆがめるのか

あなたの職場では、
「最初に感じた印象」が、知らぬ間に社員評価を左右していませんか?

心理学で言う「初頭効果」とは、
最初に得た情報が、後の判断を強く左右する心理的傾向のこと。
人は誰でも、第一印象から得たイメージを「基準」にして、
その後の出来事を“その印象に合うように”解釈してしまいます。

たとえば、新人研修の初日にハキハキと受け答えをした社員を、
「きっと優秀に違いない」と思い込んでしまう。
逆に、最初の一週間で物静かだった社員を、
「頼りない」と決めつけてしまう。

こうした無意識の“印象固定”こそが、
公正な評価制度の足を引っ張る見えない落とし穴なのです。


第2章 評価制度の現場で起こっている“初頭効果あるある”

① 試用期間の印象がすべてになる

入社直後に「この人はできそう」「ちょっと危なそう」と思った印象が、
半年経っても変わらない──そんな経験はありませんか?
本来は“成長を評価する制度”のはずが、
実際は“過去の印象を確認する場”になっているケースが多いのです。

② 上司交代で「第一印象リセット」

新任管理者が配属されると、わずか数週間でチーム全員の評価が決まる。
実績よりも「話しやすい」「反応が早い」などの印象が強く影響します。
こうして「上司が変わるたびに評価が変わる」不安定な職場が生まれます。

③ 「できそうな人」を甘く、「初期ミスの人」を厳しく

最初に高評価を得た社員は、多少のミスをしても「まあ、たまたまだ」と思われ、
一方で、序盤につまずいた社員は、どれだけ努力しても「やっぱり…」と見られがち。
この“印象の呪縛”が、社員のモチベーションを奪い、離職にもつながります。

④ 外見・話し方の印象で判断してしまう

「清潔感がある」「明るく話す」「声が大きい」──
本来は仕事の成果と無関係な要素が、評価に影響してしまうことがあります。
これも初頭効果の一種です。
人は合理的に判断しているようで、実は感情で決めているのです。


第3章 初頭効果を抑えるために、会社が今すぐできる対策

① 「印象」ではなく「事実」で判断する

評価を“感覚”ではなく“記録”に変える。
日々の観察メモ、行動ログ、達成データをもとに評価する習慣が大切です。
「良い」「悪い」ではなく、「何をしたのか」で語れる評価を。

② 定期フィードバックを制度化する

年1回の評価では、最初と最後の印象がすべてを支配します。
月次・四半期などの定期的な面談を設けることで、
“途中の行動”を正しく評価できます。
人の印象は変わるもの。だからこそ、途中で軌道修正できる仕組みを。

③ 評価を「ジャッジ」から「成長支援」に変える

社員は評価されるより、「見てもらっている」と感じたいもの。
評価制度を単なる査定ルールではなく、
育成のための“対話の仕組み”に変えることが、
初頭効果を抑える一番の特効薬です。


第4章 社労士ができる支援──“印象評価”から“仕組み評価”へ

① 評価者教育の実施

初頭効果を正しく理解し、バイアスを減らすための評価者研修を設計します。
「公平な評価の仕方」や「面談の質問技術」を学ぶことで、
制度が“形だけ”にならない運用を実現できます。

② 評価基準・行動基準書の整備

「主体性」「チームワーク」など、あいまいな言葉を行動レベルに落とし込む。
誰が見ても同じ判断ができる“共通言語”をつくることで、
印象評価から事実評価へシフトします。

③ 定期フィードバックと運用サポート

社労士は、評価運用の継続を支える仕組みを設計します。
日報・月報フォーム、評価面談の進行台本など、
現場で“回る仕組み”を支援することができます。

④ 労務リスクの防止・信頼性監査

評価が原因で発生するトラブル(不服申立・ハラスメント申告など)を防ぐために、
制度運用の監査や、評価面談記録の整備を支援します。

⑤ 成長支援型評価制度への転換コンサルティング

評価は人を減点するためではなく、伸ばすためのもの。
社員一人ひとりが「見てもらえている」と感じる制度設計を、
社労士が伴走してつくり上げていきます。


第5章 「公平な評価」が、社員の信頼と定着を生む

社員が会社に求めているのは「高評価」ではなく「納得感」です。
「きちんと見てもらえている」という実感があるだけで、
人は安心して働けるようになります。

公平な評価は、単なる人事制度の話ではありません。
それは、会社と社員の信頼をつなぐ“約束”の仕組みです。


あなたの組織は大丈夫でしたか?

もしこの記事を読んで、
「うちの評価、もしかして印象で決まっているかも…」と感じたなら。

制度の問題ではなく、運用の仕組みに目を向けてください。

評価者研修、評価制度の再設計、フィードバック体制の整備――
これらを通して、初頭効果を超えた“公平な評価文化”を育てましょう。

オフィススギヤマは、経営者と共に「人が育つ評価制度」をつくります。

今こそ、“印象ではなく仕組みで評価する組織”へ。

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