勝ち馬に乗る組織が勝つ──バンドワゴン効果を人事・育成に活かす5つのステップ
杉山 晃浩
第1章 “人が動かない”のは意識ではなく、空気の問題
「うちの社員は、言わないと動かない。」
「新しいことを始めても、最初の数人しか続かない。」
多くの経営者が抱えるこの悩み。
しかし、それは“社員のやる気不足”ではなく、心理のメカニズムが働いているだけかもしれません。
人は本能的に、**「周りの大多数がやっていること」**を正しいと感じます。
これが心理学で言う「バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)」です。
つまり、「多くの人が乗っている馬車(Bandwagon)=勝ち馬」に乗りたい心理。
組織の中でも、多数派の行動や価値観が“正解”として共有されるため、
たとえ論理的に正しい施策でも、“誰もやっていない”ことは受け入れられにくいのです。
第2章 改革が“一部の部署しか進まない”本当の理由
新しい制度や改善活動を導入しても、なぜ一部しか成功しないのか。
その理由はシンプルです。
「勝ち馬」が見えないから。
たとえば、1部署が業務改善に成功しても、
その成果が社内に知られなければ、他の部署は「本当に意味あるの?」と疑いの目を向けます。
成功事例が“見えない”“褒められない”“広がらない”――
この三拍子が揃うと、バンドワゴン効果は生まれません。
逆に、ある会社では「この部署が月次改善で残業を30%削減した」と社内報に掲載しただけで、
他部署が「うちもやらなきゃ」と動き出しました。
つまり、“やっている部署”を目立たせることこそが、改革の第一歩なのです。
第3章 バンドワゴン効果を活かす5つのステップ
では、どうすればこの心理をポジティブな組織変化の推進力に変えられるのか。
オフィススギヤマグループでは、次の5つのステップで「社員が自ら動く流れ」を設計します。
① 小さな成功をつくる
最初から全社展開を狙わず、まずは1チームの成功事例をつくること。
たとえ完璧でなくても構いません。
「成果が出た」「雰囲気が良くなった」と実感できる現場を“勝ち馬”として見せましょう。
② 成果を見える化する
人は“見える情報”で判断します。
数値データだけでなく、感情の見える化が重要です。
「この改善で社員が笑顔になった」「お客様から感謝された」
――こうした物語を社内に発信することで、他部署にも火がつきます。
社内掲示板・チャット・動画など、媒体は何でもOK。
重要なのは「成功を見える形で共有すること」です。
③ 仲間づくりを仕掛ける
「やらされ感」ではなく、「みんなでやってる感」を設計します。
たとえば、「次は〇〇課が挑戦中です!」と共有するだけでも、
“置いていかれたくない”心理が動きます。
この“社会的証明”が増えると、社員は自ら動き出すようになります。
人は合理よりも空気で動く。
バンドワゴン効果の最大の威力は、**「空気を設計できる」**ことにあります。
④ トップが“空気”を応援する
経営者や管理職の役割は、「やれ」と命じることではなく、
“空気の方向性”を示すことです。
「いいね」「よく頑張ってるね」と笑顔で言うだけで、
社内の風向きが変わります。
経営者が“応援者”になることで、
「この改革は会社が本気だ」という共通認識が広がります。
⑤ 仕組み化して、流行を文化に変える
バンドワゴン効果で生まれた熱は、放っておくと冷めます。
その勢いを制度や仕組みに落とし込みましょう。
評価制度に「改善活動の参加」を盛り込む。
定例会で「成功事例の共有」をルール化する。
こうして一時的なムーブメントを恒常的な文化に転換することができます。
第4章 “勝ち馬がいない会社”はどうすればいい?
「うちはまだ成功事例がないから…」
そう嘆く経営者も少なくありません。
しかし、“勝ち馬”はつくるものです。
重要なのは、実績より期待値。
「来期は〇〇を全社でやります」と社長が語るだけで、
社員は“始まっている空気”を感じ取ります。
たとえば、
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新入社員が率先して社内SNSに改善提案を投稿する
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管理職が自分の失敗を共有して「挑戦歓迎」の空気を作る
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社内で「挑戦=称賛」する風土を育てる
これらはすべて、“まだ勝っていない勝ち馬”を育てる行為です。
誰かが一歩踏み出せば、それが他の社員のナッジ(きっかけ)になります。
第5章 “空気で動く”から“共感で動く”組織へ
バンドワゴン効果は、あくまで行動の引き金です。
その後、継続させるには“共感”が必要になります。
「みんながやってるからやる」から、
「自分もやりたい」に変わる瞬間をどうつくるか。
それは、職場の成功体験を“感情で共有する”ことにあります。
成功を褒める、失敗を責めない、挑戦を称える。
これらを積み重ねることで、社員の内側に“自律的なエンジン”が生まれます。
経営者が“変化の語り部”になり、
管理職が“共感の媒介者”になることで、
バンドワゴン効果は単なる流行ではなく、“企業文化のDNA”に変わります。
第6章 オフィススギヤマグループが支援できること
オフィススギヤマグループでは、
心理法則を応用した「仕組みで動く組織づくり」をサポートしています。
具体的には:
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成功事例の発掘と発信設計
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評価制度・研修制度への心理要素の導入
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社内広報・行動デザインの再構築
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ES調査による“空気の可視化”と改善計画の策定
経営者の「想い」を仕組み化し、
社員が“自ら動く”組織へと変えるお手伝いをしています。
「勝ち馬がいない会社」にこそ、バンドワゴン効果は必要です。
なぜなら、人は“変化している空気”に最も敏感だからです。
結論──変化は、理屈より空気で伝わる
経営者がどんなに優れた戦略を語っても、
社員が「自分もやりたい」と感じなければ、組織は動きません。
バンドワゴン効果とは、
“空気をデザインする経営技術”です。
社員は、正しいことより「盛り上がっていること」に惹かれます。
だからこそ経営者は、理屈ではなく勢いを演出するプロデューサーであるべきなのです。
🔹 オフィススギヤマグループは、「行動が伝染する組織づくり」を支援します。
社員が動かない原因は、人ではなく仕組み。
仕組みが変われば、空気が変わる。
空気が変われば、会社は動く。
さあ、次の勝ち馬を――あなたの職場から生み出しましょう。