社労士が警鐘を鳴らします 人を“感覚”で判断する会社ほど、適性を見誤ります
杉山 晃浩
「この人は感じがいい」
「話してみて、何となく合いそうだと思った」
「前職も立派だし、きっと活躍してくれるだろう」
採用や人事の場面で、こうした言葉が交わされることは珍しくありません。
むしろ、多くの中小企業では、人を“感覚”で判断することが当たり前になっています。
しかし、社労士として数多くの採用トラブル、配置ミス、早期離職、評価不満を見てきた立場から、あえて警鐘を鳴らします。
人を感覚で判断する会社ほど、「適性」を見誤ります。
それは、経営者や管理職の見る目が劣っているからではありません。
人間の脳の仕組みそのものが、誤った判断を生みやすい構造になっているからです。
人は「見たい人」を見ている──確証バイアスという落とし穴
心理学には確証バイアスという有名な法則があります。
確証バイアスとは、
人は一度「こうだ」と思い込むと、それを裏付ける情報ばかり集め、
反対の情報を無意識に無視してしまう
という認知のクセです。
これは、経営者や管理職だけでなく、すべての人に備わっている性質です。
例えば採用面接で、最初に
「この人は良さそうだ」
という印象を持つと、その後の受け答えはすべて“好意的に解釈”されます。
逆に
「何となく合わなそうだ」
と感じた相手には、同じ発言をしても減点評価が積み重なります。
本人は「冷静に見ているつもり」でも、
判断はすでにバイアスに支配されているのです。
なぜ経験豊富な経営者ほど、ハマりやすいのか
確証バイアスが厄介なのは、
経験や実績がある人ほど、自覚しにくい点です。
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今までの経験で人を見抜いてきた
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自分なりの採用基準がある
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直感が当たった成功体験がある
こうした積み重ねは、経営者としての強みでもあります。
しかし同時に、
「自分は人を見る目がある」
という前提を強化してしまいます。
その結果、
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面接での違和感を軽視する
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周囲の反対意見を聞かなくなる
-
うまくいかなかった原因を本人のせいにする
といった判断に陥りやすくなります。
これは能力の問題ではなく、認知の構造の問題です。
「適性」は、話し合いだけでは見えない
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。
適性は、本人のやる気や性格の良し悪しではありません。
適性とは、
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どんな環境で力を発揮しやすいか
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どんな役割を負うとストレスがかかるか
-
判断や行動のクセはどこにあるか
といった、目に見えない特性の組み合わせです。
ところが現場では、
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面接での受け答え
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表情や話し方
-
上司との相性
といった「見える部分」だけで判断が下されがちです。
これでは、適性ではなく印象を採用していることになります。
適性診断は「人を決めつける道具」ではない
適性診断と聞くと、
「レッテル貼りになるのではないか」
「人を型にはめるのは良くない」
といった抵抗感を持つ経営者もいます。
しかし、適性診断の本質はそこにありません。
適性診断の役割は、
人を評価することではなく、判断の土台を揃えることです。
つまり、
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感覚だけに頼らない
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個人の主観を減らす
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話し合いの共通言語をつくる
ためのツールです。
確証バイアスを完全になくすことはできません。
だからこそ、バイアスに気づける仕組みが必要なのです。
見えないものを「見える化」する意味
適性診断を活用すると、次のような変化が起こります。
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面接での印象と診断結果のズレに気づける
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配置ミスの理由を感情ではなく構造で説明できる
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評価や指導が「個人攻撃」になりにくくなる
特に重要なのは、
「なぜ合わないのか」を言語化できる点です。
「やる気がない」
「向いていない」
という言葉は、問題を解決しません。
適性という視点を入れることで、
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役割の再設計
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指示の出し方の工夫
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育成方針の見直し
といった、建設的な打ち手が見えてきます。
確証バイアスを前提にした人事が、会社を強くする
重要なのは、
「人は必ず思い込む」
という前提に立つことです。
そのうえで、
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感覚を否定しない
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しかし感覚だけで決めない
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客観情報で判断を補正する
この姿勢こそが、これからの人事に求められます。
適性診断は万能ではありません。
しかし、何も使わずに人を見抜けるほど、人間は客観的ではないのです。
社労士としてお伝えしたいこと
私は社労士として、
採用、配置、評価、定着、トラブル対応まで、
人に関わる意思決定を数多く見てきました。
そこで確信しているのは、次の一点です。
人を感覚で判断し続ける会社ほど、
「なぜうまくいかないのか」が分からなくなります。
逆に、
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見えない特性を見える化し
-
判断の根拠を共有し
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修正可能な人事を行っている会社
は、失敗から学び、組織を強くしていきます。
適性診断は、
人を縛るための道具ではありません。
経営者と社員、双方を守るための“判断補助装置”です。
人を見る目を鍛える第一歩は、
「自分の目は、必ず偏る」
と認めることから始まります。