小さなYESが未来を動かす──フット・イン・ザ・ドアに学ぶ“信頼される営業術”

杉山 晃浩

第1章 なぜ営業は「伝えても伝わらない」のか

「いい商品なのに、なぜ響かないのだろう」
「誠実に話しているのに、なぜ断られるのだろう」

営業や経営者なら、誰もが一度は感じたことのある違和感です。
実は、相手が“理屈”ではなく“心理”で判断しているからなんです。

たとえば、「このサービスを導入しませんか?」という直接的な提案。
これは、まだ信頼が十分に育っていない相手にとっては“ハードルの高いお願い”です。
人は知らない相手や仕組みに対して防衛的になります。

では、どうすれば相手が心を開き、信頼関係を築けるのでしょうか。
そのカギとなるのが、「小さなYES」から始めるフット・イン・ザ・ドアの法則です。


第2章 フット・イン・ザ・ドアの法則とは?──人は“小さなYES”に導かれる

この法則は、アメリカの心理学者フリードマンとフレイザーの実験で明らかになりました。
ある住宅街で、「交通安全の看板を庭に立ててください」とお願いしたところ、
承諾した人はわずか17%。

ところが、その数週間前に「交通安全のステッカーを貼ってもらえますか?」と
小さなお願いをしていたグループでは、承諾率が76%に跳ね上がったのです。

人は一度「YES」と言うと、「自分は協力的な人だ」という自己イメージを保ちたくなる。
この心理を営業に応用すれば、相手が自然に次のステップへ進むようになります。

つまり、いきなり「契約してください」ではなく、
「少しだけ話を聞いてもらえますか」→「資料だけでも見てください」→「一度ご提案させてください」
という流れに変えることで、相手の抵抗がスッと消えるのです。


第3章 “成果が出る営業”と“出ない営業”の決定的な違い

成果を出せない営業ほど、焦って「結果」を取りに行こうとします。

  • 「今日中に決めてください」

  • 「うちに任せてください、絶対に損はしません」

その姿勢は一見前向きですが、相手には「圧力」として伝わってしまいます。

一方で、成果を出す営業は「相手に決めてもらうプロセス」を設計しています。

  • 「少しだけ資料を見てもらってもいいですか?」

  • 「3分だけ、現状の課題を聞かせてください」

このような“断りにくいお願い”から関係を築きます。
小さなYESを積み上げることで、信頼関係がじわりと深まるのです。

営業とは「押すこと」ではなく、“導くこと”
この発想を理解できた営業チームほど、長期的に成果を上げています。


第4章 実例:小さなYESが生んだ大きな成果

【事例①:人材サービス業】

ある企業では、求人広告の提案営業で苦戦していました。
それまでの営業スタイルは、「広告を出しませんか?」という直球提案。
しかし、反応は鈍く、成約率も伸び悩み。

そこで営業手法を見直し、まずは「無料の職場分析レポート」を渡すことに。
「御社の採用データを10分で整理したものです」と言って渡すと、
経営者のほとんどが「じゃあ見てみようか」と反応しました。

数日後、そのレポートをきっかけに課題が“見える化”され、
「この内容を基に、次の採用計画を一緒に考えてほしい」と正式な依頼へ。
たった一つの「YES(レポートを見る)」が、信頼関係を生んだのです。


【事例②:建設関連企業】

ある社労士事務所が企業型DC(確定拠出年金)の提案をしても、なかなか導入が進まない。
そこで営業戦略を「制度導入」ではなく「社員説明会の開催」へと変更。
「導入前に社員さんの反応を見てみましょう」と提案したのです。

経営者はリスクのない小さなYESを出しました。
結果、社員からの質問や関心が高まり、社内の空気が一変。
半年後、正式導入が決定。
“説明会だけ”の一歩が、組織を変えるきっかけになったのです。


第5章 経営者が知るべき“組織営業”の心理構造

営業心理は、個人だけでなく組織運営にも応用できます。

売れるチームは、「まずやってみよう」「小さな成功を積もう」という空気を大切にします。
一方、成果が出ないチームほど、「失敗したらどうしよう」「結果が出るまで動けない」と硬直します。

経営者がフット・イン・ザ・ドアの考え方を理解し、
「まずは1件訪問してみよう」「小さなYESを積む営業をしよう」とメッセージを出すと、
営業現場が一気に動き出します。

営業とは、人の心を動かす仕事。
その前に必要なのは、社員の心が動く仕組みです。


第6章 営業を“信頼の技術”に変える──オフィススギヤマの支援

オフィススギヤマグループでは、
営業を「心理×仕組み」で変える支援を行っています。

  • 営業心理を学ぶ社員研修
     → 心理効果や行動経済学を理解し、相手の立場で話せる営業へ。

  • 営業DX・管理の仕組み化支援
     → kintoneやRPAを活用し、営業プロセスを“見える化”。

  • 経営者向け営業チーム育成コンサルティング
     → 組織的に小さなYESを積み上げる「信頼営業文化」をつくる。

「根性論の営業を変えたい」
「もっと社員に営業を楽しんでほしい」
そんな企業こそ、仕組みと心理で動く営業チームを作るチャンスです。


第7章 まとめ──“小さなYES”が未来を変える

営業の本質は「信頼」です。
人は論理で納得し、感情で決める。
だからこそ、“小さなYES”の積み重ねが信頼を生み、信頼が成果を連れてくる。

焦らず、一歩ずつ。
「話を聞いてもらえた」「興味を持ってもらえた」
その積み重ねが、やがて大きな結果となって返ってきます。

経営者がこの心理を理解し、組織全体で実践できれば、
営業は“押す”ものから“選ばれる”ものへと進化します。


営業は「一度きりの勝負」ではありません。
関係を育てる、信頼を積む長期戦です。
オフィススギヤマグループは、そんな“仕組みで動く営業”を支援しています。

小さなYESが、あなたの会社の未来を動かす。

お問い合わせフォーム

労務相談、助成金相談などお気軽にご相談ください。