“顔を合わせる回数”が定着を決める──ザイアンス効果で変わる新入社員オンボーディング

杉山 晃浩

第1章 新人が続かない会社に共通する“静かな離職リスク”

「うちの新人、仕事はできるのに突然辞めた」
そんな経験はありませんか?

その裏側には、能力や待遇ではなく“心理的な距離”の問題が潜んでいます。

新人が職場を離れる最大の理由は、「放置されていると感じること」。
誰も悪気はないのに、歓迎会が一度きり、上司も忙しくて話す機会がない。
すると新人は、「自分はチームの一員として見られていない」と感じてしまいます。

人は関わりの薄い相手に信頼を抱けません。
どんなに制度や研修を整えても、「人との接点」が足りない職場では新人は孤立し、
静かに離れていくのです。

離職率を下げたいなら、まずは“接触の量”を見直すこと。
その鍵を握るのが、心理学でいうザイアンス効果です。


第2章 ザイアンス効果とは?──“接するほど好きになる”心理の正体

ザイアンス効果(Zajonc effect)は、人は接する回数が多いほど相手に好感を持ちやすくなるという心理現象です。
つまり、「話した内容」よりも「顔を合わせる頻度」が、信頼を左右するということ。

たとえば、毎日すれ違う同僚には自然と親近感が湧きます。
会話がなくても、「よく見る顔」になるだけで安心感が生まれるのです。

この効果は、恋愛・営業・広告の分野でも証明されていますが、
職場の人間関係でも同じ。

新入社員にとって「誰がどれだけ自分に関わってくれるか」は、
職場への信頼や安心のベースになります。
ザイアンス効果は、人間関係を“数でつくる”科学的な方法と言えるのです。


第3章 オンボーディングにザイアンス効果を活かす3つのポイント

① 初日から「複数の人が関わる」

多くの企業では、入社初日を上司か人事担当者だけが対応しています。
しかし、新人が安心感を持つのは“多層的なつながり”です。

  • 上司:業務の方向性を示す

  • 先輩社員:日常の質問役

  • 人事担当:心の安全を守るサポーター

複数の人が関わることで、「この会社には自分を見てくれている人がいる」と感じやすくなります。
初日から“接点の分散”を意識することが、信頼構築の第一歩です。


② 「短時間・高頻度の声かけ」が信頼を積み上げる

面談や報告会など“特別な時間”だけでは、信頼関係は築けません。
むしろ、日常の「ちょっとした声かけ」が効果的です。

  • 朝:「おはよう、昨日の研修どうだった?」

  • 昼:「困ったことあったら言ってね」

  • 夕方:「今日もありがとう」

内容は重要ではありません。
“あなたを気にかけている”というサインを繰り返し出すことがポイントです。
ザイアンス効果では、この“繰り返し”が心理的な距離を縮める要素になります。


③ 定例+非定例のコミュニケーションを設計する

毎週のミーティングや面談だけでなく、
**偶然の会話を生む“仕組み”**があると、ザイアンス効果は最大化します。

  • 月1回の「新人ランチ会」

  • 朝の「3分チェックイン」

  • オンラインでも雑談タイムや“気軽に報告できるチャット”を用意

接触は「管理」ではなく「文化」。
偶然の出会いを意図的に設計することが、心理的安全性を育てます。


第4章 接点の“質”より“リズム”──信頼を生むのは回数のデザイン

多くの企業が「関わりの質を高めよう」と努力しますが、
実は信頼を生むのは“質”よりも“リズム”です。

人は、会話の内容よりも「最近よく会っている」「声をかけてもらえる」という
“接触のリズム”に安心を感じる生き物です。

例えば、

  • 月1回の1on1よりも、週1回の5分雑談

  • 年1回の評価面談よりも、毎日の小さな承認

これらを積み重ねるだけで、
新人の中に「この職場は自分を見てくれている」という感覚が生まれます。

信頼はイベントで作るものではなく、日常のリズムで積み上がるもの
ザイアンス効果を職場に浸透させるとは、“接触のリズムを整えること”なのです。


第5章 オフィススギヤマ式オンボーディングサポート──“接触の仕組み化”で定着を実現

オフィススギヤマグループでは、
人の優しさや努力に頼らず、「接触」を仕組みとして設計するオンボーディング支援を行っています。

3ステップで仕組み化:

  1. 関わりの見える化
     → 「誰が・いつ・どの頻度で新人と関わるか」を設計。

  2. 定着リズムの点検
     → “顔を合わせていない期間”が生まれないように、定期チェック。

  3. DXによる接触促進
     → kintoneやRPAを活用し、「声かけ・確認・面談リマインド」を自動化。

これにより、忙しい現場でも「新人に気を配れる職場文化」が維持できます。

オンボーディングとは単なる教育ではなく、信頼の設計図
オフィススギヤマは、
心理学×DX×労務管理の観点から、“辞めない新人育成”をサポートします。


第6章 まとめ──“会うこと”を仕組みにできる会社は強い

新人が辞めるのは「仕事が難しい」からではありません。
多くの場合、「誰にも必要とされていない」と感じたときに辞めます。

ザイアンス効果は、その不安を払拭するための科学的な答えです。
接する回数を増やすことで、信頼が生まれ、定着率が上がります。

“接触の数”が“信頼の深さ”を決める。

オフィススギヤマは、
会うこと・話すこと・関わることを仕組み化できる組織設計を提案します。
人が辞めない会社は、「人がつながり続ける会社」。
その第一歩は、会うことをデザインするオンボーディングから始まります。

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