“責任を取りたくない若者”が動き出す──スノッブ効果で変わるリーダー育成の新戦略
杉山 晃浩
第1章 「責任を取りたくない若者」が増えている現実
「責任のある仕事はしたくない」「リーダーにはなりたくない」
近年の若手社員から、そんな声を聞く機会が増えていませんか?
少し前までは、「出世=成長」「リーダー=信頼」の象徴でした。
しかし今、若者にとってリーダー職は“リスク”や“負担”の象徴に変わりつつあります。
背景には、
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SNS世代特有の“人間関係リスク回避”
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ワークライフバランスを重視するライフスタイル
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「ミスしたくない」「叩かれたくない」という心理的安全志向
といった要素が複雑に絡み合っています。
その結果、「誰もリーダーをやりたがらない」「中間層が育たない」という企業が急増。
管理職手当や昇進制度を整えても、心が動かない。
いま必要なのは、“制度の再設計”ではなく、心理の再設計です。
第2章 “特別扱い”がやる気を生む──スノッブ効果の基本原理
「みんな平等に」という価値観が職場に根づいたことで、
多くの若手は“特別扱いされること”に慣れていません。
ところが人間は本来、「他の人と違う」「選ばれた存在でいたい」と感じたときに最も力を発揮する生き物です。
この心理を説明するのがスノッブ効果(snob effect)。
「他人とは違う」ことに価値を感じる心理現象です。
たとえば──
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「あなたをリーダー候補として特別に任命したい」
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「この研修には、あなたしか参加できない」
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「このポジションは、あなたの強みが最も活きる場所だ」
そんな“限定的な承認”を与えられると、
人は「自分は信頼されている」「特別な存在だ」と認識し、
自発的に責任を引き受けるようになります。
つまり、スノッブ効果を使えば
“責任の押しつけ”を“誇りの象徴”に変えられるのです。
第3章 リーダー候補が燃える“選ばれ方”のデザイン
リーダー候補のやる気を引き出すには、
「選ばれる瞬間」に物語を設計することが重要です。
たとえば、
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「次期リーダー育成プロジェクト」を少人数制で立ち上げる
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「社長推薦制度」で登用プロセスを可視化する
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「管理職候補限定ミーティング」への招待を“信頼の証”として伝える
ここで重要なのは、「なぜあなたを選んだのか」を言葉で伝えること。
「あなたには人を動かす力がある」「みんなが頼りにしている」など、
選ばれる理由が本人の強みと結びついていると、動機が内発的に変わります。
えこひいきではなく、“期待の明示”による特別扱い。
これがスノッブ効果をプラスに活かす鍵です。
第4章 “平等”ではなく“公正”に──若手の承認欲求を生かすマネジメント
日本企業の多くは「平等な扱い」を重んじてきました。
しかし、平等であることがモチベーションにつながるとは限りません。
特にZ世代以降の若者は、「みんなで一緒」よりも
“自分の努力や成長が見えているか”を重視します。
つまり、求めているのは平等ではなく公正。
頑張った人が正当に認められ、
挑戦した人が特別な機会を与えられる。
この“努力が報われる構造”こそ、若手をリーダーに育てる土台です。
承認のコツは、「全員を褒める」ではなく「成果を理由に選ぶ」。
たとえば、
「今回のプロジェクトでは、あなたの判断力が特に光った。次はチームを率いてほしい。」
という伝え方が、若手に「自分が認められた」という実感を与えます。
それが、リーダーになる“覚悟のスイッチ”を押す一言になるのです。
第5章 スノッブ効果を活用したリーダー育成研修のポイント
オフィススギヤマグループでは、スノッブ効果を取り入れたリーダー育成研修を展開しています。
このプログラムでは、単なる座学ではなく、
“選ばれた喜び”を体験から学ばせることを重視しています。
たとえば、
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「選ばれる体験」
→ 模擬チームでリーダーを任され、信頼を可視化。 -
「期待を可視化する言葉」
→ 自分がなぜ選ばれたのかを上司・講師が言語化。 -
「特別扱いのマネジメント」
→ “選抜メンバー”としての使命感を持ち帰り、現場で再現。
この研修を通じて、
若手は「責任=負担」から「責任=信頼」に認知が変わり、
自ら挑戦する意識へと変化します。
制度ではなく心理設計からリーダーを育てる。
それが今の時代に求められる人事戦略です。
第6章 まとめ──“特別扱い”がリーダーを生む時代へ
若者が責任を避けるのは、怠けているからではありません。
自分の努力が報われる実感がない、つまり“選ばれる理由”を感じていないからです。
スノッブ効果は、その欠けたピースを埋める心理的ツールです。
「あなたにしか任せられない」「この役割はあなたのためにある」
その一言が、若者の中に眠る“挑戦する心”を呼び覚まします。
オフィススギヤマグループは、
心理学と人事労務の両面から、
社員が誇りを持って動ける仕組みづくりと研修支援を行っています。
リーダーを“選ぶ”のではなく、リーダーが“生まれる”仕組みを。
特別扱いが、次世代の組織を動かす力になります。